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17歳の起業家はなぜ、レシート買い取りに注目したのか――ワンファイナンシャル創業者・CEO 山内奏人氏

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2019年01月04日 11:33  ITmediaエンタープライズ

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写真山内さんを一躍有名にしたレシート買い取りアプリ「ONE」
山内さんを一躍有名にしたレシート買い取りアプリ「ONE」

 元ハンズラボCEOで現在、メルカリのCIO(最高情報責任者)を務める長谷川秀樹氏が、志高きゲームチェンジャーと酒を酌み交わしながら語り合う本対談。「酒場放浪記」と銘打っているこの企画ですが、今回は“まだ飲めない”17歳の起業家をゲストにお招きしました。2018年6月、レシート買い取りアプリ「ONE」(ワン)の公開で一躍有名になったワンファイナンシャルの創業者でCEOの山内奏人さんです。



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 「ONE」(ワン)は公開するや否や一気にユーザー数が増え、レシートの登録数が25万に近づくという予想を超える反響があり、その日のうちにサービスを停止したことで話題になりました。



 7歳からプログラミングを始め、12歳でベンチャー企業の仕事を請け負うようになったという山内さんはどのようにして育ち、今の世の中をどう見てどんなビジネスを仕掛けようとしているのでしょうか? 同業者目線、親目線、おじさん目線で気になるあれこれを、長谷川さんが聞きまくります!



●11歳でプログラミングコンテストに優勝、エンジニアのキャリアは12歳から



長谷川: 「IT酒場放浪記」はこれまで60回くらいやってきたんですけど、酒が飲めない人が対談相手というのは初めてです(笑)。



 山内さんは、どうしても「高校生」というところで注目されてしまうと思うんですけど、まずは「ONE」のことから聞かせてもらいましょう。どういうきっかけであのアプリを作ったのか。もしかして、あれが初めてじゃない?



山内: はい。今までにもたくさんやってきています。



長谷川: 何歳くらいからそういうことをやってるんですか?



山内: 最初に働いたのは12歳で中学1年生の時です。delyという会社の創業を手伝ってました。今はレシピ動画の『クラシル』で有名になりましたが、当時のdelyは「Uber Eats」みたいな事業をやっていて、僕はエンジニアとして店舗側の売上管理のシステムを作ったりしていたんです。



長谷川: 一体、どういうつながりで、ベンチャーを手伝うことに?



山内: 僕は7歳くらいからプログラミングを始めて、11歳のときにコンテストで賞を取ったんですよ(※)。その後、起業家やエンジニアってどういうふうに働いているんだろうということに興味を持って、スタートアップが集まるイベントに遊びに行くようになりました。そうしたらEastVenturesという投資会社の(松山)大河さんに出会って、めちゃくちゃよくしてもらったんです。「シェアオフィス使っていいよ」と言ってくれて。家だとあまり集中できないので、シェアオフィスで作業していたら、たまたま隣の席がdelyの堀江社長でした。堀江さんから「プログラミングできるなら、うちの仕事手伝って」と言われたのがきっかけです。



※「中高生国際Rubyプログラミングコンテスト」の15歳以下の部で最優秀賞を受賞



長谷川: それが中1の頃ということは、5〜6年前?



山内: はい、だからキャリアは5〜6年で、結構長いです。



長谷川: 長いですね。じゃあ、おっさんにも結構慣れてますね? 相手が年上だろうとなんだろうと、関係なくフラットに喋れるぞ、みたいな。



山内: そうですね(笑)



長谷川: じゃあ、それ以来、いろいろ事業を試してきて、今回の「ONE」でドカンと来ちゃったと?



山内: たまたま今回、という感じでした。



●レシート買い取りに着目した理由



長谷川: 「ONE」については、どうしてレシートに注目したんですか?



