女子小学生の常習犯を捕捉! 万引きGメンがいまだかつて聞いたことのない「盗みの理由」

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2019年01月15日 20:03  サイゾーウーマン

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サイゾーウーマン

Photo by Photography from AC

 こんにちは、保安員の澄江です。

 みなさん、年末年始のお休みはいかがでしたか。帰る実家もなければ会える家族もいない私は、亡夫のお墓参りに行ったほかは、部屋でごろごろして過ごしました。毎年一番寂しくなる時期なので現場に出たい気持ちもあるのですが、大みそかから三が日を過ぎるまでは依頼が少なく、たとえ依頼があったとしても、人であふれる特売の催事場などが主な現場となります。新年早々、あの人混みに揉まれるよりは……と、体を休めることにしたのです。おかげさまで足腰の疲れは取れ、今年初日の現場では、たくさんの商品を盗んでしまった小学生の常習犯を捕捉することができました。今回は、その時の話をしたいと思います。

 今年の仕事始めは、関東近郊にある小さな駅の駅前に位置する総合スーパーA。古臭く複雑な構造を有する3階建てのビル内にある売場は、食品のほかにも衣類や文具、書籍、玩具、化粧品などを扱っています。各フロアとも面積が広く、死角の多いレイアウトであるうえに品数も豊富なので、万引き被害が絶えるわけもなく、長年にわたってお世話になっている店舗の1つです。この現場に入ると、いつも何かが起きる。そんな印象が強い店といえるでしょう。当日の業務は、午前11時から。いつも通り満員電車に揉まれて現場に辿りついた私は、事務所で店長や事務職の皆様に新年の挨拶を済ませると、いつもより強い緊張感を持って店内の巡回を始めました。

 ランチを求める人で混雑する昼のピークは、地下1階にある食品売場の総菜コーナーを中心に警戒します。万引きの現場を知らない方は意外に思われることかもしれませんが、お弁当や総菜を盗む人は意外に多く、ポケットにおにぎりを隠したり、お弁当をそのまま持ち去る手口が横行しているのです。中には毎日のように犯行を繰り返して、毎月の食費を浮かせる常習者も存在しており、お店の場所によってはホームレス系の方々による犯行が横行してしまう場合も珍しくありません。そうした事情から、食事時の混雑時には、惣菜売場を中心に警戒することにしているのです。

 お弁当を選ぶお客さんに紛れて惣菜売場を警戒していると、まもなくして小学生らしい女の子が店に入ってきました。周囲を見渡しても家族らしき人の姿は見当たらないので、どうやら1人で来たようです。女の子の腰元には、男の子用と思しき色合いの大きなエナメル製スポーツバッグがかけられており、よく見ればチャックが全開になっています。大きく口の開いたスポーツバッグに、自然と目を奪われた私は、この女の子の行動を見守ることにしました。

 まもなくしてパック入りのフライドポテトを2つ重ねて手にした女の子は、その上にたらことツナマヨのおにぎりを1つずつ載せると、人気のない菓子売場に早足で移動していきます。そして、腰元のスポーツバッグを前方に持ってきた女の子は、警戒の目で周囲を窺うと、その中に商品を隠しました。その顔を見れば、『名探偵コナン』(小学館)に出てくる黒い人のような目になっており、“悪いことをしています”と顔に書いてあるように見えるほどです。

 それから、周囲に人がいないことを再度確認した女の子は、目の前に陳列されるお菓子を選ぶこともなく棚からむしり取るようにして、次々とスポーツバッグの中に隠していきました。お目当ての商品は、少し高価なチョコレートやビスケット、ボトルガムなどで、いくつかの駄菓子までスポーツバッグに放り込んでいます。たくさんのお菓子を詰め終えて満足したのか、スポーツバッグのチャックを閉めた女の子は、それを腰の位置に戻すとエスカレーターに乗り込みました。

