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味も知らない「日本の給食」そっくりに 「見た目だけでも」息子の弁当箱に詰めたムスリムママの切実な思い

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2018年11月17日 14:01  ウィズニュース

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写真笑顔で幼稚園の「給食」をほおばる次男。そこには秘密が…………
笑顔で幼稚園の「給食」をほおばる次男。そこには秘密が…………

 【#となりの外国人】
 言葉も分からない日本で、まだ味わったこともない日本の「給食」そっくりのお弁当を、妄想しながら作り続けている外国人がいます。東京都・八王子市に暮らす、インドネシア人主婦、ウッミ・ロシダさん(36)です。イスラム教徒で、戒律でアルコールや豚肉など、食べられないものがあります。息子の弁当箱に、そっとある思いを込めていました。(朝日新聞記者・松川希実)

【写真で見る】ムスリムママの「ここが大変、日本の子育て」

未知なる「親子煮」の味は?
 「明日の給食は何かな」。

 冷蔵庫に貼ってある「今月の献立表」に目をやるウッミさん。次男・イズミ君(5)の幼稚園でもらったものです。書かれていたのは「蒲鉾と鶏挽き肉の親子煮」。

 献立表は日本語。ウッミさんには読めません。取り出したのは日本で買ったスマートホン。カメラを向けると、画面に写った日本語の献立が数秒で、翻訳アプリによって英語に変換されました。「オヤコニ? なんだろう」

 メニュー名をコピーペーストして、画像検索しました。すると未知なる「親子煮」らしきものの写真がずらり。「鶏肉とタマゴを使っているのか。色を見ると……たぶん、ちょっとしょっぱくて、甘い、のかな?」

 私が「親子丼とか、食べたことがあるんですか?」と聞くと、「ないです。妄想です」とはにかみます。すばらしい観察眼です。

親子煮に激辛ソース? 妄想レシピとは
 日本でも「ハラル」(イスラムの戒律で食べても良いとされる)の食材を探しやすくなりました。毎月、献立表をもらうと、月内のメニューを調べて、ネットで注文したり、新宿区にあるインドネシア食材店から、必要な材料を取り寄せておきます。「ハラル」の蒲鉾も購入済み。弁当作りは早朝から始まります。

 妄想料理、スタート。
 
 まず一口大に切った鶏肉を、オイスターソースに漬け込みました。いきなり和食では馴染みのない調味料。妄想なのですべて自己流です。「肉に味が良く染み込み、マイルドになりますよ」とウッミさん。

 続いて、インドネシアではおなじみの野菜、小さな赤タマネギのような「バワンメラ」(赤ワケギ)とニンニクをみじん切り。熱した油で炒めると、エスニック料理の香ばしさが立ち込めます。

 味が染みこんだ鶏肉をさっと炒め、「超辛口」と書かれたインドネシアの調味料「ケチャップ・マニス」(甘口ソース)を入れて、うまみ調味料や塩で味を調え……。

 すでに私が想像していた「親子煮」とはかけ離れてしまったと思いましたが、ウッミさんが溶いた卵をさっと回し入れて小ネギを散らすと、あら不思議。見た目は完全に「親子煮」になりました。

「見た目が同じ」へのこだわり
 「おいしいです」と感想を伝えると、ウッミさんは「日本人の口には合わないだろうと思ってました。良かった。私は食べたことがないから、味も調味料も知らないんです」とほほえみます。

 できた「親子煮」はイズミ君が通っている幼稚園から借りてきた、給食用のプラスチック容器に詰め込みます。見た目は、完全に日本の給食を再現できました。
 お泊まりの合宿のときは、2日分の献立をまねて作って、冷凍し、先生に預けたそうです。

 実は幼稚園側は、そこまでは求めていませんでした。入園時に説明したのは、イスラム教徒に対応した給食はできないけれどアレルギーの子どもと同じように、お弁当の持ち込みはできるということ。食べる物は自由にもってきてください、ということ。給食の容器の貸し出しも、「日本の給食そっくり」も、ウッミさん側がこだわったものでした。

