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どん底から復活したメガネスーパーは、なぜ「安売り」と決別できたのか

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2018年12月06日 07:53  ITmedia ビジネスオンライン

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写真メガネスーパーはどのようにV字回復を成し遂げたのか(写真は高田馬場本店)
メガネスーパーはどのようにV字回復を成し遂げたのか(写真は高田馬場本店)

 8年連続の赤字、倒産寸前まで追い詰められたメガネスーパーの「V字回復」が大きな注目を浴びている。



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 苦境から一歩抜け出したのは、9期ぶりに黒字転換した2016年4月期だった。その後も、スピードを緩めることなく再成長へと突き進んでいる。既存店売上高は、18年10月まで33カ月連続で前年超え。18年5〜10月の上半期は前年同期比20%増と足元も好調だ。



 メガネスーパーはどのようにどん底からはい上がったのか。眼鏡業界のビジネスモデルに着目して解説する。



●「レンズ付きワンプライス」の落とし穴



 そもそも、メガネスーパーはなぜ苦境に陥ったのか。



 1973年の設立以降、長年にわたって業界をけん引してきた。眼鏡を買う場所といえば個人店や百貨店だった時代に、ブランド品を大量に仕入れて販売するチェーン店の展開を開始。テレビCMなど積極的な情報発信の効果もあり、一気に知名度を上げ、売り上げを伸ばした。かつてのCMが記憶に残っている人も多いだろう。



 店舗網を全国に広げ、ピーク時の2007年には売上高380億円、540店舗を展開していた。



 ところがその直後、急速な事業環境の変化に直面する。低価格でファッション性の高い商品を販売する「JINS」や「Zoff」などSPA(製造小売り)のビジネスモデルが存在感を強めていた。このことが業績悪化の環境的な要因だと言われているが、「実はそれだけではない」と、営業統括本部シニアマネジャーの斎藤満氏は明かす。



 なぜかというと、SPAメーカーの商品とは価格帯が異なるからだ。メガネスーパーにより大きな影響を与えたのは、業界大手のメガネトップが06年に展開を始めた「眼鏡市場」。メガネスーパーの競合となる中価格帯(3万〜5万円程度)商品をそろえる店舗で、新しいビジネスモデルを打ち出した。それが、「レンズ付き」のワンプライスだ。



 眼鏡の価格はフレームとレンズの料金を合わせたものだったのが、レンズが「無料で付いてくる」という、顧客にとっては分かりやすい価格表示に。それによって価格は大きく下がり、この価格を打ち出す店舗が顧客の支持を得るようになった。



 メガネスーパーの失敗は、そのビジネスモデルにやみくもに追従してしまったことだ。競合他社はコストや客数を緻密に計算し、利益が出る仕組みを構築した上で「レンズ付き価格」を打ち出して成功していた。一方、メガネスーパーは顧客が増える見通しもないまま、一斉に在庫商品を値下げしてしまったのだ。「自滅した」(斎藤氏)格好だ。



 競合からは一気に突き放され、坂を転げ落ちるように業績が悪化。11年には債務超過に陥り、上場廃止の危機に。倒産寸前の12年、経営権は創業家一族から投資ファンドの手に渡った。



●ボロボロの状態でも残っていた“強み”



 投資ファンドによる事業再建が一進一退を繰り返す中、13年6月に現社長の星崎尚彦氏(崎はたちさき)が就任する。



 星崎氏が数年をかけて取り組んだ「社員の意識改革」が復活の大きな原動力になった。その手法については、多くのメディアや星崎氏の著書で紹介されているため、本記事ではビジネスモデルの改革に焦点を当てる。



 赤字を垂れ流し、店は汚い、目新しい商品もない……。価格競争に敗れ、ボロボロの状態だった。しかし、そんなメガネスーパーにもまだ“強み”は残っていた。



 それは「眼鏡専門店としての認知度が高く、昔から付き合いがある顧客がいること」。新規客は少なくなっており、顧客の7割は45歳以上。必然的にシニア層のデータが集まり、その客層に合った接客が磨かれていた。



 「目」を取り巻く社会的な状況も、メガネスーパーの方向性の決め手になった。高齢化によって老眼対策をする人が増加。さらに、スマートフォンの普及によって、以前よりも目を酷使する人が増える状況になっていた。



 メガネスーパーが打ち出さなければならないのは、「安い眼鏡」ではなく、「目の健康」ではないか。低価格では太刀打ちできない状況を踏まえ、大きな方向転換を決めた。モノではなくサービスで勝負する、ということだ。



 その戦略を言語化したのが、現在も掲げる「アイケアカンパニー宣言」だ。



 これまでに蓄積した「目の健康」に関する知見を生かして、質の高いサービスを提供する。そのためには、安売りを前提にしたビジネスモデルそのものを大きく変えなくてはならない。つまり、避けては通れない道があった。



