平野ノラ、ポンコツ夫エピソードに考える「選んだのは自分」という結婚自己責任論の是非

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2018年12月14日 00:02  サイゾーウーマン

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サイゾーウーマン

平野ノラオフィシャルブログより

羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな有名人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます

<今回の有名人>
「そういう相手を選んだのは、ノラちゃんでしょ?」HKT48・指原莉乃
『ピンポイント業界史』(テレビ朝日系 12月2日)

 『ピンポイント業界史』(テレビ朝日系)は、芸能人がこれまで炎上を恐れて封印していたエピソードを披露し、スタジオ内の観客(一般人)の共感が得られれば、賞金がもらえるという番組である。12月2日放送回に出演したお笑い芸人・平野ノラは、「本気で成田離婚を考えた」という新婚の夫のポンコツぶり披露した。

 新婚旅行で人生初ハワイに出かけることにしたノラ夫妻。しかし、夫はハワイに関する計画を立てることに熱心でなく、人気アトラクションを予約してほしいと3カ月前から頼んでいたにもかかわらず、動こうとしなかった(その結果、予約は取れなかった)。ハワイで宿泊したホテルはセルフサービスが基本で、タオルなども自分で用意するタイプだったというが、夫はバスマットを持ってきたという具合だ。

 「そういう人、知ってる」と思いながら私は見ていたが、ノラの思いに共感する人は少なく(20人中7人)、賞金獲得にはならなかった。夫婦ネタは友人間でも共感の仕方が難しいので、仕方がないのかもしれない。「夫がひどい」と訴える妻に乗っかって、相手を責めることは簡単だが、そうは言ってもよそ様のパートナーを責めるのはよろしくないだろう。また、一緒になって悪く言っていると、なぜかこちらだけが悪者にされるということも、よくある話だ。

 しかし、共感が得にくい最大の理由は、HKT48・指原莉乃の「そういう相手を選んだのは、ノラちゃんでしょ?」という発言にあるように、「自分で選んでおいて、文句を言うな」という自己責任論が根付いているからではないだろうか。“夫がポンコツ”ネタは、女友達の間でも共感の仕方が難しいとしたが、共感というより、「そんな結婚は失敗だ」とか「そういう夫を選ばないようにしなくては」とか、自己責任にもとづいた教訓としてシェアされることもある。

 ノラも自己責任的な価値感を内包しているようで、「夫を育てます」と発言していたが、夫がポンコツなのは、本当にそういう人を選んだ妻に責任があるのだろうか? 

 番組でノラは、「夫妻ともにハワイは初めて」と言っていたが、海外旅行に慣れていなかった場合、いろいろなことにモタモタするのは、おかしなことではない。わからないことがあったら、聞いたり調べればいいわけだが、気後れして質問することができなかったり、逆に日本と同じように行動して顰しゅくを買う男性もいる。

 妻が注意しても態度が変わることはなく、「こんなコミュニケーションが取れない人と一生一緒にいられない」と、帰国後にすぐ離婚する人がいて、それを成田離婚と呼ぶのだが、この言葉が定着した頃、旅行会社が男性をターゲットに「成田離婚を回避するためのプレ新婚旅行」を企画して話題を呼んだことがある。旅行の経験がないゆえにモメるのであれば、あらかじめ“予習”しておけば、離婚を回避できるという考えのもとに企画された旅行で、このツアーに参加した男性の成田離婚率は0%だったそうだ。つまり、ノラの夫エピソードも、ただ単に「初めてのことに強いプレッシャーを感じて、自信がないからうまく対応できない人もいる」という程度の話で、ノラが真剣に離婚を考えるようなことではないのではないか。

 「夫を育てる」というノラの発言が、具体的に何を指すのかわからないが、「ダメな夫を選んだ私が悪い」という自己責任論を胸に抱えたままでは、ずっとイライラしたままだろう。小さなわが子とて、親の思う通りには育たないのに、大の大人がそう簡単に妻の言うことを全て聞くとは思えないからだ。となると、自己責任論の妻は「この人がヘボいと、私までダメだと思われる」「こんな夫としかと結婚できなかったのは、自分のせい」と、ずっと自分と相手を責め続けるのではないだろうか。

 結婚とは、2人で生計を共にする契約であり、相手の人格や能力に責任を持つことではない。なので、ポンコツであっても法を犯さなければOKだし、妻(夫)の責任でもないように思う。

 「この人、なんでこんなことするんだろう」と思うのが結婚の始まりではないか。恋愛禁止のグループにいる若い指原も、新婚の平野もあまり頭でっかちにならずに、ゆるーく行きましょう。

仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。
ブログ「もさ子の女たるもの

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