山内: 僕は「価値の非対称性」と呼んでいるんですけど、ある人にとっては価値が高いけれど、ある人にとっては低い――というものの取引に関係するビジネスが、今、ものすごく増えているんですよね。「メルカリ」やバンクの「CASH」はまさにそうです。もっと言うと、広義のシェアリングエコノミーも、自分にとっては「価値の低い時間帯を誰かに貸す」という点で同じです。



 こういうビジネスモデルが圧倒的に増えている背景には、「あらゆるモノや価値の流動性が上がっている」ということがあると思って、何かそういうビジネスを作れないかと、最初は金券の流通を考えました。金券はモノの担保が難しいので、僕らが買い取って、全部検品してから業者に流したり、逆にセカンダリーマーケットを作ったりする――といったビジネスモデルです。でも、それって僕の中ではあんまり面白くないというか、「ビジネスとして普通過ぎるな」というのが正直な気持ちで……。



 そんな中で、「もうちょっとスモールスタートでできる、何か違うものはあるかな」と考えてみたらレシートがあったんです。レシートって、ものすごくたくさんあって、かつデータとしてかき集めればしっかりとした統計データになるから、企業に対して売り込むことができるんじゃないかと。だから、ものすごくスモールにスタートしようと思ってレシートにした、という感じです。



長谷川: でも、スモールではないスタートになったんですね。



山内: そうなんですよね。そこが最大のミスというか、想定した以上に広がってしまって……。



長谷川: あれは、「この枚数までいったら止めよう」というのをちゃんと考えながらやってた? それとも、「そんなにくるわけない」と思ってやってみたら、バーっと来て「ヤバいヤバいヤバい」と思って止めた?



山内: 後者です。「ヤバいヤバいヤバい!」っていう感じです。社内では前日に、「もしかしたら初日の登録が6万人ぐらいいくんじゃないか」という話をしていて、フタを開けてみたら初日に12万人くらい、その週で40万人ぐらい登録があったので、想像を超えてたかなっていう……。



●広告の“ウザさ”をなくせばコンバージョン率は上がる



長谷川: 初日は何枚でストップしたんでしたっけ?



山内: 25万枚ぐらいですね。1万枚ぐらい集まったらいいな、でも、そんなにいかないんじゃないかな、と思ってたんですけど……。



長谷川: 1枚10円計算ですよね?



山内: はい。だから250万ぐらいなので、別にそんな大きな額じゃないですね。



長谷川: 確かにね。販促費だと思ったら、全然ペイする感じですね。



山内: ただ、15時間で250万ぐらい出ちゃったので、月で計算したら相当だなと。そのままコンスタントに買い取り続けるのは無理だと判断しました。



長谷川: 「金が出ていく〜」みたいな感じだったんですね。そのときは、レシートのデータの売り先というのは、もう決まってたんですか?



山内: 実は全く決まってなかった(笑)。



長谷川: やっぱり。



山内: その後、レシートのデータそのものを売るのではなく、アプリに広告を表示するということを始めました。



 例えば中古車買い取りサービスの「DMM AUTO」から出稿してもらったときは、ガソリンスタンドのレシートを登録してもらい、登録後の画面に全面広告を表示しました。これは、ガソリンスタンドのレシートを持っているということは車かバイクを持っているということで、実データに基づいたターゲティングができるのと、登録してお金をもらった後だと広告をタップする気になりやすいだろうという仮説があったからです。



長谷川: なるほど。レシートの内容とは別に、「そのレシートを持っているあなたに価値がある」ということで、それに対してお金を払うのは、価値の転換ですね。



山内: 「Twitter」なんかに出てくる広告って、みんな「ウザい」って言うんですよね。その理由は、どうして自分にその広告が表示されるのか分からないし、タップすることに何のインセンティブもないからです。この2つのウザい要因を取り払えばコンバージョン率が上がると以前から思っていて。実は中国ではすでにこのモデルがはやり始めているんです。「ユーザーに広告と一緒にお金を送る」ということをやっている企業がすごく成長しています。そのモデルと全く同じものを作ったら、案外いけるんじゃないかと思って。



長谷川: ちょっと待って。それは、広告をクリックすると、ユーザー側にチャリーンとお金が入ってくるということ?