 それは、「レンズ代0円」をやめることだ。



●「レンズ有料化」が受け入れられた理由



 レンズを有料にすると、顧客にとっては急激な値上げになる。「お客さまが来なくなってしまう」と、現場の不安も大きかった。低価格の眼鏡が当たり前のように浸透している中で、星崎氏でさえもなかなか踏み切れなかった一手だったという。



 星崎氏はその部分に着手することを決めると、すぐに結論を出さずに、まずは社内で議論をさせた。その結果として、「もう他に方法はない。レンズ代を有料にするしかない」という結論を導き出した。



 そして14年6月、レンズ代の有料化に踏み切った。業界の関係者の間では「デフレの時代にどうかしている。ついに狂ったか」とささやかれたという。



 しかし、この施策を「単なる値上げ」にしないための土台づくりはすでに進んでいた。他のどの店よりも「健康」に関するサービス品質を高めるため、「検査」を充実させたのだ。単なる視力検査ではなく、目の機能を測る眼体力や眼年齢、生活環境なども考慮した検査を実施し、最適な眼鏡を提案する。検査は最大52項目で、1時間かける。他社を大きくしのぐきめ細かさを実現していた。



 そのメッセージは顧客に伝わった。自分にぴったりの眼鏡を提案された顧客の満足度は高く、メインターゲットの中高年を中心に支持されたのだ。15年春には、無料で実施していた検査も有料化した。1000円、2000円、3000円の3段階で、ニーズに合った検査を選んでもらえるようにした。



 「プロとして対価をいただくべき、という考え方です。社員の専門知識がメガネスーパーの価値。そこを安売りしてしまうと、お客さまの不利益につながってしまう」(斎藤氏)



 1年間の保証サービス「HYPER保証」に加え、月300円で3年間保証する「HYPER保証プレミアム」など、付帯サービスも充実。HYPER保証プレミアムでは、3年間保証を利用しなかった場合、1万800円分の商品券がもらえる。買い替えの際にまた来店してくれるという好循環が生まれている。コンタクトレンズ用品を定期的に配送する「コンタクト定期便」の利用者も増え、収益に貢献しているという。



 現在の客単価は3万6000円。赤字だった11年には1万8000円にまで落ち込んでいた。今では、新規客の半分ほどは低価格店から移ってくるという。メガネスーパーのサービスを求めて来店する人が増えているのだ。



●将来の成長を見据える「次世代型店舗」



 メガネスーパーが次の成長エンジンとして位置付けているのが「次世代型店舗」だ。



 17年11月に高田馬場本店(東京都新宿区)をリニューアルし、次世代型店舗の1号店をオープンした。そこには、夜間視力検査など、よりきめ細かい検査をするための新たな機器を導入。また、専門的な研修を受けたスタッフが施術するリラクセーションの専門ルームも設けた。血行を促進して、より正確な検査結果を得ることが狙いだ。



 高田馬場本店のリニューアル後、客数も客単価も大幅に増えた。手応えをつかんだことから、次世代型店舗へのリニューアルや新規出店を急速に進めている。18年内には約30店舗にまで増える計画だ。



 その成果はすでに表れ始めている。次世代型店舗の客単価は、全体を大きく上回る4万5000円。高田馬場本店に至っては5万円以上だという。来期には、全体の1割を次世代型店舗にする計画だ。



 加えて、M&Aによる事業拡大にも着手している。17年11月、持ち株会社のビジョナリーホールディングスを設立し、体制を整えた。



 これまでに傘下に加えた企業の一つが、海外有名ブランドの総代理店となっているVISIONIZE(ヴィジョナイズ)。ファッション性の高い商品展開や卸販売事業といった、これまでのメガネスーパーにはなかった戦略を取り込み、事業基盤の拡大を図る。



 さらに力を入れるのが、地方に地盤がある眼鏡チェーンのM&Aだ。低価格店の広がりや後継者不足などで眼鏡店の廃業は増えている。「地域の目の健康を守る」という志を共有できる企業に対して、メガネスーパーの経験やノウハウを伝えていく。



 体の一部とも言える眼鏡に求めるものは、人によって大きく異なる。年齢や使い方、目の状態、価値観などは多様だからだ。メガネスーパー復活の裏には、自社が担うべき役割を見極め、それを貫き通した覚悟があった。


このニュースに関するつぶやき

  • この会社は…いきなりプロレス団体を設立して、全日から天龍を引き抜いたりしたのはいいけど、2年くらいで潰れたというイメージが…
    • イイネ!0
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  • メガネスーパーと言えば、1990年に数十億円、掛けてプロレス団体を興し、G・馬場の全日から天龍を始め、選手を多数引きぬき、専門誌に叩かれ、2年で撤退したという黒歴史がある�դ��դ�
    • イイネ!27
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