刑務所でインフルエンザが大流行したワケ――元女囚が考えるムショの環境

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2019年02月10日 19:02  サイゾーウーマン

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サイゾーウーマン

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 覚醒剤の使用や密売などで逮捕起訴され、通算12年を塀の中で過ごした後、その経験を基にさまざまな活動を続ける中野瑠美さんが、女子刑務所の実態を語る「知られざる女子刑務所ライフ」シリーズ。

■名古屋刑務所で300人がインフルエンザに感染

 はやってますねえ、インフルエンザ。読者の皆さんは大丈夫ですか? 予防接種をしていても、かかる時はかかるそうで、私はラウンジを経営しているのでヒヤヒヤです。インフルに限らず、調子が悪い時は休めればいいんですけど、そうもいきませんしね。

 なんて思ってたら、メイケイ(名古屋刑務所)のインフル大感染が話題になりました。もうだいぶ収まってるようですが、受刑者約200人、職員約100人の計300人ほどがインフルにかかってたんですね。なんと受刑者全体の1割、職員全体の2割に当たるそうで、かなりごついです。

 とはいえ100人を超えたことは2015年にもあったそうで、ホンマはもっとあったんちゃうかなーと(笑)。施設の規模が大きければ大きいほど、関わる人も増えるから、感染も広がりますね。

■シャンプー後に髪が凍っても風邪知らず(笑)

 私がムショにいた頃は、表立った大感染はなかったです。もちろん風邪をひいたり、じんましんが出たりなんかはしょっちゅうでしたけど、ノロウイルスや食中毒騒動も特になかったですね。

 とはいえ「あの環境」で、よう無事やったなあと今は思います。暖房は最低限で寒いのはもちろんなのですが、部屋が狭くて「人と人の距離」が近いですからね。インフルはせきやくしゃみでうつるから、同房でゴホンゴホンやられたらイッパツだそうですよ。マスクは必需品です。

 あと、空気が乾燥していると、ウイルスが活発にあっちこっち飛ぶそうです。加湿器があればいいみたいですけど、そんなもん、あるわけないし。もちろん、ドライヤーもありません。シャンプーした後、みんなそのままなので、冬なんか翌朝は髪が凍ってました。これがインフル予防にはよかったのかも……そんなわけないですね。

 今思えば、インフルより肺炎のほうが怖い環境でしたが、誰もかかっていませんでした。ムショにはイジメもあって、「ヘンな緊張感」が漂っているので、風邪とかもひかなかったのかもしれません。名古屋の場合は、とにかく大所帯やからヘンに緊張しすぎて、みんな疲れてダウンしたのかも(笑)。

 ちなみに法務省が管轄するムショエリア(?)である「名古屋矯正管区」内の、愛知、岐阜、三重、福井、石川、富山各県のムショでは、ここまでの感染はないそうです。でも、面会だけでなく日常の消耗品や食材の納入業者、郵便や宅配便の配達まで毎日いろんな人が来るわけですから、誰かがウイルスを持ち込んだら、みんなイッキにやられるに決まってます。

 ムショもお役所なので、法務省は毎秋に文書で「注意喚起」しているそうですが、マスク着用やうがい、アルコール消毒など、普通なことばっかりです。まあお年寄りや持病のある受刑者は予防接種を受けさせてもらえるそうですが、全員がやらないと意味ないと思います。

 でも、これだけ感染したのは、何か理由があるんでしょうね。「ちゃんと予防してるのに……」言うたって、この感染者の多さでは、「やってない」のと同じですやん。

 そもそも「名古屋市」でなく「みよし市」にあるのに、「名古屋」をカタるのもどうかと思いますし(千葉なのに「東京」をカタる施設もありますけど)、今年に入ってからも現職の刑務官が「あおり運転」で相手をはねてケガさせてパクられてますし、いろんな意味で心配なメイケイです。

中野瑠美(なかの・るみ)
1972年大阪・堺市生まれ。特技は料理。趣味はジェットスキーとゴルフ。『ダウンタウンなう』(フジテレビ系)や『新・情報7daysニュースキャスター』(TBS系)などへの出演でも注目を集める。経営するラウンジ「祭(まつり)」

※この連載が本になりました!
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