【今週のTOKYO FOOD SHOCK】続々と誕生するブランド米の謎

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2018年11月14日 10:00  citrus

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この数年、これまで見なかった米を見かける機会が増えた。先日朝日新聞が「ゆめぴりか・金色の風…ブランド米が続々誕生、今なぜ?」という記事でも報じていたが、記事内の地図上で紹介されている米と販売開始年は以下のようになる。

 

「ゆめぴりか」(北海道/2009年)、「晴天の霹靂(へきれき)」(青森県/2015年)、「銀河のしずく」(岩手県/2016年)、「つや姫」(山形県/2010年)、「新之助」(新潟県/2017年)、「さがびより」(佐賀県/2009年)

 

朝日新聞は「相次ぐ新種開発」に焦点を当てていたが、こうして見ると産地は東北以北に集中している。実は北海道や東北各県は、近年独自のブランド米の開発に力を入れていた。

 

現在、国内で生産される米の品種でもっとも多いのは「コシヒカリ」だ。2015年の水稲の品種別作付動向(うるち米)を見てみると、全国1位は前年に続いてコシヒカリの36.1%。続く2位が「ひとめぼれ」(9.7%)、3位が「ヒノヒカリ」(9.0%)、4位「あきたこまち」(7.2%)、5位「ななつぼし」(3.4%)となっている。上位5種の顔ぶれは、昨年とまったく変わっていない。さらに言えばコシヒカリ一強という状況が長く続いているのだ。各都道府県の作付順位を見ても、関東、北陸、山陰・山陽、四国あたりはコシヒカリが圧倒的。実に全都道府県の約半数の23県で作付面積第一位となっている。しかしコシヒカリは北東北、北海道では生育環境が合わず、作付が難しいとされている。

 

一般に米の食味を大きく左右すると言われているのが、デンプンの成分構成だ。「アミロペクチン」と「アミロース」という2種類のデンプンの比率で食味は変わってくる。アミロペクチンが多く、アミロースが少ないともちもちした食感になる。もち米はアミロペクチン100%。もちろんこれ以上なくもちもちしている。そして東北・北海道は籾殻の中で米の粒が成長する登熟期の気温が低く、アミロース含量が高くなりやすかった。アミロース含量の高い米は、硬く、粘りも弱いとされる。

 

対して最近よく耳にするようになった低アミロース米の「ミルキークイーン」などももちもち感が強い。さらに言えば、コシヒカリなどもアミロース含量の少ない部類に入る。もちもちした粘りも日本の米の味わいのひとつなのだ。そこで、東北、北海道の稲作関係者は寒冷地でも食味がよくなるよう、品種育成に心血を注いできた。だからこそこの数年、東北、北海道で次々に評価の高い品種が次々に登場するようになったのだ。

 

もちろん全国、その他の地域でも新たなブランド米の開発は続いている。日本穀物検定協会の「食味ランキング」で「特A」を取る品種はこの10年で10ブランドから46ブランドへと増えた。西日本の定番米「ヒノヒカリ」の後継として2006年に登場した「にこまる」も食味ランキングで特Aの常連となっているし、熊本の「森のくまさん」は2012年に最多得点を獲得した。

 

そしてそれらの米はすべて食味が少しずつ異なる。粘りが強いもの、弾力にすぐれたもの……。銘柄に加えて、育成手法や農地によっても味は変わる。さらに言えば、米の味は炊き方でも大きく変わる。近年では、米の炊き方の正解がひとつだとは限らなくなってきている。例えば2006年に発表された広島文化短期大学のチームの研究では、「加熱開始後8〜15分後に沸騰させ、98℃以上で20分間」の加熱で「ほぼ間違いなく良いご飯が炊ける」とされている。その「加熱開始後8〜15分」という範囲のなかで沸騰するまでの間に時間をかけると、粘りが強くなる。温度を上げる段階でしっかりとねばを引き出し、米の周囲にまとわせる。口に入れた瞬間「おいしい」のが特徴だ。

 

一方、ここ最近の炊飯アイテムは少し趣が違う。とりわけ昨年発売したトースターが「感動的にトーストがうまくなる」と話題になったバルミューダが2月に発売する「BALMUDA The Gohan」は「蒸気で炊く」という手法を取り入れた。前述の「ねばを引き出す」炊き方とは対極にある炊き方でよく噛むと口のなかで味が引き出されるタイプの味わいだ。他にも「長時間浸漬×強火短時間炊飯」など、実はこの数年、炊飯はひそかにそのバリエーションを増やしている。

 

大衆の嗜好が多様化し、さまざまな新しいブランド米が続々登場し続けるいま、たったひとつの正しい炊飯法というものは存在感を薄くしていく。求められるのは、それぞれのコメにあった炊飯手法。ごはんの炊き方も群雄割拠の時代である。たぶん、ね。

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