“キング・オブ・アウトロー”瓜田純士が映画『暁に祈れ』にガックリ「それより俺のYouTubeを見ろ!」

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2018年12月17日 20:03  日刊サイゾー

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写真今年4月、アマチュア格闘技大会「THE OUTSIDER実験リーグ」に出場したときの瓜田(撮影=江森康之)
今年4月、アマチュア格闘技大会「THE OUTSIDER実験リーグ」に出場したときの瓜田(撮影=江森康之)

“キング・オブ・アウトロー”こと瓜田純士(39)が森羅万象を批評する不定期連載。今回のテーマは、覚せい剤中毒になりタイの刑務所に投獄された後、ムエタイでのし上がることに成功したイギリス人ボクサーの自伝を映画化した『暁に祈れ』だ。自身もタイでの逮捕経験や覚せい剤での服役経験のほか、格闘技で更生した経験も持つ瓜田は、境遇が丸かぶりとも言えるこの映画を見て、何を思うのか? タイでの苦い思い出話も交えつつ感想を語ってもらった。

『暁に祈れ』は、世界的ベストセラーとなったビリー・ムーアの自伝小説を原作にした映画だ。イギリス人ボクサーのビリーは、タイで麻薬中毒になり、逮捕されてしまう。収監されたチェンマイの刑務所は、殺人、レイプ、汚職が横行する地獄のような場所だった。死と背中合わせの毎日を過ごすビリーだったが、所内でムエタイに出会うことによって、生きる希望を見出していく――。

 かつて刑務所として使われていた場所をロケ地に選び、服役経験のある素人を囚人役として起用するなどリアリティーにこだわったこの作品は、カンヌ国際映画祭ミッドナイト・スクリーニング部門で上映され、大きな反響を呼んだという。

 そうした前評判を聞いていた瓜田は、「これは絶対に見ておきたい! 主人公の境遇が、俺と近い気がするから」と言って意気揚々と映画館へ入っていったが、果たして満足できたのだろうか? 以下は、上映終了後のインタビューである。

 * * *

――いかがでしたか?

瓜田純士(以下、純士) うーん、あんまりかな……。目新しいことや予想外の展開が何もなかった感じ。ビリーの行動も想定内でした。ムショで体を鍛えて試合を迎えて……ってのも、俺でも当然そうするだろうと思ったし、シャブで捕まったのも自分に近いし、おまけにビリーのムエタイパンツまで俺の試合着に似てた(笑)。境遇が近いから共感できるかと思いきや、そうじゃなく、そりゃそうだろうよ、と思うことばかりで刺激不足でした。ビリーよりも、「ムショで3人殺した」と言ってた脇役の囚人に興味が湧いた。いっそのこと、あいつを主役にしたほうがよかったんじゃないでしょうか(笑)。

――格闘技の練習シーンで燃えませんでしたか?

純士 いや、そんなに。まったくの素人は騙せても、ちょっと格闘技をかじってる奴だったら、映画の中のビリーはそんなに過酷な練習をしてないことがわかるんで。

――ストーリー展開はいかがでしたか?

純士 どん底からのサクセスストーリーのつもりなんだろうけど、きっかけはただのブーシャ(覚せい剤)だろ(笑)。ムショの中でまで薬物を求めてるし、いちいち短気を起こすし、世話になったレディーボーイに嫉妬をするし……。金払いも悪いんだから、リンチされて当然だろ。おまけにラストで「ビリーは今も薬物と戦っている」って、まだやめてないのかよ! っていう(笑)。奴はすべてが未熟で中途半端なんですよ。

――実話ベースだから、そこらへんは正直に描いたのかも。

純士 ドキュメントとして見れば面白かったけど、せいぜい『世界まる見え!テレビ特捜部』(日本テレビ系)あたりで見るもんでしょう。1時間でよかったかな。2時間の映画にするほどのもんじゃない。この程度の話で簡単に映画になっちゃったら、ますます本人が調子に乗りますよ。俺はデビュー作の『ドブネズミのバラード』が売れたことで調子に乗って、全然更生しなかったですから(笑)。10年経ってようやく更生しましたけどね。

――一緒に映画をご覧になった奥様の感想はいかがでしょう?

