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w-inds. 橘慶太×Yaffle(小島裕規)対談【前編】 楽曲制作におけるアレンジの重要性

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2019年01月12日 18:02  リアルサウンド

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 3人組ダンスボーカルユニット・w-inds.のメンバーであり、作詞・作曲・プロデュースからレコーディングにも関わるクリエイターとして活躍中の橘慶太。彼がコンポーザー/プロデューサー/トラックメイカーらと「楽曲制作」について語り合う対談連載「composer’s session」の第3回は新春特別企画として、リアルサウンド音楽とテックの2サイトをまたいだ前編・後編でお届けする。


 今回のゲストはソングライター/プロデューサーのYaffle(小島裕規)。小袋成彬らと<Tokyo Recordings>を設立し、水曜日のカンパネラ、SIRUP、iriなどのアーティストやCM&映画などへの楽曲提供やアレンジから、自身もトラックメイカーとして活躍するなど幅広い制作活動を行っている小島。橘慶太たっての希望で実現した本対談では、両者が楽曲制作で意識していることや、音作りの現場におけるさまざまな“説”に対する疑問などが率直に語られた。【前編】(編集部)


(関連:w-inds. 橘慶太×KREVA対談【前編】 トラックメイカー視点で語り合う、楽曲制作のテクニック


■それぞれのDAWの特性は? 今の制作環境に至るまで


橘:曲はいつから作ってるんですか?


小島:中1の時に『S.W.A.T.』って映画が中1無料のキャンペーンをやってて、それを見た時に劇伴を聞いて「こういう曲作れそうだな」と思ったのがきっかけですね。あまりにもシンプルな進行ばっかりだったんですよ(笑)。それでフリーソフトで作り始めて、歌っぽくしたのは高校の時に軽音でバンドをやり始めてからですね。


橘:早いんですね! 一番最初はどのDAWで作ったんですか?


小島:その時はLogicでした。Appleがすごいってホームページで言ってたので。Logicが最高のソリューションだって(笑)。


橘:(笑)。最初がLogicの人は多いですよね。


小島:そうですね。Macのソフトですし。で、そのあと「プロはPro Toolsらしい」っていうのでPro Toolsにして曲を作ってたんですけど、もうちょっとMIDIまわりでいいものがあるというのを聞いてAbletonに手を出した感じです。Studio Oneも使ったことがあるんですけど、Cubase系のDAWはあんまり馴染まなかったですね。それにStudio Oneを使ってる俺ってどうなんだろうとも思って(笑)。DAWにもブランディングがあると思っていて。そう考えるとAbletonはブランディングとしてもいいんですよ。


橘:いいですよね。Pro Toolsもたしかにブランディングでいうとちょっと違うかも?


小島:でもPro Toolsでトラックメイクしてるっていうのは尖ってていいと思うんです。だってそこにブランディングはないですから。


橘:たしかに(笑)。


小島:Pro Toolsもわりと好きなんですよね。もともとは業務用というところも含めて。橘さんは何を使ってるんですか?


橘:僕はずっとLogicで曲を作っていたんですけど、Daft Punkが「Get Lucky」をファレル・ウィリアムスと作った時にあのタイミングでファンクだったのが悔しくて。それでDaft Punkが何のDAWを使ってるか調べたらAbletonで。「これでこの音を作れるんだったら俺にもできるはずだ」と思ってAbletonにして(笑)。それからしばらくしてチャーリー・プースの「Attention」のベースの空間がすごく良くて、曲作りの動画を見てたらPro Toolsを使ってて。


小島:あれはTrilianでしたよね。


橘:そうなんです。で、AbletonでTrilianを使って同じようになるかやってみたんですよ。でも個人的に空間が全然違うように感じちゃって。もちろんミックスも関係あるとは思うんですけど。


小島:チャーリー・プースは音めちゃめちゃいいですよね。


橘:めちゃめちゃいい。それからPro Toolsで同じようにやってみたらリバーブの感じに奥行きが出て。チャーリー・プースに近づくにはPro ToolsじゃないかってことでPro Toolsにしたんです(笑)。


小島:(笑)。


橘:だから僕はDaft Punkに憧れてAbletonにして、チャーリー・プースに憧れてPro Toolsにした感じです(笑)。


小島:いいじゃないですか。Daft Punkの『Random Access Memories』のインタビューを読みましたけど、先にテープで録ってPro Toolsに戻した方がいいのか、Pro Toolsで録ってからテープに戻した方がいいのかを先に実験して、テープで録ってPro Toolsに戻した方がいいことが判明したってありましたね。テープに興味は?


