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【産婦人科医監修】妊婦が風疹にかかったら?抗体がないと胎児にはどんな影響がある?予防法は?

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2018年12月07日 16:20  Milly

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Milly

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今、日本では風疹が大流行しています。このため、風疹ウイルスがほぼ排除できているアメリカでは、「風疹に対する免疫のない妊婦の日本への渡航は控えるように」という勧告がでているほど。日本は今、そんなに妊婦にとって危険な場所なのでしょうか。風疹がはやることがなぜ妊婦やおなかの赤ちゃんにとってこわいことなのか、国立病院機構横浜医療センター院長の平原史樹先生にお話を伺いました。



https://www.niid.go.jp/niid//images/idsc/disease/rubella/2018pdf/rube18-46.pdf

本来、風疹がはやるのは春先から夏といわれてきました。でも2018年は秋から、罹患者がどんどん増えています。流行する季節性が変化しており、これは風疹に限らずRSなどにもみられており、日本の気候の変動が関与しているのかもしれません。通常なら秋になったらいったん減るはずが、11月になってなお増え続けています。昨年は年間の風疹罹患者は、最高時93人でしたが、今年は2000人を突破しており、桁違いに多くなっているのです。

そもそも風疹ってどういう病気?

風疹は、ウイルス性の感染症疾患。発疹、リンパ節の腫れ、発熱が主な症状です。大人がかかった場合、いずれの症状も一般的に軽いことが多く、発熱しても軽い場合も多く、はっきりとした発疹が出ると風邪ではない別の病気かと思われるかもしれませんが、発疹があまり出ないこともあり、リンパの腫れや微熱だけでは、ただの風邪と思われることもあります。

こうした軽い症状なら、忙しい人はわざわざ医師の受診をしないかもしれません。そうすると風疹なのか、ただの風邪なのか、ますますよくわからないということもあります。さらに、症状が出ない、不顕性感染(ふけんせいかんせん)ということもあります。

風疹の治療は、症状が消えるまでの時間を待つしかなく、解熱薬、鎮痛薬などの対症療法しかありません。

そして、感染している人の咳やくしゃみなどから、ほかの人へと飛沫感染します。不顕性感染や、症状が非常に軽い場合も、ウイルスが体内で生きている間は、感染力を持っているので、気づかないうちにウイルスをまき散らしている人がたくさんいる、ということ。風疹は非常にやっかいな病気なのです。

妊婦さんへの影響は?先天性風疹症候群とは?

妊婦さん自身は大人なので、そんなに強い症状が出ることはないかもしれません。ですが、こわいのは、ウイルスが胎盤を通過して赤ちゃんに行くこともあるということです。

特に、各器官が形成される妊娠ごく初期、妊娠判明から妊娠5カ月くらいまでの時期が心配です。

一番多く影響を受けるのは心臓。心疾患が多く起こります。目には白内障や緑内障が、耳は聴覚障害が起こる可能性があります。頻度は少ないですが、小頭症など脳への影響があると知的障害がある場合もあります。

また、耳の機能は遅く完成するので、妊娠5カ月の終わり、20週ごろまでは影響があります。

ただ、風疹はそれほど強いウイルスではないので、赤ちゃんの命を脅かす、つまり流産させてしまうほどのダメージ力はもっていません。そのかわり、赤ちゃんの体に障害を残すウイルスが風疹です。どのくらいの確率で障害が残るかは、感染した時期や感染したときの症状にもよりますが、ごく初期ほど影響は大きく、妊娠2カ月で50%ともいわれています。

こうして体内で風疹ウイルスに感染し、影響が残ることを、先天性風疹症候群(せんてんせいふうしんしょうこうぐん)と呼びます。

妊婦さんはとにかく「うつらないように!」

妊娠がわかったら、まず、できるだけ早い時期に風疹抗体検査を受けてください。血液を採取して、血中に抗体があるかないかを調べます。抗体価はHI(赤血球凝集抑制法)の値で示されることが多く、その数値が高いほど風疹に対する免疫が高く、一般的には32倍以上ならセーフティーゾーンとしています。

https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/rubella/dl/140425_1.pdf

