悟空&ラスカル&ギルモン…野沢雅子、演じたキャラへの愛と秘話明かす【インタビュー】

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2018年12月10日 21:53  アニメ!アニメ!

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悟空&ラスカル&ギルモン…野沢雅子、演じたキャラへの愛と秘話明かす【インタビュー】
12月14日に公開となる映画『ドラゴンボール超 ブロリー』。『ドラゴンボール』シリーズの劇場版として20作目を飾る記念碑的作品だが、その主人公である孫悟空を、TVシリーズから一貫して演じ続けている声優・野沢雅子さんにインタビューの機会を得た。

時には役になりきって、時には立ち上がってポーズを取りながらインタビューに応えるその様子は、パワフルかつエネルギッシュで、まさに孫悟空を地で行く元気ぶり。そんな野沢さんが語る悟空像を、ぜひご一読いただきたい。

また、先日アニメ!アニメ!で行ったアンケート「野沢雅子さんが演じた中で一番好きなアニメ作品キャラクターは?」についての感想も聞かせていただいた。意外なキャラクターへの思い入れも……?
[取材・構成=馬波レイ]

『ドラゴンボール超 ブロリー』

2018年12月14日全国ロードショー
■執念で耳にしたアライグマの鳴き声

――読者アンケートの結果では、やはり孫悟空が1位。続いて孫悟飯が5位、ゴクウブラックが9位と、『ドラゴンボール』シリーズのキャラクターが多数ランクインしました。


[野沢雅子さんが演じた中で一番好きなアニメ作品キャラクターは?]
1位 孫悟空 『ドラゴンボール』
2位 ラスカル 『あらいぐまラスカル』
3位 星野鉄郎 『銀河鉄道999』
4位 鬼太郎 『ゲゲゲの鬼太郎』『墓場鬼太郎』
5位 ギルモン 『デジモンテイマーズ』
5位 孫悟飯 『ドラゴンボール』
7位 ガンバ 『ガンバの冒険』
7位 ドラえもん 『ドラえもん』
9位 えん魔くん 『ドロロンえん魔くん』
9位 怪物太郎 『怪物くん』
9位 ゴクウブラック 『ドラゴンボール超』
9位 パレー・ハリントン 『愛少女ポリアンナ物語』
9位 目玉おやじ 『ゲゲゲの鬼太郎』
14位 風大左衛門 『いなかっぺ大将』
14位 三平 『風のように』
14位 Dr.くれは 『ワンピース』
14位 バーダック 『ドラゴンボールZ』ほか
14位 ブルブルくん 「わかさ生活」(CMアニメ)


野沢雅子(以下、野沢)
なるほど、やっぱり1位は悟空なんですね。意外だったのは5位のギルモン。大好きなキャラクターなんですけど、まさかこんな上位にくるなんて!

――子ども時代に『デジモンテイマーズ』を見ていた世代の読者からの熱い声が多かった印象です。

野沢
これは最高に嬉しいですね! 収録している当時は、原作が携帯ゲームということで、見るのがマニア層な気がしていたんです。
デジモンたちは言葉をしゃべるけど、ちょっと着ぐるみみたいだし(笑)。でも、いざ演じてみたら無邪気なギルモンがすごくかわいくて好きになったの。

――人外キャラクターつながりでいうとラスカルが2位です。

野沢
これも意外ですよね、なにしろセリフが鳴き声だけですから。
当時役者仲間から「マコさん、このあいだ番組を見ましたけど、なんの役なんですか?」と聞かれて「ラスカルよ」って答えても、それが番組名だと勘違いされて、わかってもらえないんですよ(笑)。


――猫や犬ならまだしも、役柄はアライグマ、しかもセリフがないのでは演じるのが大変だったのでは。

野沢
ラスカル役はオーディションだったんですよ。主人公を演じた『ピコリーノの冒険』の収録後に役者やスタッフが集まっての反省会があったんですけど、制作会社の方から「次はこれをやるんです」と見せられたのがラスカルで。
しゃべらないで鳴き声だけの役だって説明されたことで、逆に「おもしろそう!」と思って、その場で頼み込んでオーディションに参加させてもらったんです。

――すごい好奇心ですね。役が決まってからは?

野沢
まず、アライグマの鳴き方がわからない。動物園に10日間くらい通ったんですけど、ちっとも鳴かないんです。
そんな折にテレビで『野生の王国』という動物ドキュメンタリー番組を見ていたら、偶然アライグマが姿を見せて、一瞬だけ「アッ」と鳴いたんです。その1回きりを必死に頭にインプットしましたよ。

――となると、収録も大変だったのでは。

野沢
台本のラスカルの箇所には「ミー」としか書いてないんですけど、例えばスターリングが「ねえラスカル、いまなにか食べたい?」とあったら、「ミー」の横に「僕、氷砂糖が食べたいな」と書き加えるんです。
通り一遍に「ミー」と鳴いてただけでは、選んでくれた方に申し訳ないし、私が演じている意味はない。ですから、その気持ちで鳴き声を出していたんです。

→次のページ:演じる役柄を「ヒーロー」と思ったことはない

■演じる役柄を「ヒーロー」と思ったことはない

――悟空を始め、鬼太郎、星野哲郎やガンバなど、ヒーローを演じられることが多いように思います。そういうキャラクターを演じる上で心がけていることはありますでしょうか。

野沢
私ね、自分(の役柄)をヒーローって思ったことはないんです。なぜならヒーローは、番組を見ている皆さんが決めることだから。
そのキャラクターなりの等身大のセリフで言ったことが、皆さんの中でヒーローと聞こえているならそれはそうかもしれません。



――深みのあるお言葉です。では質問をちょっと変えて、少年を演じるときの心構えは?

