賀来賢人×伊藤健太郎の“男の友情”がなぜ胸にささるのか 『今日から俺は!!』は新しい青春ドラマに

0

2018年12月16日 06:02  リアルサウンド

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

リアルサウンド

写真

 遂に『今日から俺は!!』(日本テレビ系)が終わってしまう。なんでこんなに面白いんだろう。何でこんなにこのドラマが好きなんだろう。オープニングの演奏と踊る清野菜名と橋本環奈を観るだけでやたらテンションがあがってしまう。日曜日は、家に帰ってテレビを観るのがいつも楽しみでしかたなかった。


参考:賀来賢人が語る、『今日から俺は!!』で芽生えた感情 「この作品で勝ちたいという思いはある」


 西森博之による原作コミックも笑いだけでなく、硬派で真摯でかっこよく、必読の面白さなのであるが、ドラマも全くもって期待を裏切らず、むしろ期待を上回るレベルなのだ。


 『今日から俺は!!』世代の人からすれば懐かしく愛おしく、若手俳優たち目当てで学園ドラマとして観始めた若い世代からすれば、今まで観ていた青春ドラマとは違うものを感じたはず。拳を交わすことで通わす友情という直球勝負、ゲラゲラ笑えて時にかっこよくキメてくれるこのドラマは新鮮だったのではないか。家族全員で楽しめるドラマであったことは間違いない。


 そして、作品の常連でもあり、既に十分わかっていることではあるが、特筆せずにはいられない5話の中村倫也の、どハマリで完璧なゆるふわ狂犬不良っぷり、太賀が演じる「俺はジェイソンで、ジェイソンは俺だー!」と映画館で泣く4話の今井の愛おしさ、さらには8話での短時間の出演で衝撃的な可愛さを印象付けた、聖子ちゃんカットの浜辺美波と、若手俳優たちの嬉しすぎる発見も多かった。特に、『相棒16』10話(テレビ朝日系)や『仰げば尊し』(TBS系)、映画『14の夜』など主演ではない時も常にその好演が光っていた伊藤役の伊藤健太郎は、このドラマ出演をきっかけに「健太郎」から「伊藤健太郎」に改名。『ビー・バップ・ハイスクール』で中間徹役を演じた仲村トオルばりにその名を知らしめ、この先の大・大・大飛躍を予感させた。


 福田雄一作品ファンとしても出演陣にはたまらないものがあった。『大恋愛〜僕を忘れる君と』(TBS系)とは対照的に超通常運転のムロツヨシになんとなく安心し、佐藤二朗との掛け合いにニヤニヤさせられ、『アオイホノオ』(テレビ東京系)の柳楽優弥、小栗旬に新井浩文の特別出演に飛び上がり、京子役の橋本環奈の飛びぬけたコメディエンヌっぷりにはいつもに増して脱帽だった。さらには三橋の母親役に、元は宝塚トップスターとしてカリスマ的存在だった瀬奈じゅん、山口先生役につかこうへいの娘であり元宝塚トップ娘役の愛原実花といった演劇勢の出演も、三橋の父親役の吉田鋼太郎と共に、舞台栄えしすぎる声と美しさを持ち前のコメディセンスで最高の笑いに変えていた。最終回は、今年3月に上演された福田雄一演出の舞台『ブロードウェイと銃弾』のギャング・チーチ役を彷彿とさせる城田優の出演で、ますます演劇ファンを喜ばせそうだ。


 福田雄一作品は、『銀魂』等漫画実写映画化作品の常連、ドラマでは、『勇者ヨシヒコシリーズ』(テレビ東京系)はじめ深夜ドラマの常連から、昨年放送『スーパーサラリーマン左江内氏』(日本テレビ)以降ゴールデン枠に昇格した。ただ、いい意味でも悪い意味でもおなじみ感のある、バラエティ的なノリで楽しく盛り上がりはするが、作品そのものへの評価にはなかなか繋がってこなかった。福田雄一が作り上げるエンターテイメント作品には、肯定派と否定派が存在するのもそのためだろう。


 だが、今回は見事に、映画、舞台、ドラマと様々なジャンルの福田作品の常連たちに加え、若手俳優たちが参加することによって、いい中和と化学反応が起こった。そしてなにより、このドラマが視聴者の心を動かさずにはいられなかったのは、最近のドラマにあまりない、単純で直球で真摯な「男の友情」というヤツの美しさだろう。


 このドラマで描かれたのは、賀来賢人演じる三橋と伊藤健太郎演じる伊藤との間の友情だけではない。ボケとツッコミが楽しい今井と谷川(矢本悠馬)の組み合わせだけでも、智司(鈴木伸之)と相良(磯村勇斗)の組み合わせだけでもない。三橋と今井の、なんだかんだの信頼関係に、1話目であっさりやられてからというもの、三橋を尊敬してやまない佐川(柾木玲弥)との可愛すぎる主従関係もある。真っ直ぐな伊藤とのバランスもあり、常に卑怯でちゃらんぽらんキャラばかり目立ってしまう三橋だが、いざという時は常に、大切な人、守るべき人たちを守ろうとする。その時こそ、真摯な賀来賢人の眼差しが映えるのである。


 そして、彼らが戦った、真っ直ぐすぎる男たち。男たちは拳を交わすことで熱い友情を育む。5話で中村倫也率いる東京の不良たちの中で唯一、純粋なケンカに憧れる純なユタカ(平埜生成)の伊藤とのタイマン勝負。ユタカに対する東京勢の裏切りを知り、伊藤が「なんだか俺は怒ったぜ」と呟く。


 そして、ラスボスのように強かったはずの開久の智司もまた、6話あたりからその大きな身体には似合わない本音を見せはじめる。三橋と伊藤のことにムキになり、「あいつら気楽でいいよな」と呟き、9話では遂に「ルールっていうのは約束だ、俺から約束を絶対に破らない」と初回から変わらない心情を独白し戦う伊藤の姿を見て、彼を必死で味方から庇おうとする。だがその芽生えた友情は、相良にクーデターを起こさせることになってしまった。


 なんでこんなに彼らは熱いんだろう。心震えたり、声を出して笑ったり、そのピュアすぎるハートにキュンとしたり。そんな1時間も今日で見納め。存分に楽しみたい。(藤原奈緒)


    ニュース設定