風疹抗体価は、ほかの妊娠初期の血液検査と一緒に行うことが多いのですが、通常は、2回目以降の受診時や赤ちゃんの心拍が確認されてから、ということが多いようです。効率よく無料妊婦健診票を使いたい、ということから、風疹抗体検査も、初回の診断時ではなく次の健診時にほかの検査とまとめてということが多いようです。でも、心拍が確認されるのを待ったり、2回目以降になってからの受診時に検査したのでは、結果が出るのは妊娠3〜4カ月となり、風疹の影響がもっとも強いとされる時期はすでに過ぎてしまうのです。

今、この風疹抗体検査だけ、初回の妊娠診断時に抜き出して先に検査して、健診票1回分の中でカバーできないか、ということも勧められています。とにかく、妊娠がわかったら、すぐに風疹抗体価を検査してほしいのです。

妊婦さん自身と同時に、同居している家族、特に風疹抗体の有無がわからないご主人は、風疹抗体検査を必ず受けてください。先天性風疹症候群のうち、1/3はパートナーからの感染ということもわかっています。妊婦さん自身、夫・パートナーの抗体検査の結果が出るまでは、流行地にいる場合はかなりの注意をしてください。場合によっては、実家に行くなどすることも考えてほしいものです。

夫や家族が風疹抗体検査ができる施設は、地域の自治体の保健所に聞くとわかりますし、検査代の補助が出るところもあります。かかりつけの産科で一緒に採血検査してもらうこともよいでしょう。

このように、夫だけでなく一緒に暮らしている家族は全員、抗体検査を受け、もし抗体価が低かったら、ワクチン接種をお願いします。

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妊婦さんが風疹にかからないための予防策は?

もし、風疹抗体価がHI16倍以下だった場合でも、妊婦さんは、風疹のワクチンは打てません。流行地にいる妊婦さんにとっては、予防としては、とにかく人ごみに出ないこと。職場でも風疹が起こっていることがありますので、特に通勤している妊婦さんは、妊娠初期の間だけでも休むか、なんとか通勤しない方法で、在宅ワーク、リモートワークに切り替えてもらうようにしてほしいです。燹匹任蓮風疹がはやっている地域で、妊婦さんが風疹から身を護るために仕事を休む場合、公休扱いにしてほしいという勧告も出しています。

企業の健康管理者には、妊娠している・いないにかかわらず、その地域で風疹が流行していることがわかったら、妊婦さんや妊娠する可能性のある女性は、学級閉鎖と同じレベルで通勤させないことも考えてほしいです。そして、社員には全員に風疹抗体検査を受けてもらい、抗体価HI8倍未満の人にはワクチン接種するようにしてほしいという要請を、私たちはしています。

実際に、社員への風疹抗体検査とワクチン接種を励行している企業もあります。風疹流行が社内で起こったことを知った経営者が、社員の風疹抗体検査を全社ですすめて、3割しか抗体をもっていなかったのが、9割以上が風疹抗体をもつところまでできている、という実例もあります。安心して働ける会社、社会は、経営者の意識ひとつでできる、という好例です。

こうした企業がある一方で、大人で風疹によって寝込むような症状が出る人は数千人に一人と言われているからでしょうか。多くの場合は、風疹が「生産性」に影響しない病気と考えているようで、生産性に大きく影響するインフルエンザのようには、ワクチン接種が進まないというのが現状です。

こうして、被害者は妊婦と胎児、赤ちゃんのみ、ということになってしまうのです。今はせめてもの防衛策としては、妊婦さんは人込みを避けて、ひたすらウイルスから逃げまくってくださいとしか言えません。

もし風疹にかかったら?先天性風疹症候群はどうやってわかる?

