ライトオンの抱える“3つの地雷”――「ユニクロ」「しまむら」と比べ欠けているモノ

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2018年11月18日 19:03  サイゾーウーマン

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サイゾーウーマン

ライトオン公式サイトより

 都心に住んでいる人はあまり見かけないかもしれませんが、地方では幹線道路沿いに100坪くらいのジーンズショップがあります。2000年頃までは、戦国時代のように、地方のそれ相応の立地に地域密着型の有力ジーンズショップが割拠していたのですが、現在に至るまでに倒産・廃業が相次ぎ、徐々に全国規模の大手何社かと、中小規模の地域チェーン店のみになりました。中には、90年代のうちに、ジーンズショップからセレクトショップやSPA型ブランドに転換した会社もあります。例えば、アーバンリサーチはもともと、大阪府門真市のジーンズショップ「ジグ三信」でしたが、97年に「アーバンリサーチ」を立ち上げてから、大手セレクトショップに。またアダストリアホールディングスは、水戸市のジーンズショップ「ポイント」でしたが、92年に「ローリーズファーム」の名でセレクトショップとして展開を開始し、大手SPAブランドに転身しました。

 そんな中でジーンズショップという形態を守り続け、全国規模の大手チェーン店として集約されたのが、ライトオン、マックハウス、ジーンズメイトの3社。売上高100億円を何年も前に割り込んでしまったジーンズメイトは「全国規模」とは呼べなくなっており、実質的にはライトオンとマックハウスの2社しか残っていないといえます。特にライトオンはその中でも圧倒的な売り上げ規模を誇るトップ企業で在り続けているのですが、そんなライトオンにも苦悩せざるを得ない現状があるようです。

「復活」といわれたライトオンの裏事情

 ライトオンは15年度、16年度と2年連続の大幅増益により、メディアで「復活」と騒がれましたが、17年度は反対に大幅赤字に転落してしまいました。そして18年度はまた黒字に復帰。どうしてこのように、赤字と黒字を交互に繰り返すのでしょうか。実はこういった現象は、ライトオンだけではなく、多くのアパレルやSPAチェーンに周期的に起きます。これは、黒字化のために、バーゲンセールでの値引きを抑制するからです。具体的に言うと、今まで7割引きで売っていた物を5割引きで売る、すると帳簿上で、利益は2割アップとして記録されます。

 しかし、そう簡単に、売り手の思惑通りには売れません。今まで安かった物が高くなれば売れにくくなるのは当然で、多くのアパレルブランドの場合、単に値上げしただけでは売れ行きは必ず落ちます。その結果、売れ残り在庫が大幅に増加し、どこかのタイミングで、さらに値下げして売りさばくか、減損処理をして捨てるか、のどちらかしか道はなくなるのです。

 どちらの方法を取るにしても大幅な減益となり、これが、アパレルブランドが増益と減益を交互に繰り返す理由。ライトオンも、15年度・16年度はバーゲンでの値引き率を抑制し、17年度は、たまった不良在庫を大幅値下げして吐き出したのです。18年度は好転しましたが、社内の管理体制や販売施策が変わっていなければ、また来年以降に、同じような大幅減益を記録することになるでしょう。

 そんな実は綱渡り状態であるライトオンの“3つの落とし穴”について考えていきましょう。

1.人気タレントの広告起用だけで売れる時代は終わった

 ライトオンの売上高はピーク時には1000億円ありましたが、今では770億円くらいにまで減っています。とはいえ、700億円規模のブランドというとアパレル業界ではそれなりの大手。にもかかわらず、一般消費者からは「ファッション企業」としての認知度はあまり高くありません。それはやはり「昔ながらのジーンズショップ」のイメージをなかなか拭い去ることができないからでしょう。今は不調に陥っているものの、かつて多くの「しまらー」によってファッションブランドとして認知されたしまむらや、一流デザイナーとのコラボを繰り返してブランドステイタスを向上させたユニクロとは、その部分がまったく異なります。いまだに毎シーズンの広告に人気タレントを起用するという90年代の手法にとどまったままです。まったく効果がないとは言いませんが、もはやそれだけで売れるという時代ではないので、もっと抜本的なブランド作りの施策が望まれます。

2.自社ブランド「バックナンバー」の出来に問題アリ

 ライトオンは大手でありながら、「ライトオン」という業態のみでほとんどの売上高を叩き出している極端な一本足打法の企業です。これまでもいろいろと第2、第3のブランドを育てようとしてきましたが、どれも失敗。アバクロの日本版を目指した「フラッシュリポート」も廃止されましたし、トラッドファッションを提案した「ソルト&ペッパー」も立ち上げ直後に担当ディレクターが退職してしまい、鳴かず飛ばずのまま終焉を迎えました。現在、カリフォルニアスタイルに憧れる20〜30歳代の男女に向けた新業態「ノーティードッグ」を立ち上げましたが、それほど業績は伸びていません。このままでは数年内に廃止されるでしょう。

 さらにライトオンの物作りにも言及すべき点があります。ジーンズショップ各社はもともと、仕入れ品での品揃えで運営してきましたが、利益を多く残すためには自社製品とのミックス型が望ましいとされています。そのため、ジーンズメイトでは「ブルースタンダード」「メイト」、ライトオンは「バックナンバー」という自社ブランドを展開しています。

 「バックナンバー」は立ち上げから10年前後経過し、ある程度の認知度は高まったと感じるのですが、良い商品と悪い商品の落差が激しく、ブランドとしての安心感に欠ける印象です。それは、品質というより「デザイン」の問題です。これは商品開発から製造までを外部に任せているため、各商品を横断する“統一感”が実現しにくいという理由によるものでしょう。例えばジーンズはすごくカッコいいのに、Tシャツはひどくモサっとしたデザイン……という感じです。またシーズンごとにも商品の出来にバラつきがあるため、今年は良かったが来年はイマイチだったなんてことも珍しくありません。これでは顧客から安定的に支持を得ることは難しいと言えます。

  ライトオンの通販サイトが先日大幅にリニューアルしました。手掛けたネット通販施策による伸長で名を上げた若き新社長が就任したので、恐らくその肝入りなのでしょう。一見したところの見た目は良くなりましたが、パソコンからもiPhoneからも、公式サイトの接続がやたらと重くて遅いことが多くあります。これでは買い物をしようと思ってもイライラしてしまい、ライトオンが出店しているZOZOTOWNや楽天、Amazonといった他社サイトに客は逃げてしまいます。  

 客からすれば同じ商品を同じ値段で買っているので不満はないでしょうが、他社サイトで買われると少なからぬ手数料が引かれますので、ライトオンはその分、利益を失っているといえます。自社サイトで売れたなら手数料が引かれることはありませんから同じ値段で売れたとしても利益率は高くなるのです。ここも改修しないことには、ライトオンはみすみす自ら利益を減額しているということになり、業績の改善はあり得ないでしょう。ネット通販で名を挙げた新社長としてはちょっとお粗末な船出だと言わねばなりません。
(南充浩)

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  • ……7割引きで売っていた物を5割引きで売る、すると帳簿上で、利益は2割アップとして記録されます。……算数出来ないの?
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