山内: 違います。インプレッションに対してお金を払うんです。例えばLINEで企業アカウントを友だち追加すると、広告が送られてくるじゃないですか。あれと一緒にお金が送られてくるような感じです。中国では、それでCTR(クリック率)が50%超えるようなケースがあったりして、これはしっかり成り立つ仕組みだな、と思って。



●米国より中国のプロダクトの方が進んでいる



長谷川: 今、中国の話が出ましたけど、山内さんの世代から見ると、中国と米国、どっちが進んでますか?



山内: 中国ですね。中国のプロダクトって、ビジネスモデルがものすごく綿密に練られていて、必ずサイエンスがあるんですよね。米国は、どちらかというと資本力で勝ち負けが決まるケースが多くて、再現性がない。もちろん中国でも資本力が重要な部分もあるんですけど、それ以前にものすごく計画されていて、インセンティブとかも非常に分かりやすい。それこそ、お金を振り分ける系のサービスが多いんですよ。



 僕が中国で一番好きなサービスは『愛情銀行』というアプリです。すごいネーミングですけど(笑)、カップルで使うアプリで、例えば1日1回電話をして、遠隔でキスをするとお金がもらえるっていう仕組みがあるんです。



長谷川: 電話をするアプリ?



山内: いわゆるカップル向けサービスなので、アルバムとかチャットとか、コミュニケーションのための機能が全部詰まってる感じですね。



長谷川: お金をもらえるっていうのは、誰が誰に払うんですか?



山内: サービス側からユーザーのカップルにお金が入ってくる。どうしてでできるかというと、彼らは1アクティブユーザーに対して、1日いくらお金が払える、ということをしっかり計算できていて、それをユーザーに振り分けてるんですよね。中国ではすでに、アクティブ率に対してお金を払う時代が来てるんです。



長谷川: つまりアプリ上に広告を出して、それのコンバージョン率も分かっているから、アクティブ率に対してどのくらいお金を渡しても大丈夫――というのも計算の上でお金がうまく回ってるということね。



山内: ソーシャルゲームとかはゲーム内通貨でログインボーナスがもらえたりするじゃないですか。あれが本当のお金で、かつ結構、高額でもらえる状況なんですよね。



 そういうのがものすごく面白いなと思って。中国のプロダクトを日本でウケるようにローカライズして作ったらどうなるのか……、みたいな思考実験が好きなんです。



長谷川: なるほどね。他に中国で注目しているプロダクトとかサービスはありますか?



山内: 企業と個人でダイレクトにお金のやりとりをしているのは、重要なキーだな、と思ってます。



 例えば5年とか10年前は、ステルスマーケティングが流行った時期もありましたが、今はインフルエンサーマーケティングに変わっていますよね。「どこかのPRですよ」というのを明確に宣言するようになったわけです。それは、僕らの日常の購買という領域でより透明性が求められるようになったと思っていて。その先には、クーポンみたいなインセンティブがリアルな現金に近づいていくんじゃないかなと考えています。



長谷川: クーポンから現金に。面白い発想ですね。



山内: 「何%割引」みたいなものより、キャッシュバックのような「いくらあげます」の方が、ユーザーもうれしいんじゃないか、という仮説はあります。



長谷川: 確かに。僕の日本人の友人が中国で会社をやってるんだけど、「ボーナスをWeChatPayで払う」とか言ってて、びっくりしたことがあります。いや〜、でも「米国より中国ですね」と言い切るのは、いいですね!



山内: ありがとうございます。



長谷川: 中国の情報はどうやって収集しているんですか?



山内: 基本的にはネットですね。実はまだ中国に行ったことなくて。



長谷川: マジですか? 今度行きましょうよ。



山内: ぜひぜひ、行きたいです!



