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「こんなはずじゃなかった」と怒る患者も… 乳がん手術後の乳房再建の現状

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2019年01月17日 08:01  AERA dot.

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写真ブレストサージャリークリニック院長・岩平佳子医師(本人提供)
ブレストサージャリークリニック院長・岩平佳子医師(本人提供)
 乳がんの手術で、乳房をすべて摘出してしまった場合に、失った乳房を作る手術が乳房再建術だ。インプラント(人工物)を使っておこなう人工乳房再建の、保険適用から5年以上経った現状に触れる。

【インプラントを用いた乳房再建術の流れはこちら】

*  *  *
 乳がんの手術は、2010年代に入り、局所再発の危険性や残した乳房の整容性などさまざまな問題点に対する反省に基づいて、乳房全摘術+乳房再建術が見直されてきた。13年7月、シリコンインプラントを使う「人工乳房再建術」が保険適用となった。それまでの保険では、患者自身のおなかや背中の脂肪を切っておこなう自家組織再建手術しかできなかったが、これを機に乳房再建術のハードルが下がった。その結果、現在の各病院の乳房温存率の平均は概ね4〜6割程度となっている。

 人工乳房再建術で乳がんの根治手術と同時に乳房再建を開始する(同時再建)場合は、摘出後すぐにエキスパンダーという乳房の皮膚や組織を伸ばす袋状の拡張器を入れる。通常8カ月後にエキスパンダーを抜去し、シリコンインプラントを挿入する手術をおこなう。日帰り手術も可能で、高額療養費制度を使えば、8万〜10万円程度で受けられる。そのため現在では、乳房再建手術の約7割は人工乳房による再建術がおこなわれるようになった。

■要望を汲み取り慎重におこなう

 保険適用後、インプラントによる再建手術は年々増え、14年では約4千例だった年間手術数が、17年には約6500例になった。

「保険適用になってからは、それまで人工乳房の再建手術をおこなったことのない病院でも始めるようになり、年々増えてきました。ただ、今後は頭打ちになると思います」

 ブレストサージャリークリニック院長の岩平佳子医師はそう話し、その理由をこう続ける。

「人工乳房再建術は、エキスパンダーやシリコンインプラントをただ入れるだけなら比較的簡単ですが、患者さんに満足してもらう整容性に行き着くのはなかなか難しいのです。エキスパンダーを入れる段階から患者さんの要望を汲み取り、かなり慎重におこなうべき手術です。患者さんは個々に違う乳房を持っていますし、その人ごとの満足度もまちまちです。再建前の医師の説明とご本人の希望の間にギャップが生じてしまうケースも多いと思います」

 保険適用後からインプラントによる再建術を実施している病院では、乳腺外科医、形成外科医の考え方、双方の協力体制など、乳房再建術に対しての温度差があり、施設間の技術格差もあるようだ。

「自家組織再建は難しく、人工乳房再建は平易と思われがちなのですが、むしろ既製品しかないインプラントを患者さん個々の胸に合わせて入れるのは自由度が制限される分、難しいのです」(岩平医師)

 現在、シリコンインプラントは205種類あるが、米国製ということもあり日本の女性の胸に合うものを選ぶのが難しいケースが多々ある。乳輪や乳頭を残す場合には、さらに難度が上がるという。岩平医師のもとへは、他院で受けた手術の整容性に不満を持って訪れる患者が多く、その修正手術に追われている。

「“こんなはずじゃなかった”と怒りを持って訪れる患者さんも多いです。“インプラントはこんなものですよ”とインプラントのせいにする医師もいるようですが、そんなことはありません。ご自分でおかしいと思ったら諦めずに質問をして、担当医から納得のいく説明や答えを得られなかったらセカンドオピニオンを取るなど対応されるべきです」

 再建がうまくいって満足している人の体験談を聞いたり、患者会に問い合わせたり、自分で情報を集めることも大切だと岩平医師は話す。起こりうる合併症や日常のセルフケアについての説明をきちんとしてくれ、長期間フォローをしてくれる医師を選ぶことも大切だ。

「人工乳房の耐用年数は10年と言われていますが、これも個人差があります。インプラントを取り換えるかどうかは、定期的に1年に1度、見てもらって決めるべきです。いずれインプラントを覆う被膜が縮まる被膜拘縮が進んでインプラントが変形してしまうと、取り換える時期が来たということ。しっかり観察してもらってください」

■再建手術の前に決断を要する

 乳腺外科医と形成外科医のディスカッションの場として、「日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会」がある。岩平医師も同学会の理事を務めていた。

「学会では、いかに質の高い乳房再建術をおこなうかについて議論され、認定施設の選定なども担っています。課題は山積ですが、ここに参加している先生方は乳房再建に対する意識が高い人が多いです」

 患者がじっくり検討して決断しなくてはならないこともある。インプラントにするか自家組織を使うかの選択や、同時再建を受けるのか時期をおいて2次再建にするのかという手術を受けるタイミングなどだ。

「現在は、乳がんの手術のときにエキスパンダーを入れる同時再建が多くなっています。手術から目が覚めたときに胸のふくらみがあるという安心感があり、患者さんにとっては好ましいでしょう」

 近頃は乳腺外科医も積極的に同時再建を勧める傾向だという。それはけっして悪いことではない。しかし、じっくり考える時間を持ち、2次再建を受けるという選択肢もあると岩平医師は話す。

「手術の時点では、乳がんのことで頭がいっぱいで再建の説明をきちんと理解していなかったり、自分の希望を的確に伝えられなかったりすることもあるでしょう。慌てて受けずに、自分の思い描く治療後の姿、ライフスタイルをしっかり考慮して決めたほうが後悔はないと思います。抗がん剤治療など手術後の治療が一段落してからじっくり選んでも遅くはありません。ご自分にとって満足のいく結果を得るためにはどうすればいいか、よく考えて決めてください」

 乳腺外科の主治医に、あらかじめ相談するのもいいと岩平医師は話す。

「手術からその後の治療までずっとつきあうのは乳腺外科の先生です。患者さんの立場を理解して冷静にアドバイスをくれる先生は、きっといると思います」

 人工乳房再建、自家組織再建にかかわらず、個々の患者の胸の状況、がんの治療状況、ライフスタイルなどトータルに配慮して手術法を選定し、いかに質の高い再建手術をするかは、医師の技術と熱意にかかっている。そういう技術と熱意を持った医師のもとで、後悔のない手術を受けてほしいと岩平医師は強調した。

(文/伊波達也)

※週刊朝日1月18日号から

このニュースに関するつぶやき

  • ワタシのことを語ろうか?って、長くなるから、日記にするけど。うん。いろいろとあるよね。。。。。(((・・;)
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  • 美容整形の医者は自分とこの患者が減ると困るから「保険がきく手術なんか自分の思い通りにならなくて当たり前、自費でキレイな胸を作りましょう!」って言うに決まっている。
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