インディー系プロレス「ROH」が、今アメリカで熱い!

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2018年11月14日 17:02  ニューズウィーク日本版

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ニューズウィーク日本版

<米王者 WWE の向こうを張ってインディー系プロレス団体が躍進――新日本プロレスとの共催試合にも注目が集まる>


米プロレス業界は大規模な転換期の真っただ中。WWE(ワールド・レスリング・エンターテインメント)帝国と並んで、インディー系の興行団体も台頭、国外にも国内にもかつてないほどリングの情報があふれている。


一般にはプロレス団体といえば WWE というイメージだが、他の団体も存在感を増している。その1つが02年にメリーランド州ボルティモアを拠点に発足した ROH(リング・オブ・オナー)。今では規模・人気共に大きく成長、業界屈指の有名レスラーたちで国内外のリングを沸かせている。それも ROH 流のやり方で。


「私たちは特定のレスラーじゃなくスタイルとブランドで勝負する。これまでに ROH の主力だった多くの人気レスラーがほかの団体に移っていったが、ROH は規模も質もかつてないほど向上している」と、ジョー・コフCOO(最高執行責任者)は言う。「ROH は人間で言えばもう少年じゃなく青年だ。ちょっと乱暴な部分や型破りな部分もあるが、年相応に責任も増している」


型破りといえば何より、ニューヨークのマジソンスクエア・ガーデンで開催する大会のチケットが即日完売したことだろう。同じ週末に WWE 最大の祭典レッスルマニアが開催されるにもかかわらず、だ。


新日本プロレスと ROH が共催する「G1スーパーカード」は、「世界一有名なアリーナ」で WWE 以外が開催する初の大会。開催日は来年4月6日――その翌日にはニュージャージー州のメットライフスタジアムでレッスルマニア35が、同じ6日夜には WWE 傘下の NXT の大会が開催される。


どこよりも熱い試合を


だがニューヨーク州郊外で生まれ、マジソンスクエア・ガーデンが8番街にあった頃からプロレスを見て育ったコフは強気だ。17年にはフロリダ州レイクランドで、今年はルイジアナ州ニューオーリンズで大会を開催。


2回とも観客動員数は ROH としては最多だった。


それでも、ニューヨークで会場を押さえるのは楽じゃない。コフによれば6000〜8000人を収容できる会場を見つけるのは難題で、外部からの抵抗に遭うのは言うまでもない。


「ご存じのとおり、少々混乱や挫折があった」と、WWE がマジソンスクエア・ガーデンとの契約を妨害しようとしたという報道にコフは言及した。「最終的には契約できて、新日本プロレスにとっても ROH にとってもマジソンスクエア・ガーデンにとっても喜ばしいことに、早々にチケットが完売した。自分たちの感じていたとおりだったことが裏付けられた」。WWE は報道を受けて「マジソンスクエア・ガーデンは ROH と自由に協力できる」との声明を発表した。


G1スーパーカードのチケットは約19分で完売、ファンが WWE 以外の興行を見たがっている証拠だ。だが WWE の「代わり」などと言ってはいけない。コフによればチケット購入者の60%以上は、ROH の有料ストリーミング配信サービス「オナークラブ」の加入者だ。「代わりなんて言うと第1希望じゃないみたいだが、チケットを買ったのは ROHのコンテンツとチケットの優先販売のために有料契約している ROH ファンだ」


ROH は放送やストリーミング配信のさまざまなオプションでファンを増やしているが、ファン拡大のカギは何と言っても試合内容。どこよりも熱い戦いが見られるという期待だ。「ROH が熱い理由? 男女を問わずレスラーたちの質、芸術性、完璧さ、技量のおかげだ」とコフ。「レスラーは全員プロレスと真剣に向き合っている。私たちも観客を楽しませつつ、プロレスを娯楽ではなくあくまでもスポーツと考えている。そこが一部のプロレス団体とは違う」


もう1つの大きな特徴は、新日本プロレスなどとの多くのパートナーシップだ。おかげで団体の枠を超え、ROH は国外で、他の団体はアメリカで試合ができる。「国際的な舞台で試合をやるのは好きだ。パートナーの団体は哲学的にもイデオロギー的にも、ビジネスのやり方が ROH に近い」と、コフは言う。


パートナーシップは国際的な舞台に限らない。国内でも17年 ROH のヤングバックスと当時インパクトに所属していたマット&ジェフ・ハーディー兄弟の対戦が話題に。今年9月のオール・イン PPV(ペイ・パー・ビュー)大会は ROH がプロデュースに協力し、主催のコーディ&ヤングバックスのほか ROH の人気レスラーが登場した。


コーディは WWE ファンにスターダストやコーディ・ローデズのリングネームでおなじみだ。一方、ダニエル・ブライアン、ケビン・オーエンズら現在の WWE のスーパースターには ROH 出身も多い。G1スーパーカードからも目が離せない。


<本誌2018年11月13日号掲載>


※11月13日号(11月6日売り)は「戦争リスクで読む国際情勢 世界7大火薬庫」特集。サラエボの銃弾、真珠湾のゼロ戦――世界戦争はいつも突然訪れる。「次の震源地」から読む、日本人が知るべき国際情勢の深層とは。




フィリップ・マルティネス


このニュースに関するつぶやき

  • 2007年に森嶋猛がROHの世界ヘビー級王座を奪取し20連続防衛の快挙を成し遂げたのが今でも記憶に鮮烈です。
    • イイネ!7
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