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16歳コーヒー焙煎士として生きる 「できない」が多い中学時代越え「障害は気にならない」

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2018年11月09日 07:01  ウィズニュース

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写真コーヒーを焙煎する岩野響さん=岩野さん提供
コーヒーを焙煎する岩野響さん=岩野さん提供

【#withyou 〜きみとともに〜】
 やりたいことが見つからない。居場所がない。そんな悩みを持つ人は多いのではないでしょうか? 小学3年生で発達障害と診断された岩野響(ひびき)さん(16)は、中学校での生活が合わずに不登校になったとき、何もやることがなくて焦りを感じていました。思いつくままに試していった結果、自分のやりたいことを見つけ、今はコーヒー焙煎士(ばいせんし)として生きています。(withnews編集部・河原夏季)

【写真】16歳のコーヒー焙煎士・岩野響さんの素顔 自然に囲まれた「LABO」で焙煎、洋服作り……

「できない」ことが多かった
 群馬県桐生市の街を一望できる高台に、岩野さんのお店「HORIZON LABO(ホライズンラボ)」はあります。2017年4月、自宅の倉庫を改装してお店を作りました。お店での販売はしておらず、焙煎したコーヒー豆は、通信販売や群馬県・東京都内のお店で扱ってもらっています。

 コーヒーに出会うまでは、「できない」ことが多い人生でした。

 小学校のときは、授業中に落ち着いて座っていることができませんでした。中学校に入学すると、黒板の字をノートに書き写すことも、宿題を進めることもできませんでした。各科目で出される多くの課題を、期限内に提出するということが苦手でした。

 「担任の先生は、『宿題を1週間後に出してみる?』『友達のノートを写してみる?』と言ってくれました。でも、友達の助けがないとまともにできないんだと、とてもショックを受けました」

「学校は合わない環境」
 岩野さんは小学3年生のときに、発達障害のひとつ、アスペルガー症候群と診断されていました。ですが、医師からの勧めもあり、両親から岩野さん本人に伝えられたのは中学1年生のときです。

 ◇ ◇ ◇

ある日、響に伝えました。
あなたには「アスペルガー症候群」という、脳の機能が一部うまく働かない障害があって、そのせいで、他の人には簡単なことでも、できない場合がある。板書の書き写しが難しいのも、それが理由。
――三才ブックス「コーヒーはぼくの杖~発達障害の少年が家族と見つけた大切なもの」岩野響・開人・久美子 著

 ◇ ◇ ◇

 ただ、初めは受け入れることができませんでした。

 できないことがあっても、なんとか学校に行こうとする日々。1年生の秋ごろ、父親から「1日だけでも休みなよ」と言われました。1週間のうち1日だけ休んで、ぽつぽつとは学校に行っていた岩野さんですが、だんだん学校から足が遠のきました。

 「誰でもできることができないのは、自分の努力不足だと思っていました。でも、半年やってもできない状況が続いて、さすがにどうしようもありませんでした。自分を見つめないと、生きていけないと思ったんです。学校は、自分には合わない環境でした」


 しかし、休んだら休んだで悩みが出てきます。

 「『学校という社会に属している岩野響』ではなくなり、居場所や存在意義がないと思いました。学校を休んだ最初の1週間くらいはゲームをして過ごしていましたが、自分って何だろう……と危機感を持つようになりました」

 岩野さんには2人の弟がいます。「2人は朝7時ごろになれば学校に登校する。弟ができることを僕はできない。このままではヤバいという焦りがありました」

 ◇ ◇ ◇

<自閉症スペクトラムの主な特性>

・言葉のコミュニケーションが苦手
言葉の裏にある意味をくみとるのが難しい など
・人と関わるのが苦手(対人関係や社会性の障害)
目を合わせない、空気を読むのが苦手 など
・こだわりや興味に偏りがある
予定が変わるとパニックになってしまう、同じ動きを繰り返す など

*診断基準によっては広汎性発達障害・自閉症・アスペルガー障害などの名前で呼ばれることもあります。――発達障害とは?もし「発達障害かも」と思ったら?イラストで解説!