瓜田麗子(以下、麗子) ウチは大満足でした! 主人公と純士の境遇が近いんで、感情移入しやすかった。ビリーが格闘技を頑張ってる姿を見てウルウルきました。純士は今ケガをして格闘技のジムに通えてへんから、映画を見て練習したいと思ったやろ? そう考えると余計に泣けてきた。短髪で色白やし、アウェイで頑張って這い上がっていく姿も純士とかぶって、グッときたわ。

純士 俺に惚れてるから感動しただけだろ(笑)。ただ、俺もいろいろと思い出しました。そもそも俺が本格的に筋トレや格闘技を始めた動機のひとつは、海外で捕まったときを想定してのことなんですよ。黄色人種でガリガリの体だと、海外のムショで裸になったときにナメられる。そうならないよう、体を嫌え始めた。だから、ビリーがムエタイに目覚めた心理は理解できました。ただ、ビリーと俺は似てるようで、実は決定的な違いがあるんですよ。その違いに萎えました。

――その違いとは?

純士 まず、金払い。俺は10年ほど前にタイでパクられたんですが、留置所の売店でタバコを買うとき、自分の分だけじゃなく、店員の分も買い与えていたんですよ。それが礼儀だし、チップ代わりだと思ってた。ところがビリーは金も払わずタバコを何度も店員にねだったりして、セコかったじゃないですか。

麗子 それはお金がなかったからや。

純士 まあ、それもそうか。俺は入国時にパクられたから、金を持ってたもんな。ただ、ビリーは結局、赤落ち(懲役・禁固の判決が確定)して、ムショに行くじゃないですか。ムショに入った人間は、2つのタイプに大別されます。悪魔に魂を売ってひたすら堕ちていくタイプと、聖書を読みながら更生を図るタイプ。実は前者のほうが、ラクなんですよ。映画の序盤から中盤にかけてのビリーはまさに前者で、誘惑に負けて、ラクなほうラクなほうに逃げてばかりいたじゃないですか。それが男として嫌だった。ダセえなこいつ、と。

――瓜田さんは、そうじゃなかったんですか?

純士 かつてはビリータイプだったんですが、今は昔の自分が大嫌いになって、すっかり性格が変わってしまってるんです。だから、ムエタイに目覚めるまでの自堕落なビリーを好きになれず、作品にもノレなかった。最初からすべての誘惑を断ち切って、ブレずにひたすらリングを目指す話だったら、今の俺でもノレたんでしょうけど。

麗子 あの人(映画の中の囚人)たちって、いろんな理由があって、底辺の底辺の底辺におるんでしょう。上流階級、中流階級、いろんな人がおると思うけど、どこの階級で生きるかは、やっぱ自分次第やなと強く思ったわ。最底辺から中流や上流にいくことも、生き方次第では可能やと思った。逆に、上流の人でも下の下のふるまいをしてたら最底辺に転落する。結局そういうことやねんな。

純士 下獄してからビリーはしばらく、動物のように生きちゃってた。「薬物が欲しい」「タバコが欲しい」なんて言わず、誇り高く生きてたら、同じ境遇でもワンランク上の扱いになってたはずなのに。

麗子 ちょっとした今の快楽だけを追ってると、あとで「あれ? 知らんうちに最悪なことになってしまってる。え、なんで?」という結果になりかねないから、やっぱ酒や麻薬はやらんほうがええな。一度しかない人生やのに、そんな風に時間を過ごすのはもったいない。

純士 ちょっと可哀想なのは、ビリーって単細胞なんだよね。もっと賢かったら、俺のようになれたのに。ヘヘヘ。

――タトゥー愛好家の瓜田さんから見て、この映画に出てくる囚人たちのタトゥーはどうでしたか?

純士 特に驚きはなかったです。タイには何度も行ってるし、パクられたときも、保釈中に1ヶ月ほどバンコクにいて、多くのタイの元囚人とかと関わったから、あの手のタトゥーは見慣れてるんですよ。ビリーが入れた虎の模様もたくさん見ました。あれ、向こうのお守りというか験担ぎみたいな模様らしいですね。ついでに言うと、ワイクルー(ムエタイの競技前に行われる舞踊)も毎朝のように見てたんで、特に新鮮味はなかったというか、タイでの生活を思い出してウンザリしました。

――瓜田さんは、なぜタイで捕まったのでしょう?

純士 入国審査のときに止められたのに、暴れて強行突破しようとしたらパクられました。パスポートも没収されて、この映画にも出てきたようにトラックの荷台に乗せられて、留置所にぶち込まれたんです。最初は相部屋でした。

――映画のビリーみたく、同部屋のタイ人からいじめられませんでしたか?

