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おかんたちの温かみにあふれた「おかんアート」の祭典 86歳の巨匠も

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2018年11月19日 20:23  Excite Bit コネタ

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Excite Bit コネタ

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玄関やリビングの片隅にちょっこり置くだけで、こだわりのインテリアを、一瞬にしてゆる〜い「実家的空間」に変えてしまう“おかんアート”。それは、中高年のご婦人(おかん)たちが手づくりする作品群のこと。時にモッサリしていたり、実用的じゃなかったりもするけれど、エコで、温かみがあって、なんとも言えず愛くるしい。そんなおかんアートが神戸・三宮に大集結する!という噂を聞きつけ、足を運んでみた。

「おかんアートとハンドメイド展2018」は11月3日&4日、「マンダリンパレス」なる、元中華料理店跡で開催された。同店は3年前に閉店したのだが、新たな借り手がつかずにいたところ、実験的にイベント会場として活用することになったそうだ。

会場に一歩、足を踏み入れると、おかんアーチストたちの顔パネルがずらり。パネルの下に、プロフィール紹介や、それぞれの代表作が展示してある。バザー的なものを想像していたのだが、かなり本格的な展示のよう。 手芸にはまったきっかけや、「わたしの人生グラフ」というこれまでの歩みを折れ線グラフで示したデータもあった。結婚、育児、仕事、身体の不調など、一人ひとりにそれぞれのドラマがあり、思わず読み込んでしまう。子どもの誕生をきっかけに、手づくりに目覚めたというおかんが多いようだ。

にこやかなおかんたちに混じって、おとんアーチストの姿も。自作の竹細工を手に、いぶし銀のような存在感を放っている。今回は、2〜3名のおとうさま勢も参加しているとのこと。それでは、さっそく作品を見ていこう。


“おかんアート”は町と人、地域を結ぶ存在



このイベントの主催は神戸の兵庫区に拠点を持つ、「下町レトロに首っ丈の会」。運営者の山下香さんによれば、この催しは今年でなんと10回目になるそう。
「毎年1回、必ず開催する、おかんアートの甲子園のようなものだと考えているんです(笑)。高校球児がおかんで、その周囲に応援団がいる、みたいなイメージ。回を重ねるごとに、おかんの皆さんが運営に積極的に関わるようになってくださって、進化しつつあります」

一級建築士でもある山下さんはフランスで建築を学んでいた際に、神戸市兵庫区と、パリの19区が似ていることに気づいたという。
「どちらもいわゆる住商工混在地域といわれる下町。帰国後、仲間と町の魅力を再発見するツアーなど開催していたところ、病院や公民館、昔ながらの喫茶店などいたるところにある“おかんアート”の存在に気づき、人と人をつなぐものとして興味を持つようになりました」

そして、2008年より「おかんアート展」を毎年開催するようになり、2011年には『おかんアート ー兵庫長田おかんアート案内ー』なる書籍もリリース(長らく在庫切れとなっていたが、このたび増刷して現在発売中)。今回の会場であるマンダリンパレスもそうだが、「町の中に存在する、デッドスペースをどう生かすか」ということに関心があるという山下さん。
単に「おかんアートがかわいい、癒される」というだけではなく、背景には町と人、コミュニティのありようを見つめる視点があったのですね……。

空き缶を再利用したペン立て。おかんアートでは、「エコ」という視点も重要。「もったいない精神」が創作の原動力になっていることも多いという。そういえば昭和の頃は、「タバコの空き箱でつくった傘」や「サントリーオールドの空き瓶でつくったインディアン」などが定番だったが、今回、それらは見かけなかった。おかんアートは時代を映す鏡でもあるのだ。

お菓子を詰めてお出かけしたい、ニットのポシェット。お孫さんへのプレゼント用に手編みすることも多いのだろう。

そこはかとなく危険な香りが漂う、ネコキャラの展示品。兵庫県らしく、阪神タイガースのユニフォームを着た子も。

これからの季節にぴったりの、温かそうなニットの作品群。いまどきの“作家さん”がつくる作品とはひと味違う、失われつつある昭和の香りに心ときめく。

大人気だった、「ぼけぼー」というマスコット。静岡・沼津に住む91歳のきよゑおばあちゃんが、85歳からボケ防止のために創作しているため、「ぼけぼー」というのだそうだ。すでにSNSなどでも大人気のようでビックリ! かわいらしいロゴはイラストレーターのお孫さんによるもの。


おかんアートの巨匠も参加



おかんアートの巨匠・香坂さんは、昭和7年生まれの86歳。手芸のほかに長年民謡も嗜み、その際に着ていた大島紬を仕立て直したというジャケットがオシャレだ。昭和42年〜阪神淡路大震災の年まで、約20年、「神戸そごう」の手芸用品売り場に勤務し、手づくり教室で講師をつとめた。大腸がんで20kg痩せたりもしたが元気を取り戻し、現在も公民館で講座を開く、まさにおかんアート界の至宝。写真の手袋とタオルを活用したお人形は講座でも人気だが、手袋などの材料を120人分調達するのが大変で、毎回奔走しているそうだ。巨匠には巨匠の悩みがあるのですね……。


