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全作完結済み! 「このマンガがすごい!」にランクインしなかったけどすごい!2019

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2019年02月10日 21:08  ねとらぼ

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ねとらぼ

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 読者のみなさん、こんにちは。虚構新聞の社主UKです。社主がおすすめのマンガを紹介していくレビュー連載、第96回目となる今回は恒例の特別企画「『このマンガがすごい!』にランクインしなかったけどすごい!2019」をお届けします。



【画像】2019年の選出マンガ5作品



 タイトルにもあるように、これは「このマンガがすごい!2019」(宝島社)<オトコ編>と<オンナ編>計100作品にランクインしなかった作品の中から、昨年完結した作品をランキング形式で紹介する企画です。2014年の連載開始以来、今回で6回目を迎えました。いつもお読みいただきありがとうございます。



 作品を紹介する前に、例によっておことわり。この企画は本家「このマンガ〜」の選考に異議を唱える意図はなく、社主が昨年読んで面白かった良作を推薦するものです。もちろん本家にランクインした100作品はどれも素晴らしい作品なので、ぜひ読んでみてください。



 なお選考に当たっては、「2018年に完結した作品、または単巻作品であること」「ラストまで失速せず満足できる内容であること」「男性/女性向けからバランスよく選ぶこと」の3点を心掛けました。いずれもモヤモヤを残さない満足度の高い作品ばかりなので、興味を持たれたらぜひ手に取ってみてください。



 ということで、作品の発表です! 例年10作品を紹介していましたが、今年は5作品をランキング形式でお届けします。



●第5位『なつやすみの友』(雨野さやか)



 第5位は雨野さやか先生の『なつやすみの友』(全1巻/スクウェア・エニックス)です。



 夏休みも終わろうとする8月の終わりのある日、会社の先輩と不倫中のOL・並木鈴(りん)のアパートにメガネをかけた見知らぬ小学生が訪れます。



 「僕をあなたの友達にしてください」



 唐突にそう申し出た少年の名前は井上友(とも)。塾のキャンプから抜け出してきた彼は、片付けなければならない特別な「夏休みの宿題」を終わらせるため、鈴の友達として、5日間だけ一緒に住ませてほしいと非常識なことを言い出します(捜索願などは出されないように「うまくやった」とのこと)。最初のうち、鈴は断ろうとしますが、他に行く当てがないと言われ、アパートにとどまるのを認めることに。こうして謎の少年との5日間限定の友達生活が始まります。



 小学生らしい無邪気さと、大人びた横顔を時折見せる友。不倫相手の先輩への気持ちを整理できないまま悩み続ける鈴は、突然現れたこの5日間限定の友達と言葉を交わす中で、幼いころの自分、そして不倫という現実を抱えた今の自分に向き合い始めます。



 「私の願いは この独りよがりな幸せが いつまでも続く事 ―でも きっと私は 手ののばし方を 間違えた」



 ためらい、迷い、不安――、そういった自分の弱さに向き合いながら、彼女は大きな決断を下します。



 鈴に課されたこの「夏休みの宿題」を片付ける前半に続き、物語後半では、本作で最も大きな謎、少年・友の正体へと話の軸を移します。鈴が不倫する先輩・井上と同じ名字を名乗り、髪の色までそっくりの少年はいったい何者なのか。そして彼が5日間で片付けなければならない宿題とは何だったのか。



 自分に自信が持てない不器用な鈴とは対照的に、大人びた態度を見せてきた友が「宿題の答え合わせ」をやり遂げた後に見せた表情は心が温まるものでした。これはひと夏の終わりとともに、大人は大人へ、そして子どもは子どもへと成長していく2人の物語でもあります。



●第4位『一変世界』(明治カナ子)



 第4位は明治カナ子先生のファンタジー作品『一変世界』(全3巻/新潮社)です。



 森の中にたたずむ荒廃した神殿。少女・プーリョはこの森の神殿で大巫女見習いとして修行に励んでいました。荒れ果ててはいるものの、信仰の対象として人々から敬われるこの場所で、神官たちに囲まれて暮らすプーリョ。



 しかし、祭事「奉唱会」が100年ぶりに開かれることが決まったのをきっかけに、彼女は自分を取り巻くこの世界にさまざまな疑問を抱き始めます。幼いころ大好きだった付き人・ブレダンはなぜ急に消えたのか? 日記を残して神殿を去った第14代大巫女と、それと入れ替わるようにして見習いに選ばれた自分の失われた過去。そして何より、神殿がこの世界に存在する意味そのもの――。