先天性風疹症群は胎児診断が可能な場合もありますが、羊水検査なのでリスクがあります。検査の内容も、胎児がウイルスに感染している可能性を調べるだけです。どのくらい重度のどんな障害をもって生まれるかまではわかりません。

誕生後、先天性風疹症候群として障害があることがわかった場合は、医療処置や療育を行います。臓器障害は手術をすることもあるし、難聴の場合もトレーニングをしたり、生後数カ月後から補聴器を使うこともあります。最先端の医療である程度の治療はできますが、神経障害に関しては治すことはなかなか困難です。

そして、先天性風疹症候群の赤ちゃんは、生後しばらく長期にわたって、ウイルスが出ることが知られています。その間、赤ちゃんのおむつなど、排泄物の処理などにも手当てが必要ですし、母子が孤立してしまうおそれもあり、大きな問題とされています。

風疹は大人がかかると症状が軽いために、「三日はしか」などといわれますが、先天性風疹症候群の場合は長い期間におよびます。

ママが抗体をもっていれば、赤ちゃんは抗体をもらっているので、生後しばらくはワクチン接種しなくても大丈夫です。でも1歳までにはワクチン接種してください。

なぜ日本ではこんなに風疹がはやってしまったの?

もし、日本中のあらゆる世代が予防接種を万全に受けていれば、こんな事態にはなっていませんでした。実は今、20代半ばから後半の女性の罹患率も上がっています。若い世代でも、抗体をもっていない人もがいることも問題です。

日本に風疹ワクチンが導入されたのが昭和37年。昭和37年4月2日から昭和54年4月1日生まれの女性のみに接種していました。これは先天性風疹症候群のリスクは妊婦にあるわけだから、女性だけが受けたらよいということでもありました。その後、昭和54年4月2日から昭和62年10月1日生まれの男女に中学生時に接種することになりましたが、個別接種のため接種率は低く、ようやく昭和62年10月2日から平成2年4月1日生まれの男女に対して乳児期に1回の接種をすることになりました。

このような経緯から、日本では風疹の抗体をもっていない「すきま」となる世代ができてしまいました。その「すきま」となった世代が、今ちょうど「働き盛り」と呼ばれる世代で、いちばん多く、世の中に出歩いている人たち。一度鎮静化したように見えた風疹ウイルスですが、海外からの渡航者が増えたことにも関係して、絶え間なく風疹ウイルスが入り込み、抗体を持っていない人たちの間で急速に広まってしまった、という事情です。

抗体を持っていない妊婦さんが風疹にかからないために

胎児が風疹にかかると、影響が強く残る風疹。胎児の臓器や脳神経が作られていく形成期にダメージを受けるのですから、機能そのものに支障が起こる、ということを覚えておきましょう。

リスクのある妊婦さんには、とにかく「ウイルスから逃げろ」としか言えないのが心苦しいところです。住んでいる地域で流行していると聞いたら、とにかく外に出ないこと。ご主人にも抗体検査をしてもらい、必要ならワクチン接種を受けること。会社勤めの妊婦さんは、上司や総務と相談して、通勤しない働き方に切り替えてください。

対策としてできることは、ワクチンを打つこと。でも、なかなかそれができないのは、お金がかかるからだけではないのです。「わざわざ職場を休んでまで?」と思う気持ちがあるからでしょう。これは社会の問題であり、これから生まれてくる子どもたちの将来の問題です。

先天性風疹症候群は、「防ぐことができた障害」といわれています。自分の赤ちゃんのためだけでない、これから生まれてくる赤ちゃんみんなのために、今これからできること、を、妊婦さんとその家族だけでなく、日本全体で考えていく必要があるのです。

取材協力/ 参考文献/、、

取材・文/関川香織


監修
平原史樹
国立病院機構横浜医療センター院長
【ひらはら・ふみき】 1977年、横浜市立大学医学部卒業、同産婦人科。1984年、アメリカメイヨークリニック免疫遺伝学リサーチフェロー。1998年、横浜市立大学大学院医学研究科教授(生殖生育病態医学産婦人科)。2012年、同附属病院病院長。2016年、国立病院機構横浜医療センター院長就任。”風疹ゼロ”プロジェクト作業部会代表。

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