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久世光彦著『ベスト・オブ・マイ・ラスト・ソング』は辞書代わりの一冊------アノヒトの読書遍歴:浜田真理子さん(後編)

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2019年01月10日 12:13  BOOK STAND

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歌手、ミュージシャンのほかエッセイ執筆など多岐に渡る活動をする浜田真理子さん。様々なフィールドで活躍を続ける一方で、本から美しい言葉づかいや言い回しを学ぶこともあるといいます。そんな浜田さんに、前回に引き続き日頃の読書生活について伺いました。

------前回は随筆集をご紹介いただきましたが、作品集などはよく読まれるのですか?
「私は辞書が好きなので、ことわざや自分の辞典のようなものに惹かれるところがあります。フランスのラ・ロシュフコー侯爵フランソワ6世の『箴言集』(しんげんしゅう)もお気に入りの一冊です。『箴言』というのは、短い教訓めいた、ことわざではないんですが、文章になっていて。一行二行ぐらいの教訓的のようなものです。最初からずっと読むというよりは、パッと開いて読みます。割と皮肉に満ちた、心にグッと刺さるような文章が多いのですが、それが好きなんです。著者は1613年から1680年、つまり17世紀に生きた人物。その当時言っていた言葉が今に生きていて、この内容が今の私たちにも刺さるというのがすごいなと思うんです」

------浜田さんが特に刺さった文があれば教えてください。
「『もし自分に傲慢さが少しもなければ、我々は他人の傲慢を攻めはしないだろう』という一文。これ、ちょっと一瞬考えますよね。あとは『太陽も死も、じっと見つめることはできない』など。何故かそれについてずっと考えることができるんですよね。『我々は皆、他人の不幸には十分耐えられるだけの強さを持っている』とか。いろいろな思いを巡らすのにいいかなと思っています。私は皮肉な人間なので、『ひとしきりしか歌われない流行り歌にそっくりの輩がいる』とかも。こういうのを見て、自虐でもあるんだけど、ウって心にくるんです。こういうお仕事をしていると、流行り廃りとかももちろんあるし、そういうところで戒めでもあるし、気を付けようとよく思います。こういうところにグッときますね」

------どれも自分自身を見つめ直すときに見たい深い言葉ですね。
「そうですね。私は本好きですが、ちょっと忙しくて時間がない時などに、ちょっと心を落ち着けたい時とかにも読んでいます。それでくすっと笑ったりだとか、『ちょっと調子に乗ってるぞ、お前』みたいな時に読んだりとかしますね。この本はまだインターネットがない頃、図書館に通っていた時に偶然見つけたんです。それで、返さないといけないから、当時はネットで本買ったりできないので、写してたんですよ。今は良いと思ったらすぐに手に入りますけど。元々は大きい単行本で。でもすぐ家の中で無くなるので、何冊もこれが家にあるっていう感じです」

------箴言集のように文がいくつも集まっている作品だと、空いている時間を使って読めたりできるのがいいですね。
「箴言集以外にも、久世光彦さんの『ベスト・オブ・マイ・ラスト・ソング』も好きですね。これも私の辞書代わりになりうる一冊です。『人生の最後に一曲聞かせてもらえるとしたら、神様に、あなたは何を選びますか?』というテーマで書かれた作品です」

------音楽に関する本、という感じでしょうか?
「ええ。著者の久世さんは演出家で、『時間ですよ』などのドラマ番組を作っていらっしゃった方なんです。先ほど紹介したテーマで書かれたエッセイがまとめられた作品なんですが、単行本で5冊ぐらいあったのがさらにまとめられて『ベスト・オブ』となっています。『もし選ぶとしたらこの一曲』といって、演歌や歌謡曲が出てきたりするんですが、『みんな夢の中』だとかいろいろな曲が出てきて、歌詞も引用されていたりとかして。久世さん自身の思い出のエピソードも書かれていて、流れるような文章といますか、文章がとても美しいんです。私はこれを基にした舞台を小泉今日子さんとやっているんですが、小泉さんがこのエッセイを朗読されて、出てきた歌を私が歌うという舞台なんです」

------お気に入りのフレーズは何かありますか?
「『港が見える丘』という歌について久世さんが書いた文章。『命がもうじき終わるという時、私は港が見える丘を聴きたい。それを遠くに聴いて、小さく首をひねりながら私は死んでいくだろう。あの頃は一体何だったんだろう。あれから私たちは何をしてきたのだろう。死んで灰になってしまうだけではあんまり寂しいからあの世とやらで上村和夫に会う事だけ考えよう。いつもあいつの歌を聴くばかりだったから、たまには一緒に歌ってみようか。向こうにもギターの一本ぐらいはあるだろう。窓の外に散り始めた桜を眺めながらそう思う』という部分です。これは上村さんの思い出について、『港の見える丘』をよくギターで弾いてらっしゃったというエピソードで、桜の情景が見えたりするところが素敵だなと思ったんです。舞台もいつもこの朗読から始まります」

------読み返したくなる時はどんな時ですか?
「この中には昭和の良い歌がたくさん入っていて、私はこれを読んで覚えた歌もあったんです。知ってるつもりだったけど、そういう意味だったんだっていう来歴みたいなのがわかる時があるので、新しい歌を歌う時などに徒然に開いて読んでいますね。昭和の曲が好きな人は、何度も読み返したくなる一冊ですね」

------浜田真理子さん、ありがとうございました!

<プロフィール>
浜田真理子 はまだまりこ/島根県松江市在住の歌手、ミュージシャン。学生時代からバーやクラブ、ホテルのラウンジでピアノ弾き語りを行う。98年に発売したファーストアルバム『mariko』がメディアに採り上げられたことをきっかけに、楽曲が映画『ヴァイブレータ』挿入歌へ起用されたほか、自身がTV番組『情熱大陸』に出演したことも話題に。以降、映画やドラマ、CMへの楽曲提供や音楽舞台、エッセイ執筆、講習会主宰など活動は多岐に渡る。今年6月に最新アルバム『NEXT TEARDROP』をリリースした。



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