 それまでプーリョを庇護していたはずの世界は、見方が変わった途端、死のにおいを感じさせる不安定な世界へと一変していきます。神殿は彼女の成長を促すゆりかごなのか、それとも決して逃げることを許さない永遠の牢獄なのか。



 既存の宗教や、「剣とドラゴン」のようなクリシェと化したゲーム的中世とは異なる、作者独特の仄暗いファンタジー的世界観は、不条理な悪夢を見たときのような心の奥底に横たわる原初的恐怖を刺激します。決してグロいわけではなく(むしろ絵柄としてはかわいい部類)、それでいて読み終えた後にしっかりと記憶に爪痕を残す作品でもありました。



 あとがきにある通り、ストーリー後半で展開が駆け足になった感は否めませんが、かと言って消化不良になっているわけではないので、心配なく最後まで読み通せるかと思います。



●第3位『みんなで辞めれば怖くない』(中憲人)



 第3位は中憲人先生のコメディ『みんなで辞めれば怖くない』(全1巻/秋田書店)です。



 部署内に響き渡る怒号で理不尽な要求を繰り返すパワハラ上司。早朝出社。終電まで続く残業。飲み会への強制参加。入社3年目のサラリーマン・斎藤は、限界に達しつつありました。



 どんな理不尽も、作り笑顔で乗り切ろうと努め、順調に「社畜」への道を歩みつつあった斎藤。しかしある日、解釈の行き違いで上司から容赦ない叱責を浴びせられた彼の心に異変が生じます。



 「伝えきれなかった人と理解できなかった人 どちらも役目をはたしていないのに どうして片方だけが怒ってるの?」



 そう、本来は双方のミスだったはずなのです。まさにこの上ない正論。しかし、斎藤の口をついて出たこの言葉は、彼の言葉であると同時にまた彼の言葉ではありませんでした。なぜなら、言葉の主は斎藤の中に突如現れた「小学生女子人格・ユイ」のものだったからです。



 慌てて失言を謝る斎藤。しかし、意識下で生き続けるユイは、その後も「どうして行きたくない飲み会に行くの?」「始業まで時間があるのに、先輩より早く出社しなければならないルールなんて変だよ」と、子どもならではの率直さで突き刺すように次々と問いかけます。それに対して、斎藤は「そういう風になってるんだからしょうがないよ」として答えるのが精一杯。



 ユイがどれほど大人の世界のおかしさを指摘しようと、彼を取りまく現実は変わりません。この日も別の上司から粘着的な説教を受ける斎藤。偽りの笑顔を張り付け、上司のありがたいお言葉を機械的にメモり続ける斎藤でしたが、「人間的成長」というトラウマワードに触れられた瞬間、彼の中に第3の人格「バーサーカー・タダシ」が誕生します。



 筋骨隆々のタダシは、上司を縊り殺すことも厭わない、「キレる」の擬人化とも言える危険人格。このままタダシに肉体を乗っ取られてしまえば大変なことになると、精神世界の斎藤とユイが慌てて抑え込んで事なきを得ましたが、その後はタガが外れたように、斎藤の中に別人格が次々と出現することに……! 考古学者、修行僧、野球少年……、職場で困難や理不尽に直面するたび、それを回避しようと、新しい人格が次々と生まれていきます。



 しかし、多重人格同士のドタバタ劇じみた物語の色彩は大きな変化を見せます。



 回される仕事の量がますます増え、いよいよ精神的に追い詰められる斎藤。その重荷が増すにつれ、別人格たちを表舞台に立たせてしのぐことが増え、主人格であったはずの斎藤自身はどんどん心の舞台裏へと退行していくのです。



 「次はどんなオモシロ人格が生まれるんだろう?」という作品への喜劇的期待は、ここに来て自己を守るための防衛機制を生々しく描いた、ある種のサイコホラーという不穏な色彩に覆われ始めます。物語冒頭の純粋な笑いが、次第に引きつり笑いに、そしてとうとう笑えなくなるまでの展開が非常に上手いです。



 追い詰められた斎藤が別人格たちとの対話を通じて、最後にたどり着いた結論とは――。



 ブラック企業に限らず、人は異常な環境に置かれると、その心のバランスを保とうと、さまざまな自己正当化を行います。本作の場合、それはユイやタダシといった別人格の誕生という形で表れ、また彼らとの掛け合いが面白いおかげで、私たちは本作をコメディとして楽しむことができます。