橘:憧れはありますけど、DAWで完結させたいタイプなんで、なるべくそちらにはいかないようにしてます。でも人にお願いする時はありますね。アナログも好きですし。憧れあります?


小島:昔はありましたけどね。オープンリールを使って、最後マスターに通してみたいな。でもハイとローのつっぱった感じがくるけど、結局何が起きてるのかなんとなくわかっちゃうから魔法感がないんですよね。


橘:今の音楽でいうと必要ないかなとは思いますよね。今は空間を大切にするし、音がないところが狭くなっちゃうから。


小島:4ピースバンドとかならいいと思うんですけど。


橘:そう。ぎゅっとするにはいいけど今の感じにはね。そういえば、小島くんがトラックを作ったiriの「Only One」良かったです。最高でしたね。


小島:ありがとうございます。あれはドラマーからインスパイアされた曲で。


橘:かなり揺れてますもんね。ビートが。


小島:そう。揺らしてみようと思って。デュア・リパの「New Rules」を聞いて「すげー今っぽい、あの年齢っぽいな」と思って俺も使いたくなったんですよ(笑)。


橘:それであんなに808ベースをベンドさせてたんだ! デュアリパもそうだった(笑)。


小島:「あのビヨーン、俺もやりたい!」って(笑)。ビヨンビヨンが生きる感じにしました。


橘:つながった(笑)。ピッチベンド系もAbletonはやりやすいですよね。


小島:808 Warfareっていう音源なんですけど、あれはこれだけでもうグライドなんです。


橘:サンプルを使ってるんじゃないんですね。


小島:そうなんです。Producers Choiceって会社が作ったソフト音源というか、コンタクトで。


橘:それか、僕も持ってる! あれめっちゃいい音ですよね。


小島:いいですよね。手弾きで弾いて「楽しいー!」みたいになってました(笑)。


■サウンドは“一番気持ちのいいところ”に向かっている


橘:けっこうノリノリで作るタイプですか?


小島:ノリノリで作って後悔したところをどんどん整理して、最終的に間抜きしていく感じです。


橘:最初に音を重ねていってあとで使わない音を抜くことがある?


小島:だいぶありますね。ミックスでもありますもん。ミキサーにミックスの時に「ちょっとこれいらないと思うんで」って頼んでなくしてもらったり。


橘:一番最初にトラックが出来上がる時はトラック数が多いってこと?


小島:音数は多いと思いますね。


橘:そうなんだ! 意外。音数が少ないイメージだったから。


小島:本当は少なくしたいんですよ。なりたい自分はめっちゃ音数が少ない自分なんです。でもほっとくとどんどん足しちゃうんで。あとミックスの頭になった時に減らすことも多いかもしれないです。マスキングというか。


橘:これがこの音を邪魔してるみたいな。


小島:そう、そういう作業が好きなんですよね。EQを使うよりも先にマスキング。すべてがマスキングだと思うんですよ。音の悪い原因って。


橘:間違いなくそう。


小島:キックのレイヤーも個人的に最近グッととこなくて。キックでいい音があったとするじゃないですか。いいと思ってる音を入れていいと思えないんだったら他がマスキングしてるってことなんですよね。だからここでマル秘スーパーローが出るテクニックとか言ってるんじゃなくて、他のローを削れと(笑)。


橘:足すんじゃなくてね。だから最後にはけっこう音を抜く。


小島:そうですね。エンジニアさんともよく話すんですけど、エンジニアの仕事ってマスキングしちゃってるものをどうにかしなきゃいけないじゃないですか。そこにフラストレーションがあるみたいで。歌にギターにアコギが入って、さらにストリングスが入って、もうどうしたらいいのかわからないみたいな。中域に音が集まってる時は大変ですよ。


橘:そこが重なると実際辛いですよね。変な話、J-POPあるあるですけど。あれってなんでなんでしょうね? 派手に感じちゃうのかな?