 後を追う私の存在には少しも気付かないまま、玩具や文房具、電化製品を扱う3階で降りた女の子は、ファンシー文具や色ペンセット、シール、ぬいぐるみなどといった商品を、フロアのいたるところで堂々とスポーツバッグに吸い込ませていきます。現認した商品の数が多いほど誤認の不安なく声をかけられるため、犯行の全てを目撃したいところですが、あまりに品数が多くて覚えきれそうになく、注視に気付かれる可能性もあるので無理はしません。もちろん、現認した数が多いほど、被疑者の犯意は明確になるものの、その分だけ調書作成にかかる時間は長くなるので、あまりに多くを見過ぎてしまい後悔したこともありました。万引き犯を逮捕するのに、盗まれたものを全て覚える必要はなく、然るべき場所で声をかけたときに、お金を払っていない商品が1つでも出てくればいいのです。

 3階での犯行を終えた女の子は、階段を使って化粧品売場のある1階まで降りると、そこでもいくつかの商品をスポーツバッグに隠し入れました。どうやら口紅やネイルグッズなどに手をつけているようですが、すでに十分な現認があるので遠巻きに女の子の位置だけを把握していると、ようやくに出口に向かって歩き始めました。不自然なほどに後方を振り返る女の子の様子が、その犯行を裏付けているように思えます。

「お嬢ちゃん、こんにちは。おばちゃん、このお店の人なんだけど、なんで声かけられたかわかるよね?」
「なんですか? 私、関係ありません」
「お菓子とか文房具とかのこと、おばちゃん、みんな知ってるわよ」
「……ううっっ、ごめんなさい」

 すぐにあきらめて泣き始めた女の子を事務所に連れて行き、スポーツバッグに隠したモノを出してもらうと、ありとあらゆる商品が複数ずつ出てきました。盗んだ商品以外のモノは、なに1つ出てこなかったので、盗みにきたとしか思えない状況です。駆けつけた店長と一緒に人定事項と所持金を尋ねると、この店の近くにある団地に住む小学5年生だった女の子は、230円しか持っていませんでした。

「今日は、どうしたの? こんなにたくさん……」
「みんなお年玉で好きなモノ買っているのに、私はもらえなかったから……」

 目の前のデスクに並べきれず、山積みにされたブツを前に泣き咽ぶ女の子を宥めながら事情を聞くと、今までに聞いたことのない言い訳を耳にすることになりました。お年玉をもらえなかったから万引きしたというのは、一体どういうことなのでしょうか。

「お年玉もらえなかったんだ?」
「ウチは8人きょうだいだから、そんなお金はないって……」

 聞けば、8人きょうだいの7番目だという女の子は、兄弟が多すぎるためにお年玉がもらえないらしく、そのストレスから万引きしたようです。通報要件の聴取を終えたので、店長に事後の判断を仰ぐと、どこか悲しげな表情をした店長が、山積みにされたブツを見ながら言いました。

「これ全部、自分で使うつもりだったのかな?」
「ううん。ウチのみんなにも、分けてあげるつもりで……」
「もしかして、誰かに頼まれたの?」
「お兄ちゃんが、バッグを貸してくれたけど……」

 同じ商品を複数ずつ盗んだのは、家族に分け与えるためだと話した女の子は、デスクに顔を伏せると派手に泣き始めました。少し可哀想な気もしますが、今回の被害は、計59点、被害額合計は1万8000円相当に上っています。たとえ、お兄ちゃんの指示があったにせよ、自分の好きなモノもたくさん盗んでいるので、さほど同情できない状況といえるでしょう。その後、警察に引き渡された女の子は、触法少年扱いとなり、厳重注意の上で保護者に引き渡されることになりました。

 その日の下番時。業務終了の挨拶のため事務所に顔を出すと、女の子と母親らしき女性が、少年課の女性刑事に付き添われて謝罪に来ている場面に遭遇しました。刑事さんが謝罪に同行することは珍しく、何かあったのかと、報告書を用意しながら聞き耳を立てます。

「この度は、ウチの娘が申し訳ありませんでした。恥ずかしながら、商品を買い取るお金は用意できないんですけど、お許しいただけますでしょうか?」

 恐らくは、金がなく謝罪に来たがらない母親に、保護者としてのけじめをつけさせるために、お目受け役として刑事さんが同行してきたのでしょう。下唇を噛んで、居心地悪そうに俯く女の子の顔が痛々しくて、お年玉をあげたい気分になりました。
(文=澄江、監修=伊東ゆう)

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  • 秋田なんたらって奴の感情呟きなんか知るか。クソガキの窃盗を許して良いってのか?カスが!(゚∀゚)
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