コーヒーに魅せられた
 両親に相談すると、「できそうなことをやってみれば?」と言われました。

 図書館で本を読んだり、両親が経営する洋品店を手伝ってみたり、お皿1枚を洗うことから家事を始めたり、電子工作をしたり、水彩画を描いてみたり……。思いつくままに、毎日毎日いろんなことをしてみましたが、あまりしっくりきません。

 でも、コーヒーは違いました。コーヒーに興味を持つきっかけは、料理です。中学校に行かなくなってから、夕食を作っていたという岩野さん。カレーの隠し味にインスタントコーヒーを入れておいしくできたことがきっかけで、魅力にのめり込んでいきました。

 小学生の時からコーヒーが好きで、家にあった手動の機械でこっそりエスプレッソを入れていたという岩野さん。学校に行けず苦しかったときにも、家族と話をしたり、自分を見つめるときにはいつも手元にコーヒーがありました。

 「おいしいコーヒーを片手に話し合う時間が毎日あったので、自分で作ってみたいなという思いもありました。振り返ってみると、その時間があったからこそ、今があると思います」

 中学2年生の時、知人から手回しのコーヒー焙煎機をもらい、焙煎してみました。最初は、お店で飲む味とはほど遠い出来。おいしいコーヒーを作りたい、とやる気に火が付きました。

 「何も考えないで飲んでいるとただの茶色い液体なのに、自分でやってみようと思うと、焙煎も入れ方も奥が深いと気づきました。毎日毎日新しい発見があります」

「できる」ことが増えた1年半
 開店から約1年半。最初は両親に頼んでいた豆の発注作業も仕事のメール対応も、今は1人で担当しています。両親への申し訳なさもありましたが、1人でも生きていけるように「自分でやらないと」と思っていたそうです。

 小さなことから少しずつ自信を持つことができた岩野さん。「できない」が多かった小中学校のころがうそのように、今では「できる」ことが増えました。

 ◇ ◇ ◇

コーヒー屋として忙しくも充実した生活ができるようになり、あんまり障害ということが気にならなくなりました。幸運なことに、自分の好きなことを仕事にさせてもらっているので、何も障害がないんです。
――KADOKAWA「15歳のコーヒー屋さん 発達障害のぼくができることから ぼくにしかできないことへ」岩野 響著

 ◇ ◇ ◇

 コーヒーを極め、今後も一筋でやっていくのかと思いきや、考え方は柔軟です。

 「今はコーヒーだけど、5年後違う仕事をしていてもいいと思うんです。洋服作りにも興味があり、リサイクルショップで買った服をバラして、自分で洋服を作ることもします。僕は、軽い気持ちでいろいろやってみたら自分らしさが発揮できるようになりました。とにかくやってみることが大事なのかな」

「自分がやらないと意味がない」
 中学生のころは、高校に行った方がいいのではと悩んだこともありました。高校や大学を卒業して社会に出る、という一般的な考えに縛られていたといいます。しかし、仕事をすることで視野が広がり、自分を認められるようになりました。

 自営業の両親からは、「仕事をすることは、お客様と交流すること」と教わってきました。岩野さんも人と交流することを大切にしています。

 「いろんな人に会って、生で話を聞くことでいろんな人生を知ることができました。経験こそが視野を広げられます。学校や会社に属さなくても、自分らしい仕事を見つける方法はあります。自分の能力を発揮できる場所が見つかれば、学校以上に世間とつながれる場所はあります」

 「悩んでいるときは周りが全然見えなくて、『選択肢はたくさんある』と言われても、『僕じゃできないし……』と思ってしまうかもしれません。でも、実践することで、向き・不向きがわかります。周りの大人が良い環境を用意してくれても、自分がやらないと歯車は回りません。僕みたいな例もあると知って、生き方がちょっとでも前向きになるとうれしいです」


 ◇ ◇ ◇

 岩野さんは、11月10日(土)に開かれる発達障害がある10代の方々を対象にしたトークイベントに登壇します。
 イベントは、YouTubeで生配信もされます。
 詳細は、発達ナビさまのサイト(https://h-navi.jp/column/article/35027111)をご覧ください。

 ◇ ◇ ◇

【#withyou 〜きみとともに〜】
withnewsでは、生きづらさを抱える10代に向けた企画「#withyou」を続けています。いろんな生き方、いろんな相談先があります。「#きみとともに」もつけてツイッター(@withnewsjp)などで発信しているので、みなさんの生きづらさも聞かせてください。

このニュースに関するつぶやき

  • 中学卒業してから職人なる記事を初めて読んだ時を思い出しました 彼の様に職人の道は立派と思います いつか伺いたい
    • イイネ!3
    • コメント 0件
  • こういう記事は、障害者だから、大切にして!とか、理解することとして!とか、が多いけど、この人は、きちんと正しい努力の仕方をしていて、立派。
    • イイネ!69
    • コメント 1件

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