 見慣れない日本食を妄想で作るのは大変じゃないですか? ウッミさんは「最初は毎日頭が痛かったです。でも、慣れてきました」と答えます。 

 なぜ「給食そっくり」にこだわるのでしょう。「『なんでイズミはみんなと違うの』と言われないようにです。子どもはまだ、宗教や、何を食べて良いか良くないか、理解はできません。見た目が同じなら、友達に嫉妬されないだろうし、みんなに溶け込めると思いました」とウッミさんは話しました。


 数年前、小学生だった長男アズミ君(13)に弁当を持たせたところ、友達に「一人だけ違ってずるい」と言われて、つらい思いをさせたことを後悔していました。

見た目が違う、「怖がられるかも」
 ウッミさんの夫・モハマド・ユスプさん(37)は、日本が2008年から受け入れを始めた「外国人看護・介護人材」です。難関の国家試験を突破して、6年前にウッミさんと長男アズミ君を日本に呼び寄せました。
 次男のイズミ君は日本生まれ。日本語の「泉」から名前を付けました。

 ウッミさんにとっては、夫以外頼る人がいない日本で、日本語もゼロからのスタートでした。労働者として来日した夫たちは、国や就業先などの支援で日本語の教育を受けましたが、呼び寄せられた家族は独学で学ぶことになります。インターネットで日本のイスラムの女性コミュニティーとつながり、言葉を勉強しています。

 最初に覚えた日本語は、なんと宗教上タブーな「豚」でした。「食品表示を見て、食べられないものを見分けないといけないから」という、サバイバル術です。


 実は最近まで、ウッミさんは日本人に積極的に話しかけることができませんでした。長いヒジャブを着用した外見が、日本では目立ちました。特に来日時は、海外でイスラム過激派のテロが相次いでおり、日本で暮らすイスラム女性も電車内や道で日本人に避けられたという話を聞きました。

 ウッミさんも「私が話しかけたら、怖がらせるんじゃないか」と不安に思っていました。日本語はなかなか上達しませんでした。

違っても「仲間外れじゃないよ」
 今春、引っ越しのため転園してきたイズミ君の幼稚園で、思いがけない言葉を掛けられました。「スラマッ・シアン(こんにちは)」

 初めてできた、日本のママ友でした。旅行のために買ったインドネシア語の会話本を引っぱり出して勉強してきてくれたと言います。

 このママ友は、最初、ヒジャブ姿のウッミさんを見て、イスラムの人だと特に意識はしなかったと言います。ただ、お迎えのとき、園庭で1人、にこやかに子どもを待つウッミさんの姿を「凜としていて、かっこよかった」と話しました。「同じ子どもを育てるママだから」。

 今はウッミさんにインドネシア語を確認しながら、「明日、体操がある。体操服を忘れないで」など、簡単な連絡事項をインドネシア語でLINEに送ってくれます。

 ウッミさんも、ママ友たちに話しかけることに、だんだん積極的になっています。


 給食のとき「一人だけ違う」と言われて傷ついた、イズミ君の兄・アズミ君は、今春、「日本の学校に行きたい」と希望して公立中学に進学しました。

 給食の一件はアズミ君にとっては、「人生の大事なことを学んだ」という忘れられない思い出です。あの後、小学校の先生から「弁当が違っても、1人じゃない。仲間外れじゃないよ」と言われたそうです。周りと距離を置くようになっていたアズミ君でしたが、その言葉をきっかけに、日本の友達と普通に遊べるようになったと言います。アズミ君は、この思い出を大切にしていました。

 イズミ君もまもなく小学生。小学校ではどんな給食が持っているのでしょう。

 ◇ ◇ ◇

【#となりの外国人】
 日本で働き、学ぶ「外国人」は増えています。近くで暮らしているのに、よくわからない。withnewsでは「外国人」の暮らしぶりや本音に迫る企画を始めました。ツイッター(@withnewsjp)などでも発信します。みなさんの「#となりの外国人」のことも聞かせてください。

このニュースに関するつぶやき

  • 人と同じことで安心感を得られるってあるよね。特に幼稚園や小学校低学年くらいの頃は。日本独特なのかね?
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  • 妄想親子煮はお世辞抜きでホントにとても美味しそう。薬味の「パワンメラ」が気になる。そしてイズミくん、とても良い笑顔。良い、本当に良い日常。
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