小島:結局ローが出るスピーカーで聞くとスカスカに聞こえるんですけどね。


橘:それってやっぱり日本人がビートを聞いてないってことなんだと思うんですよね。


小島:日本だけメインストリームの音楽が20年くらい変わってない気はします。


橘:僕もそれが大問題だと思ってるんですよ。海外に行く人みんなが言うことなんですけど、止まってるのは日本だけ。アジアに行っても、アフリカに行っても変化してますもん。


小島:ドレイクとか最近の潮流ってどんどん真ん中の音を抜いてるじゃないですか。声とローだけというか。


橘:もうないっす(笑)。ブーン、ラップ、チキチキの3つ(笑)。


小島:ハイと真ん中とローの3人しかいない。


橘:そうそうそう。


小島:個人的に音楽の進化とか変化って、よくブームって言われますけど、ブームとかじゃなくて、大きな流れとしては音響効率がいい方に向かってるんだと思うんですよ。それこそグレゴリオ聖歌から始まって、どんどんオケが大きくなって、ローがほしくなって、ロックになって、EDMにいって、トラップにいって……どんどんまんべんなく帯域がきれいになっていると思っていて。トレンドとか関係なく進化の方向としては、一番気持ちいいところに向かってるというか。


橘:みんなが理解し始めたというか。


小島:そうですね。10年後にミドルしかない音楽が流行るとは思えないんですよね。


橘:海外とは聞く環境が違うっていうのもあるけど、はたしてそれだけで片付くものなのかというのはありますよね。まあ逆にいうと同じようなジャンルをやってる人があんまりいなくてありがたいんですけど(笑)。


小島:それはわかります。作り手としてはあんまりマスになられても困るかも(笑)。


■ビートの面白さは他の音との兼ね合いで決まる


橘:普段曲はどういう作り方をします?


小島:僕はビートから作ることが多いんですけど、意外とそういう曲はボツになることも多くて。先にリフが入ってくると早かったりしますよね。曲を引っ張るアイデアというか、そういうものがあると自分の中でも意欲が湧いてくるけど、ビートから作ってると悩むこともあって。最近ビートって一番可能性がありそうで一番可能性がなさそうな気がしてるんですよね。


橘:おおお。というと?


小島:ビートは他との相関じゃないですか。ボーカルがいたらボーカル、そことどういう位置にいるかっていうところで面白さが時代とともに変化してると思うんですよね。だからといって、やたら複雑なリズム構成とか、エクスペリメンタル系のビートにはグッと来なくて。ポップスの領域だと「ここで来てほしい」っていうポイントがあると思っていて。


橘:ありますね。


小島:そうなると工夫の場所ってその他の音との兼ね合いになってくるんです。だから先にビートだけ打ち込んでいくと違うというか。シンセアイデアとか、自分で歌ってみてビートっぽくしてみたりとか、そういうきっかけがあるとビートも作りやすくなるんです。あとビートを先に作ると、どうしても過多になっちゃう。ビートはあんまり要素がないものの方が面白いしかっこいいと思うんです。やたらあるよりは外しがあるというか。


橘:抜きの良さ。


小島:そうですね。来そうなところで来ないみたいな。それが10年代って感じがするし。


橘:あえて1拍目を抜くとかね。


小島:そうそう。いかにドロップ前で来そう感を出しておいて来ないか、とか。


橘:いいですよね。僕も最近そういう曲を作ってるところです。歌は自分で歌います?


小島:曲を書く時に歌うことはありますけど、あとは後ろのリフっぽい、サポートっぽいところは歌う時もあります。トラックの一部として。


■レコーディングにおいて最も重要なのは“整理整頓”


橘:あと、コライトもよくやってるイメージですけど、海外のコライトが多い?


小島:そうですね。人と書く時は海外が多いです。日本でやってる人も少ないですし。この前も1カ月くらいコライトの旅でオランダ、アイルランド、パリに行きました。基本的にはヨーロッパが多いですね。まだアメリカはちょっと怖い(笑)。僕が行くのは北の方ですけど、ヨーロッパ(北欧)の人は日本人に近い感じがありますね。スウェーデン人とかすごいプライドが高い日本人みたいだし。日本人プラス自尊心みたいな(笑)。


橘:J-POPでもスウェーデンの人の曲は多いですよね。そういうことも関係してるんですかね?


小島:それは抜きにしても、スウェーデンのメロディは日本人は好きだと思いますね。


橘:今度一緒に連れてってくださいよ!


小島:いいですよ、行きましょう!


橘:コライトをやってると、人からアイデアをもらえるのがいいですよね。刺激が大事ですから。自分だけでずっとやってるとルーティーンができてきてしまうし。


小島:いろいろな経験はできますよね。前にオーストラリア人のインディーポップ系の人とやった時はドン引きするくらいリバーブをかけられたことがありました。「もっとリバーブ出せ!」って言われてギターに入れてたんですけど、こっちが心配になるくらいひたすらオーバーダブしまくってて……壮大な大地みたいな(笑)。


橘:それ使ったんですか?