野沢
私が少年を演じているときは、たぶん女性っぽくないと思います。椅子に座っているときには膝をくっつけなかったり、マイクの前に立つと(突如立ち上がって)こういう前のめりな格好になりますよ。そうじゃないと「俺さあ!」なんて声が出せないですよ。やっぱり体がともなっての声ですから。

あとはやっぱり、男性の動きや喋り方を日々観察しましたね。それはもう役者としての引き出しの中に全部インプットしてあります。

■悟空は誰とでも仲良くなれると思っている

――シリーズ最新作『ドラゴンボール超 ブロリー』についてお伺いしていきます。試写を拝見したのですが、今回の悟空はいつにも増してイキイキとしていますね!

野沢
すごく悟空らしいでしょ? 戦いと日常に落差があるところもいいじゃないですか。戦っているときはめちゃめちゃ強いですもんね。


――中盤以降のバトルは「いったいいつまで続くんだ!?」と思うほどのボリュームです。

野沢
戦い、戦い、戦いの連続で、「私、叫び声じゃないセリフを言ったかしら……」と思うくらい。だからこそ逆に、ドラマ部分のセリフが生きてくるんでしょうね。

――長さ以上に、悟空が追い込まれるシーンが多くて、悲鳴をあげ続けているのが余計にたいへんそうだなと。

野沢
皆さんから「喉は大丈夫ですか、疲れませんか?」って心配していただくんですけど、収録で疲れたことは一度もないんですよ。
劇団でお芝居をやっていた人間だから、普段から鍛えたりはしないんですけど、本番で声が出ないのは役者の恥って思っています。

若いころは海に向かって発声練習をしたりもしました。本当は潮風は喉には良くないらしいんですけど、でも過保護にしたらダメなんです。仕事で怒られても「なにくそっ!」って思うくらいじゃなきゃ。


――痛めつけると強くなるとは、サイヤ人を地でいく鍛錬法かもしれません(笑)。ところで、映画では悟空が地球に送られる前の幼少期が描かれています。

野沢
子ども時代の悟空ってかわいいですよね。両親との別れのシーンでは、役に入り込んでいるから切なくて泣いちゃいそうになりました。でもね、あまりジメッとしすぎない別れなのがいいですよね。

――父親であるバーダックを久々に演じてみていかがでしたが? 同じ父親でも、悟空とバーダックではちょっとスタンスが違うように感じました。


野沢
もし息子が転んだら、悟空だったら駆け寄って励ますでしょうけど、バーダックは「立つんだ」とだけ言って手は貸さないと思うんです。
そんな、厳しさの中にも彼なりの愛情を込めたお芝居をしたつもりです。前面に出さない優しさだけど、彼の人間性がとってもよくわかっていいじゃないですか。
周囲には冷たい人間かと思われるかもしれないけれど、ふとしたときの優しさがあれば見方が変わってくる。

――バーダック、悟空、悟飯、悟天、ゴクウブラックと、ひとりで複数のキャラクターを演じられる野沢さんですが、使い分けはどうされているんでしょう。

野沢
うまく説明はできないですけど、キャラクターと向き合った瞬間にパッと切り替わるんですね。すぐにその人物の中に入ってしまう。

――ちなみに、悟空と悟飯が会話するシーンのときって、収録はどうされているのでしょうか?

野沢
本来なら、まずは他のキャストと一緒に悟空を録って、その後にひとりで悟飯の分を録るんです。でも一度だけ、ひとりでキャラクターの掛け合いをしたことがあったんですよ(と、悟空と悟飯の掛け合いを即興で演じる)。
そしたら後輩から「やめてください。全員がマコさんみたいなことができると思われると困ります」って、たしなめられちゃいました(笑)。

――目の前で演じてくださって、あまりの出来事に鳥肌が立ちました。ところで、これまでで一番印象に残っている悟空の戦いというと?

野沢
やっぱりフリーザですよね。なにしろわがままでしょ? 戦っているのに「今のは痛かったぞー!」って。痛いのは当たり前なのにねぇ。

――(笑)。何度も死闘を繰り広げているし、悟空とフリーザでは性格的にもウマが合わなさそうですね。

野沢
第三者から見たらきっとそうでしょうね。でも、悟空はフリーザとも合うと思っているはずです。悟空は誰とでも同じ目線で仲良くなれると思っている人。それは戦っている相手ですら同じ。

――それが、野沢さんが考える悟空像。

野沢
もちろん、最初からそう思っていたわけじゃないんですよ。毎週ごとにドラマがあって、そのひとつひとつに“悟空ってこういう面もあるんだ”っていうエピソードがある。話が進むに連れて自分なりの悟空像を作っていったわけですね。

悟空とは長く一緒に生きてきたし、とってもいい生き方だったと思います。それに、この映画で終わりだとは思っていません。
悟空って、とってもグーグー寝る人だから、野沢雅子個人としては「そろそろ起きてよ!」って声をかけたい。きっと大きく伸びをしながら「たまげたなぁ。オラ、腹減ったぞぉ」って出てきてくれますよね(笑)。

ロサンゼルスやニューヨークで開催されたワールドツアーでも大喝采で迎えられたという野沢さん。サイン用の色紙が買えずにいた少年たちに、自腹で購入したモノをプレゼントしたという心温まるエピソードも語ってくれた

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