『ドラゴンボール超 ブロリー』4DX版はド派手演出の連続! 今までにない挑戦を感じる出来に

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2018年12月14日 10:02  リアルサウンド

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 座席が前後左右に動き振動する。水が降り注ぎ、煙が舞い、フラッシュがまたたき、風が吹き、香りが立ち込めるなどなど、映画を“観る”、“聴く”だけでなく、“体感する”ことのできる最新の上映設備「4DX」システム 。そんな「4DX」が、ここまで効果的に使われた映画作品があっただろうか。『ドラゴンボール超(スーパー) ブロリー』のことである。


 超パワーと超パワーが勢いよく激突する『ドラゴンボール超 ブロリー』と、アトラクションのようなライド感が味わえる「4DX」の組み合わせは、観客も一緒に衝撃を感じ、戦っている気分が味わえる。今回の演出による動きの強度は、9段階のうちの最高である9を多く使用。エクストリーム版で上映される。


 ここでは、「4DXエクストリーム版」で本作『ドラゴンボール超 ブロリー』を体感した感想や、同時にいままでにない様々な挑戦を感じさせる内容を、じっくりと考察していきたい。


 本作は、鳥山明原作の大人気アニメ『ドラゴンボール』シリーズの劇場版20作目となる記念作品。劇場版シリーズは、2013年の『ドラゴンボールZ 神と神』が17年ぶりの復活作となり、以降『ドラゴンボールZ 復活の「F」』(2015年)、そして本作と続いていく。2015〜18年に放送されたテレビアニメ『ドラゴンボール超(スーパー)』は大ヒットのなか幕を閉じたが、今回シリーズ初の劇場版となり、スクリーンに登場する。


 今回の作品で気づかされるのは、絵柄の大胆な変更である。キャラクターやメカニックなどのデザインは原作者・鳥山明が担当しているが、作画監督には新しく『ONE PIECE』や『プリキュア』シリーズなどで原画を手がけてきた新谷直大が務めており、ヴィジュアルが現代的な印象に刷新されている。鳥山明本来の絵柄とは少し離れたように感じるものの、比較的に楽しくのびのびと描いているように感じられるため、いきいきしているという意味では、鳥山明の感覚にむしろ近づいているかもしれない。この思い切った変更はかなり成功しているのではないだろうか。


 さて『ドラゴンボール超』の現在の展開はというと、孫悟空とベジータのサイヤ人コンビが、「破壊神」たちの下で修行を積み、神の領域に踏み込む「スーパーサイヤ人ゴッド」、そしてさらにそれを超える「スーパーサイヤ人ブルー」への変身を遂げ、宇宙の存亡をかけた戦いに身を投じていくという物語が描かれていた。


 そして、本作で孫悟空たちの前に立ちはだかるのは、凶悪な宇宙の帝王フリーザによって、かつて滅ぼされたサイヤ人の数少ない生き残り「ブロリー」だ。文明のない辺境の惑星で野生児として育ったブロリーは、父親の虐待によって行動をコントロールされて育った。そしてサイヤ人に恨みを持つ父親の復讐の道具として、孫悟空とベジータの前に立ちはだかる。


 ブロリーは、じつは過去の映画版で複数回登場しており、ベジータが一瞬で戦意を喪失するほどの圧倒的な力を持った強敵として描かれた、映画版だけのキャラクターだった。極度に無口だが、悪役のなかで随一の存在感を持ち、とくに海外のファンの間で人気が高いのだという。今回、そんな旧ブロリーのデザインを行っていた鳥山明が、新たにリデザインを施し、悪役ながら感情移入できる奥行きのあるキャラクターに生まれ変わらせている。


 そんな新たな設定によって、野生児という特徴が与えられたブロリーの最も大きな注目点は、やはりその強大なパワーと、異常なまでの戦いの潜在能力だ。野生児ブロリーはスーパーサイヤ人になれないばかりか、その概念すら知らない。本来なら、すでに「スーパーサイヤ人」、「スーパーサイヤ人2」、「スーパーサイヤ人3」、そして「スーパーサイヤ人ゴッド」、さらに「スーパーサイヤ人ブルー」に到達し、その度に飛躍的パワーアップを果たしてきた孫悟空やベジータとは、幼稚園児とプロ格闘家のようなもので、敵にはなり得ない差があるはずなのだ。