小島:使いました。たしかにインディー感は出ましたけど。


橘:やりすぎる感が海外では大切だったりしますもんね。


小島:「ちょっと強すぎない?」と思っても意外とトラックに入ると抜けが良かったりするんです。


橘:「この曲にその音使う?」みたいなのがハマったりしますもんね。海外での曲作りは憧れます。海外といえば、個人的に忘れられないことがあって。今でもたまにあるんですけど、海外のトラックメイカーは秘密のなにかを使ってるみたいなことを言われていたの知りません?


小島:なんですかそれ?(笑)。


橘:とにかく海外の人の音がいい、日本のJ-POPと音が違う。これは秘密のなにかがあって、それでこの音ができてるみたいなことが言われている時があって。当時は「海外すげーな」って鵜呑みにして「じゃあこの音は日本では出せないのか」って思ってたんです。でも日本人でも近い音が出てきて、ここまでできたらできるんじゃないかと思っていろいろ勉強していったら、結果音作りの実力なんだということがわかりました。100歩譲って細かいところで言えば電圧の関係もあるんですけど、結果実力じゃないですか。あと耳の良さですよね。それを「魔法のなにかがある」って正当化してたんだなと思ってしまって……。ちょっと厳しい言い方ですけど。


小島:魔法論はめっちゃありますよね。海外魔法使い論(笑)。この人に頼んだらいい音になるということは置いておいても、ニューヨークでマスタリングしたら、ニューヨークの音になるみたいな幻想はありますよね。


橘:それが違うってことは声を大にして言いたいです。


小島:逆だと思いますよ。音のはじめの段階が一番重要で。


橘:ほんとそう。こんなこと言ったら申し訳ないんですけど、日本人の悪いところはミックスとかマスタリングで悪い音が良くなる感覚でいるんです。それはありえないことで。最初が一番いい音で悪くなっていくと考えないといけないので、アレンジの段階が一番肝心なのに。だからさっきのマスタリングの話じゃないですけど、アレンジで帯域が重なっていたらいい音になるわけがなくて。


小島:それは俺もめっちゃ言いたいんですよね。啓蒙思想はまったくないんですけど(笑)、唯一言いたいこととしては、キックの一番いい音はキックだけ鳴らした音ですから。


橘:(笑)。もはやそうだと思う。


小島:一番ローを出したければサイン波をずっと鳴らせば出ますからね。入れれば入れるほどどんどん埋もれていきますから。


橘:それを理解してない人がまだ多いんですよね……。


小島:それでローが足りないから最後にEQであげるとか……。


橘:ただぼやけるだけですからね。僕も人からよく曲をいただいていた時に「ミックスしたら良くなりますから」って言われたことがあって。でもアレンジの段階で悪いものはミックスしても良くならないわけで。


小島:わかります。


橘:だからミックスで良くしてもらおうと思うなということは常に思っていて。自分のアレンジの段階で良くしようという努力をしないと、その楽曲はいいものには絶対ならないんです。……こんなこと言ったら炎上しそうだなと思ってずっと言ってなかったんですけど、ついに言っちゃいました(笑)。


小島:(笑)。逆に日本のエンジニア陰謀論もありますよね。「俺らの音がずーんと来ないのは、最終段階でローが削られてるからだ。若い人の感覚で、ローを切るおじさんを倒そう」みたいな話を聞いたことがあって(笑)。例えば、海外のバンドは低音が鳴ってるのに、自分たちの音で同じように来ないのは誰かの陰謀だと。ギターとピアノが同時になにかやっていたりして、バンドはより帯域の概念が薄いので仕方のないことではあるんですけど。それなのに誰かが悪い、エンジニアが悪いっていうのはかわいそうだなと思って。この問題は縦軸と横軸、周波数帯の話なだけですから。


橘:周波数の整理です。整理整頓。だから部屋が散らかってるとダメかも(笑)。


小島:そこを突かれるとちょっと困りますね(笑)。


橘:究極、僕たちが言いたいのは、キックでいい音を出したかったらキックだけにしてほしいってことで。


小島:それはまじで言いたいです。それ以外はやめる。諦めてキックを出していきましょう。(後編に続く)


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