●日本のベンチャーは「資本の戦い」になっているのが寂しい



長谷川: 山内さんは他のベンチャーのこともいろいろ耳に入ってくると思うんですけど、日本のベンチャー業界について何か思うことがありますか?



山内: 比較的、資本の戦いみたいになっちゃっていると思います。レシートを初日に25万枚買い取った僕が言うのもどうかと思いますが、「インパクトをどう出すか」みたいな、あるいは「予算をしっかりとっておいて、それをどれだけばらまいてユーザーを増やすか」みたいな、割とシンプルなゲームになりつつあるのがちょっと寂しいな、と思うんです。初期のインターネットらしさみたいなものが、いろんな意味でなくなってきているのかな、と思うんです。



長谷川: 単純に資本のパワーゲームに寄っちゃってるんじゃないかな、みたいな。



山内: プロダクトが良ければ伸びる、みたいな世界じゃなくなってしまっているのが、ちょっと寂しいところですね。



長谷川: 大企業の人と話すこともありますか?



山内: 時々あります。クライアントは大企業の方が多いので。



長谷川: ベンチャーの人たちと大企業の人たちと、それぞれ付き合っていてどういうところが違うと感じますか?



山内: どうしても、意思決定のスピードは違いますね。でも、本質的なところでは、あまり大きな違いはないかもしれないです。



長谷川: そうですか?



山内: スタートアップやベンチャー周りの人たちって、組織が小さいんですよ。だから、自分一人で決められる決裁権を持ってる人が多いですよね。一人で決められるから、割と感覚で意思決定している部分があるような気がします。でも、大企業の方々はしっかりステップを踏んで、みんなが納得するような形で意思決定をしていく。この意思決定のスタンスの違いというのはあるかなと。



長谷川: みんなで意思決定すると、どんどん丸くなってとがった意見が通らない――という通説もありますけど。山内さんからすると、それはそれで良いも悪いもない、みたいな感じ?



山内: はい。どっちも良い点もあれば悪い点もあると思っています。例えばスタートアップだと、一人の責任者が間違った判断をしてしまったら、その時点でもうアウトで、致命的なエラーになりやすい。でも、大企業ではとがった意見にはなりにくいけど、めちゃくちゃ失敗することもなくなってくる。ある意味でリスクヘッジできている部分はあると思うんですよ。



長谷川: だとすると、大企業が新規ビジネスをやるというのは、やっぱり相反するのでうまくいかないですかね。



山内: そうですね、それは必ずあると思います。一人が全部決められるという状況を、別の箱を作るなり何なりして作らないと、新規ビジネスはなかなか立ち上がらないのかなと思います。



長谷川: 山内さん、話す内容が完全に大人ですね。歳、いくつでしたっけ?



山内: 今17歳です。



長谷川: 全然そんな気がしませんね(笑)



(後編に続く)



●ワンファイナンシャル CEO 山内奏人氏プロフィール



2001年に東京で生まれる。6歳の時に父親からPCをもらい、10歳から独学でプログラミングを始める。2012年には「中高生国際Rubyプログラミングコンテスト」の15歳以下の部で最優秀賞を受賞。2016年にはウォルト(現ワンファイナンシャル)を創業。



●メルカリ CIO 長谷川秀樹氏プロフィール



1994年、アクセンチュアに入社後、国内外の小売業の業務改革、コスト削減、マーケティング支援などに従事。2008年、東急ハンズに入社後、情報システム部門、物流部門、通販事業の責任者として改革を実施。デジタルマーケティング領域では、Twitter、Facebook、コレカモネットなどソーシャルメディアを推進。その後、オムニチャネル推進の責任者となり、東急ハンズアプリでは、次世代のお買い物体験への変革を推進している。2011年、同社、執行役員に昇進。2013年、ハンズラボを立ち上げ、代表取締役社長に就任。東急ハンズの執行役員と兼任。AWSの企業向けユーザー会(E-JAWS)のコミッティーメンバーでもある。2018年10月から現職。


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