 しかしブロリーは、スーパーサイヤ人にすらなれない状態で、悟空やベジータとの超パワーの戦闘に対応していく。一時は圧倒されても、戦闘のなかで追いつき乗り越えていく。悟空とベジータが長年かけて歩んできた成長を、ものの数分で追い上げていくのである。そしてついに、スーパーサイヤ人ゴッドの力にも追いついてしまうブロリー。かつてフリーザが悟空たちと戦って感じた焦りを、今度は悟空が味わわされるのである。そんな真の天才ブロリーが、もしスーパーサイヤ人になったとしたら一体どうなってしまうのだろうか……。


 4DXでは、そんな悟空たちの戦闘による縦横無尽の激突やエネルギー弾の衝撃などが、モーションシートの激しい動きと振動、さらにフラッシュによる閃光やスモークで演出されることはもちろん、変身時は熱風が吹き付け、観客もスーパーサイヤ人になる気分が味わえるのが嬉しい。


 『ドラゴンボール』映画版にまず求められるのは、孫悟空などの人気キャラたちが、それぞれに活躍して豪快なバトルを見せるという「お祭り」としての役割だ。本作は、それを果たしつつ、戦うキャラクターを悟空、ベジータ、ブロリーなど、超パワーを持った少数に絞ることによって、じっくりとバトルが楽しめ、景気の良いエフェクトや演出が続いていくことで、お祭りの雰囲気はこれまで以上に高まる。そういう意味で、座っている観客が振り落とされそうになるほど派手に動くシートは、まさにお祭りの神輿(みこし)に担がれているような気すらしてくる。


 超パワーの格闘がお祭りならば、色とりどりの閃光を放つエネルギー弾や衝撃波は花火のようだ。ブロリーの無尽蔵のパワーから繰り出される、緑色の気の高まりや、おびただしい数の気弾は、いままでの『ドラゴンボール』シリーズのなかでも、最高レベルに景気のいい演出で描かれ、迎え撃つ超特大「かめはめ波」がそれに拮抗する。振動、衝撃、閃光などによって、4DXはその演出を強化する。ここまでド派手なお祭り作品はまたとないため、まさに『ドラゴンボール』と4DXは、それぞれに価値を高め合うベストパートナーといえよう。あまりに高いテンションが持続することで、終了後にはスポーツ後のような心地良い疲労感さえ覚え、思わず仙豆(せんず)が欲しくなってしまった。映画作品を観ることで、こんな感覚を味わうのは初めてである。


 では、本作がただ超絶バトルが繰り返されるだけの内容なのかというと、そういうわけではない。お祭り感が発揮されながら、前半は意外にも悟空、ベジータ、ブロリーそれぞれの生い立ちのドラマがじっくりと描かれ、旧TVシリーズでスピンオフとして作られたサイヤ人たちが絶滅していくドラマをリライトすることで、彼らにまつわるサイヤ人たちの葛藤や冒険をもしっかりと表現されていく。これはいままでの1時間に満たなかった映画シリーズや、前2作にも存在しなかった試みだ。


 そんなドラマや戦いのなかで明らかになっていくのは、サイヤ人それぞれの生き方の違いだ。エリートの誇りを力の源(みなもと)にして戦うベジータ。父親の思い通りに行動を強制され、孤独な生活のなかで愛情を追い求めてきたブロリー。そして、のびのびと自分の気持ちに正直に行動し続ける悟空。そのような彼らの人格の一部をかたちづくったのは、それぞれの親のそれぞれの想いであったことが描かれるのだ。そして、ブロリーのように真っ当な愛情を受けなかったとしても、最終的には本人の自由意志によってこれからの生き方を変えることができる。家族を持つことで新しい価値観に気づいたベジータ、自由意志のかたまりといえる悟空の存在意義が、ここで生きてくる。複数の要素が見事に整理された脚本だ。


 いままでにない新しいヴィジュアルや濃密なドラマ、そして何より贅沢過ぎるド派手演出の連続。本作『ドラゴンボール超 ブロリー』を楽しむなら、やはり劇場での鑑賞を選択したい。そしてどうせ劇場で観るのなら、ベストマッチしているといえる「4DX」で、エクストリームなお祭り感を味わってみてほしい。(文=小野寺系)


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