「恥ずかしくないの?」中学受験で“子どもに言ってはいけない言葉”を浴びせた母の猛省

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2018年12月09日 22:03  サイゾーウーマン

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サイゾーウーマン

Photo by Photography from AC

“親子の受験”といわれる中学受験。思春期に差し掛かった子どもと親が二人三脚で挑む受験は、さまざまなすったもんだもあり、一筋縄ではいかないらしい。中学受験から見えてくる親子関係を、『偏差値30からの中学受験シリーズ』(学研)などの著書で知られ、長年中学受験を取材し続けてきた鳥居りんこ氏がつづる。

 中学受験は「親子の受験」。それは、ある“危険”を常に孕んでいることにもなる。親が絶対的権力者になり、思い通りにならないわが子に向かって、暴言を浴びせてしまうのだ。

 人間は否定され続けると“やる気バロメーター”がゼロになっていく生き物なので、常に暴言を吐き続けている親からは“お受験スーパーヒーロー”は生まれにくい。しかし、哀しいことに、親も人間。修業が足らず、ついつい言わなくていいことどころか、“言ってはいけないこと”までを言い放ってしまいがちになる。

 ただでさえ時間がないのに、説教タイムで時間を浪費し、それどころか我が子の“やる気”を完全に断ち切るような愚行を繰り返すのだ。合格を後押ししたいのか、邪魔したいのか、親自身、訳がわからなくなるのである。この矛盾を一番感じているのが、怒ってしまう当の親本人だということが、いっそう切ない。

 筆者が子どもの中学受験を体験した母に行ったアンケート調査によると、親が言い放つ3大暴言の傾向はこれだった。

「金」「頭」「強制終了」

 「金」は「いくら金かけてると思ってる?」に代表される、“コスパの悪さ”に対する苛立ちを我が子にぶつける言葉。「頭」は「アンタみたいなバカ、見たことない!」に代表される、思うように偏差値が上がらない苛立ちを我が子にぶつける言葉。

 そして、とどめが「強制終了」。その代表は「受験なんかやめちまえ!」である。中学受験は資本ありきなので、たいていは親主導でスタートする。にもかかわらず、親の独断で「もう受験はやめ!」という“リタイヤ宣言”をしがちになるのだ。しかも、始末が悪いことに、本気で受験をやめさせたいわけではなく、我が子自身が「やる気のなさ」を猛省し、親が思う「正しい受験道」に邁進してくれとの願いを込めての暴言。まったく、多くの親には忍耐と寛容いう修業が足らないのなのかもしれない。

 今回は、親が暴言を吐いてしまったケースとその後を見てみよう。ある日、筆者に、小学6年生の洋貴君の母、幸子さんから電話が入ったことがある。

「私、今、洋貴にひどいことを言っちゃって……。『もう、こんなんじゃ、(最上位校には)どこにも受からないね。友達より成績悪くて、恥ずかしいと思わないの?』って……」

 洋貴君は、塾の最上位クラスをキープしているほど優秀だったのだが、そこは6年ともなると非情なる世界で、競争も激化。次回のクラス編成では最上位クラスにいられるかも微妙な立ち位置になっていたそうだ。幸子さんは筆者に動揺を隠さず、こう言った。

「私、洋貴が言い返さないことをいいことに、いつも言いたい放題なんです。同じクラスの子たちに、ウチだけが負けるわけにはいかないって思い込んでしまって……。それで、焦って、またあんなことを言ってしまいました」

 志望校特訓から帰宅した洋貴君は、母の暴言を聞いた後、泣きながら「みんな、すごすぎて。自分は全然、できない。こんなにやっているのに、これ以上、どう頑張ればいいのか教えてほしい」と訴えたという。

 幸子さんから見ると、洋貴君は塾には楽しそうに通っているし、比較的、ヘラヘラしているように映っていたので、まさか、そんなに追い詰められているとは夢にも思わなかったそうだ。慌てた幸子さんが必死に洋貴君に謝り、まだ挽回できる時間は十分にあることなどを告げたそうだが、洋貴君は一言も返さず、部屋に籠りきりになったという。

 幸子さんは、成績が伸びない洋貴くんを叱ったのではなく、自分の不安を洋貴くんにぶつけていただけなのだろう。筆者はアドバイスとして「塾に駆け込め!」とだけ伝えた。その足で幸子さんは塾に行くのであるが、室長は幸子さんに力強く、こう言ったという。

「男は泣いて、またいっそう、強くなるんですよ。洋貴は這い上がってくるから、心配ないです。お母さんは笑顔の方が良いに決まっていますが、そうもいかないのが中学受験です。それもこれも込みなのが、中学受験。困ったときには、我々に任せてください」

 そこで、幸子さんは塾の先生方にお任せして、もう何も言わずに、息子を見守ろうと誓ったという。

「洋貴をこんなにも追い詰めたのは私です。やめるのも、続けるのも洋貴の自由。私はどちらの選択であっても洋貴の応援団であり続けようと思います」

 その半年後、最難関中学の入学式には、晴れやかな笑顔の洋貴君と幸子さんがいた。

 後日、筆者が洋貴君に「あの時の母の暴言をどう思ったか?」を聞いてみたところ、「う〜ん? そんなことがあったかな? 母は口数が多い方なので、僕はあんまり聞いていなくて(笑)。でも、母がこの世の中で誰よりも僕の事を心配してくれているってことだけは、わかっているんで」と返って来たので笑って、そして、ちょっと泣けてきた。

 言わなくてもよい暴言を言ってしまうのが親。親なればこそということもある。でも、子どもはそれをも超えていってくれる。

 筆者はこう思っている。中学受験に親の暴言は付き物だ。良い悪いでいえば、悪い。しかし、親も修業の最中。時には自分の暴走を内省し、まずいと思ったら、改める。そして、煮詰まったら、第三者に助けを求める。少し、冷静になれるから。子どもに暴言を言ってしまうのは、疲れている印。その時は迷わず、一息付く。そうやって、親子で手探り、行きつ、戻りつして進むのが中学受験なのだ。
(鳥居りんこ)

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  • 兄の娘は行きたい学校があって自分から中学受験したいと言ったそうです。人間は夢や目標があると自分からやります。あと、勉強も向き不向きがあります。そこそこ勉強しただけで旧帝大に入っちゃう人いますからね。いとこは京大後期一発で現役合格ですもん(笑)
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