純士 すぐに1人部屋に移されたから大丈夫でした。これは海外でパクられたときの鉄則で、フィリピンでも使った手なんですが、俺は捕まると、狂人のフリをするんです。そうすると1人部屋に移してもらえる。でも、気持ちは全然休まらなかったですよ。「7年は食らう」とのウワサを耳にしたりして、焦りました。いろんな人の助けもあって、留置所はすぐに出ることができましたが。

――よかったじゃないですか。

純士 いや、そこからも辛かったですよ。裁判を待つ間、出国が許されず、『ドブネズミのバラード』の印税を握りしめて1ヶ月ほど、あちこちのホテルを転々としたんですが、慣れない異国だし判決も不安だから、体調を崩して熱でうなされる日々が続きました。その間ずっとホテルの庭から、ピー・ムアイ(ムエタイの音楽)が流れてきて……。この映画でもピー・ムアイが延々と流れてたから、当時の苦しい思い出が蘇ってきて苦痛でした。

麗子 映画見ながらそんなこと思ってんの、純士だけやと思うで(笑)。あの独特の音楽が、異国で捕まった不安感を煽って、よかったやん。

純士 音楽はさておき、意志の弱い欧米人が吠えてるだけって感じで、映画としてイマイチだったかな。捕まるまでのシャバでの様子や、親との関係とかがもっと描かれてれば、ビリーに感情移入できたと思うんだけど……。

――でも映画の評判は上々のようで、今日も満席でしたね。

麗子 お客さんの9割ぐらいが男の人やったな。隣のおっちゃんが、2時間ずっと鼻ほじってて、おまけに息も臭かったんやけど、それを無視できるほどの内容の濃さやったわ。ところで劇中、新入りの囚人がレイプされるシーンがあったやん。あれ、純士が犯される立場やったら、どうする?

純士 あの段階だったら、迷わずケツを差し出すね。

麗子 えええっ!?

純士 下手に抵抗して、殺されるほうが嫌だ。ケツ掘られたって命に関わらないから、いくらでもどうぞ、って感じかな。俺はとにかく生き伸びたいと考えるタイプだから。

――タイ人の受刑囚たちの迫力はどうでしたか?

純士 今さらあんな刺青だらけのたるんだ体をたくさん用意したところで、たいして驚かないですよ。今はYouTubeやテレビの『クレイジージャーニー』などで、世界のいろんな裏情報が出回ってるから、ああいう環境の映像に新鮮味がない。映画って、想像の域を超えるから面白いんであって。ちょいちょい瓶を割って脅かしたりもしてたけど、ああいうハッタリも怖くなかったですね。

――そうですか。

純士 カンヌで話題になったと聞いてたから楽しみにしてたんだけど、おまえの半生なんてどうでもいいよ、と思っちゃった。出来事がどれも普通に思えちゃって。格闘技を題材にした映画は好きだけど、俺の魂には火がつかなかったですね。

――褒めるべき点はありましたか?

純士 さっき「ドキュメントとして見れば面白かった」と言いましたけど、それって実は、最高の褒め言葉でもあるんです。まったく映画っぽくなく、リアルだなと思えたし、彼が役者だとも思えなかった。ビリー本人という感覚で終始見れたのはよかったかな。

麗子 あれ、本人ちゃうの?

純士 (呆れ顔で)……ビリーを演じてるんだよ、役者(ジョー・コール)が。

麗子 本人がやってると思ってたわ!

純士 そんだけ役者がすごいんだろうね。あとは、タトゥーまみれの房長みたいなのが、いいことを言ってましたね。「俺たちは人間なんだ。動物じゃない。話し合いができる」と。あれは「確かに」と思いました。

――この映画から得た教訓はありますか?

純士 郷に入っては郷に従え、ってことでしょうか。ムショに入ったらジタバタせず、「いかに賢くふるまって、いかに最短で出るか」だけを考えるべき。とはいえ、真面目に生きてれば無関係な世界なんですけどね(笑)。すべてはあいつの行いが悪い。自分がちゃんとしてれば、あんなところにぶち込まれることはないわけですから。

麗子 シラフ最高! それがこの映画から得た教訓ですね。

純士 あ、最後に、この作品をカンヌで褒め称えた連中にこう言いたいです。「YouTubeで『瓜田純士プロファイリング』を見ろ! もっとすごい役者がいるぞ!」と。俺のことなんですけどね(笑)。
(取材・文=岡林敬太)

『暁に祈れ』瓜田夫婦の採点(100点満点)
純士 50点
麗子 80点

※瓜田純士のYouTube好評配信中!(瓜田純士プロファイリング)
https://www.youtube.com/channel/UCv27YAy0FZ-4wwisy5zPmeg

※「“キング・オブ・アウトロー”瓜田純士、かく語りき」の記事一覧
https://www.cyzo.com/cat8/outlaw_charisma/

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