乾貴士のアラベス移籍が秒読み段階に入っている。昨夏の移籍市場で名門・ベティスに加入したものの、なかなか出場機会に恵まれていなかった日本代表MFに、バスク自治州の州都ビトリア=ガステイスを本拠地とするアラベスが触手を伸ばしたのだ。
目下、ラ・リーガでは9勝5分6敗の5位(1月23日現在)。上位戦線を大いに盛り上げているクラブとはいえ、アラベスがどのようなクラブなのか、日本ではあまり知られていないのが現状だ。1921年に創設された由緒あるクラブの概要を、少しだけ紹介しよう。
■ホームタウンは?
◎バスク自治州の州都ビトリア=ガステイス
12世紀、ナバーラ王国のサンチョ6世がガステイスと呼ばれていた集落の丘に「NUEVA VICTORIA」“新しい勝利”という街を築いたことが、ビトリアの起源と言われている。ビトリア=ガステイスの中心部にある『ビルヘン・ブランカ広場』には、19世紀に起きたイギリス・ポルトガル・スペインの連合軍がフランス軍を破った「ビトリアの戦い」の記念碑が建てられている。2012年には環境分野の自治体賞である『欧州グリーン首都賞』を受賞した、スペインの中でも自然が豊かな地域だ。
バスク州の中ではビルバオに次いで人口が多い。スペインの各都市やフランスにも、スペイン国鉄RENFE(レンフェ)で簡単にアクセスでき、交通網が充実している。
■ホームスタジアムは?
◎エスタディオ・デ・メンディソロツァ
収容人数は19,840人で、バスク代表が親善試合の際に使用することもある。
リーガ・エスパニョーラにおいては、スポルティング・ヒホンが使用する『エル・モリノン』、バレンシアのホームスタジアムである『メスタージャ』に次いで、3番目に古いスタジアムである。
■ラ・リーガでの最高成績は?
◎ラ・リーガ 6位(1999−2000シーズン)
このシーズンの最終成績は、17勝10分11敗の6位。5位でフィニッシュしたレアル・マドリードとは勝ち点差わずか「1」、優勝したデポルティーボとも勝ち点差は「8」しか離れていなかった。
この好成績により、アラベスはクラブ史上初の欧州カップ戦出場権を手にしている。
■欧州カップ戦の最高成績は?
◎UEFAカップ 準優勝(2000−01シーズン)
前年にラ・リーガで6位になったことで出場権を得たUEFAカップ(現UEFAヨーロッパリーグ)でも、アラベスは快進撃を見せる。4回戦でインテル(イタリア)、準々決勝でラージョ・バジェカーノ(スペイン)、準決勝で1.FCカイザースラウテルン(ドイツ)を破ると、見事決勝まで駒を進めた。決勝では延長戦の末にリヴァプールに4−5で敗れたものの、スモールクラブの大躍進は欧州に衝撃を与えた。
■主な在籍選手は?
◎アベラルド(元スペイン代表)
◎マウリシオ・ペジェグリーノ(元アルゼンチン代表)
◎コスミン・コントラ(元ルーマニア代表)
◎ジョルディ・クライフ(元オランダ代表)
◎ネネ(元ブラジルU−23代表)
◎ハビ・モレノ(元スペイン代表)
■乾が狙えるポジションは?
◎4−4−2の中盤左サイド
今季のアラベスは、時折4−3−3を導入することがあるものの、基本的には4−4−2を採用している。指揮官のアベラルドから厚い信頼を得ていた中盤左サイドのホニー・ロドリゲスは、第18節バレンシア戦で足首を負傷。左サイドに開いてから中央にカットインする乾のキャラクターは、今のアラベスに欠けているものを十分に補うことだろう。
文=松本武水
写真=Getty Images