医師は不死身ですか? 残業上限2000時間案、「合意」は持ち越し

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2019年02月06日 20:11  弁護士ドットコム

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医師は不死身ですか、過労死してもいいんですかーー。「医師の残業は年2000時間まで容認」との厚生労働省案が明らかになったことで、ネットなどでこうした反応が出ている。


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例外的にとはいえ、過労死ラインの2倍に及ぶ時間を認めるのは「衝撃的」との受け止めだ。2月6日、厚労省が東京都内で開いた検討会は、この問題で3時間にわたり議論をかわした。論点は尽きず、「一定の合意」は次回以降に持ち越された。



●「年960時間以下」が原則

まず、現時点の案では休日労働込みで、一般労働者と同じ「年960時間以下」におさめることを原則とする。そのうえで、医師不足などの事情で、地域医療の確保のためにやむを得ない場合、「年1900〜2000時間以下」も例外的に認めるという枠組みになっている。



この「年2000時間」という数字が報道などにより一人歩きしているとして、厚労省や検討会メンバーの多くは「不本意だ」と問題視している。それは、簡単に「年2000時間」が認められるわけではないためだ。



都道府県がやむを得ないと認める医療機関を特定し、医療機関が医師に対して勤務間インターバルや代休(時間単位の取得も)、面接指導など健康確保のための追加措置をとることを条件とする。措置がないと特定を外し、「年2000時間」を認めない運用を考えている。



医師の残業時間の上限規制が適用される2024年4月までの期間に、医療機関が自ら計画的に労働時間の短縮に取り組み、なるべく多くの医療機関が「年960時間以下」となることを、厚労省は目指したい考えだ。



厚労省では現状、労働時間の管理がすべての医療機関で適切に行われているとは認識していないとの立場も示された。検討会で担当者は「個別の状況確認を含めた、強力なてこ入れを行う」と述べた。



●「医師は休みたがらない」指摘も

現役の勤務医や病院経営者、医師会関係者、労働法の専門家などからなる検討会。これら構成メンバーからは、さまざまな意見が出された。



現役の勤務医は「病院はいつでも最悪の状況に備えて待っていないといけない。売り切れたから店じまいとはできない」。代休について、「たとえば来月に取れるとしたら、精神的にはストレス軽減につながる」と話した。



また、適用が始まる2024年4月までの5年間は「医療機関の自浄作用を見守り、労基署による臨検を控えてほしい」との意見も。座長の岩村正彦・東大教授より「36協定は締結しなくてはいけないので、そこは勘違いしないようにしてほしい」といなされる場面もあった。



さらに、人手不足などの事情で、医師の健康を確保するための措置が十分取れない医療機関が出てくることへの懸念も複数の構成メンバーから出た。医師に休むよう促しても「俺が休んだら誰がやるのか」「患者は運ばれてくる」と返され、休みたがらない医師が少なくないとの指摘もあった。



(弁護士ドットコムニュース)


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