ご逝去されたおかんアーチストの追悼コーナーも



右から、おかんアーチストの藤岡さん、新居さん。割烹着がなんともかわいらしい。それぞれの作品を手に持っていただいた。一番左は、お手伝いに来られていた、巨匠・香坂さんの娘さん。

貴重なおとんアートの担い手・藤井さん。パネルでは強面風だったが、実際はシャイで穏やかな方であった。水道局に長年お勤めだったが、定年退職後の60代半ば、突如として竹細工に目覚めた。きっかけは、お正月の門松の後始末に困ったことからだったとか! 作品から凝り性で温かな人柄がうかがえる。

ご逝去されたおかんアーチスト、余桝(よます)さんという方の追悼コーナーもあった。シジミなどの貝を活用したマスコット、折り紙アートのツル……ささやかな手仕事であっても、作品にはその人が生きた時間が確かに刻み込まれているのだ。


神戸と陸前高田、手づくりがつないだ友情



岩手から、「おらほアートin東北」の出店も! 陸前高田をはじめとする東日本大震災の被災地で、仮設住宅や公営施設などで、手づくりを通じた仲間とコミュニティづくりを行う団体である。ゆるキャラ、「たかたのゆめちゃん」をニットでつくったものが展示されていた。「おらほ」=「私たちの」という意味だそう。

新聞紙ショッピングバッグは、広告部分の使い方が絶妙!
スタッフの方によれば、これは高知発の「しまんと新聞バッグ」がベースになっており、つくり方を教えてもらったそうだ。
「新聞紙を何枚か重ねて強度をあげ、底にもちゃんと補強用の紙を敷いているので約5kgまでの荷物なら持ち運びOKです」とのこと。GUCCIの広告面をあえて見せつつ、新聞紙バッグにしているのがおもしろい。

東日本大震災直後、陸前高田の避難所にこの「まけないぞう」の作り方をいち早く伝え、材料などを届けてくれたのが、阪神淡路大震災を経験した神戸のおかんたちだったのだそう。
「手持ち無沙汰でストレスフルな避難所生活の中、手を動かすことが心を落ち着かせ、周囲との会話を生み出すきっかけにもなりました。最初は市販のタオルに手を加える実用品だったのですが、次第におかん達がアレンジして小型のマスコット化するなどし、支援ボランティアへの心ばかりのプレゼントとしても活躍しました」とのこと。


「ものをつくることは、自分を見失わないこと」



山下香さんを進行役に、脚本家・木皿泉さんのトークショーも! 『すいか』『野ブタ。をプロデュース』『セクシーボイスアンドロボ』などのテレビドラマで知られる神戸在住のおふたりだ。木皿泉というのは作家名で、和泉 務さんと妻鹿 年季子さんによる、夫婦ユニットである。執筆の傍ら、工作や刺繍を楽しんでいるそう。

「コンビニの棚を見ても、いまは綿密なマーケティングリサーチで売れるものしか置いていない時代。だからこそ、無駄なもの、これ何に使うの?というものを見るとわくわくします」

さらに、「高度成長期以前の日本には、こういう文化は存在しなかったと思う」とおかんアートの成り立ちについても言及。

「昔は冠婚葬祭なんかも自宅でやっていたから、食事の支度なども“女手”といって、地域に住む女性たちが協力して担っていた。そういう場で、何かしら伝承されていくものがあったと思うんです。でも、高度成長期の核家族化で昔ながらの共同体が失われ、断絶してしまった。それに代わって、人と人をつなぐ役割を果たしたのが、こういう手芸だったんじゃないかな。うちの母も、地元の公民館で犬のぬいぐるみだとか、偽カルピス(笑)のつくり方を習ってきたりして、その茶色い瓶が流しの下にいつも並んでいました。」と妻鹿さん。

さらに、「ものをつくるということは、自分を見つめることでもあるし、自分を見失わないということでもある。これからもぜひ、つくり続けていってほしいなと思います」と、おかんアーチスト達にエールを送っていた。

と、そんなわけで、実家に帰ったかのようなやすらぎにあふれていた、おかんアートの祭典。作品の展示販売のほかにも、手づくりのおこわおにぎり&天ぷらといったフード類あり、おかん直伝・組紐ストラップに挑戦できるワークショップありと盛りだくさん。
すでにそこにあるものを生かし、変な自意識にとらわれたりすることもなく、ただただ純粋にクリエーションを楽しむ。さらに、手づくりを通して、仲間たちとつながる。作品の愛らしさはもちろんだが、そんな自然体でたくましい、おかんたちの生きざまに学ぶところは大きいと感じたイベントだった。
(野崎泉)

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