 しかし一方で、一皮むけばその喜劇的シチュエーションの下に潜む人間の異常心理を垣間見せてもいます。フィクションでありながら、決して100%純粋な作り話というわけでもないのが本作の恐ろしいところ。斎藤のように自己欺瞞を強いられる厳しい状況に置かれた、世の少なからぬ人に対して、そこから抜け出す救いの道を示している点も良かったです。



●第2位『恋の撮り方』(たなかのか)



 第2位は、たなかのか先生の『恋の撮り方』(全2巻/KADOKAWA)。前作『すみっこの空さん』以来、久々の作品です。



 写真部部員の高校1年生・河島まもると、部長で3年生の佐々木つぐみ。ある日、まもるは1つ上のライカ先輩から、卒業アルバムの撮影係としてつぐみの笑顔をカメラに収める任務を与えられます。コンクールで受賞するほどの腕前を持つものの、誰一人としてその笑顔を見たことがないため、「凍てつきの女神」の異名を持つつぐみ。その上、いつも自分の表情を覆い隠すかのように、顔の前にカメラを構える彼女の笑顔を捉えることなど果たしてできるのか――。



 大きな難題とともに、アルバム撮影用のカメラを手渡されたまもる。試しにファインダーをのぞき込んだところ、何とそこには満面の笑みでこちらに微笑みかけるつぐみの姿が……! 早くもミッション終了?と、慌てて現実の世界に目をやると、そこに微笑む彼女の姿はありません。



 「恋をするとね カメラのフレームに つねに 恋してる人の姿が写るんだ」



 ライカ先輩の言葉を思い出すまもる。それはまもるがつぐみへの恋心に気付いた瞬間もありました。ここから、つぐみ先輩そっくりだけど、ファインダーの越しの世界にしか現れない「なかみ先輩」との交流が始まります。



 「凍てつきの女神」、現実のつぐみ先輩とは違って、まもるに向けて笑顔を投げかけるなど、豊かな感情を見せるなかみ先輩。しかしよく考えてみると、なかみ先輩はまもるのカメラの中にだけ住む存在でもあります。他の人からすると、カメラを構えて見えない相手に一人語り掛けているアレな状況なわけですが、それはさておき、彼自身は一緒にデートするなど、この状況を楽しんでいる様子。なぜなら、ファインダーを覗けば、想い人がいつも自分だけに笑顔を向けてくれるから――。



 しかし、この関係が現実では何の進展にもなっていないことも明らかです。現実のつぐみは決して微笑まない。物語は後半、ファインダーの向こうにいるなかみ先輩の本当の気持ちが明かされるのをきっかけに大きく動き出します。



 「雨の日 窓はくもって風景は優しく」「ピンボケ写真は輪郭をあいまいにして優しく」「その優しいふたつともは 涙をためて見る世界と似ていた」



 「だから思った 涙というのは かわいそうな自分をなぐさめるために 世界をあいまいにする機能かもって」「世界はこんなに優しいんだよって」



 真実を知ったまもるの、この独白には心を打たれます。片想いの相手から振られて傷つくことを恐れるのであれば、カメラの中に住む優しい彼女との生活を続けることもできたでしょう。ましてや、相手が自分に決して微笑んでくれない相手であれば、なおさらファインダーの中にある、ぬるま湯の世界に閉じこもり続けた方が心地良いはずです。



 しかし、まもるはそれを選ばず現実に向き合いました。そしてつぐみもまた、まもると同じように現実に向き合うことを選びました。なぜ彼女はカメラに魅力を感じたのか。それは笑うことのできない彼女にとって必然的な選択でもあったのです。



 本当の笑顔を取り戻したいと願ったまもるとつぐみがたどり着いた結末とは。2巻という枠の中で非常に美しく収まった作品。次回作も期待しています。



●第1位『僕らはみんな河合荘』(宮原るり)



 今年の第1位には、宮原るり先生の『僕らはみんな河合荘』(全11巻/少年画報社)を選びました。



 2010年に始まった「河合荘」は、アニメ化(14年)を経て、2018年に堂々の完結。この連載でも2013年の第2回で紹介した思い出深い作品でもあります。



 ご存知の方も多いと思いますが、あらためてあらすじを簡単に紹介しておきます。



 親の転勤のおかげで「河合荘」で一人暮らしをすることになった主人公の高校生・宇佐。しかもその下宿先には、憧れの先輩・律も同居しているという夢のようなシチュエーション。ひとつ屋根の下で片想いの相手と共同生活が送れると思いきや、個性的で残念な河合荘の住人たちが、2人の青い恋路に立ちはだかって……という内容のドタバタラブコメです。



 宇佐の恋路に立ちはだかるのは、緊縛大好きなドMのニート・シロ、男運に恵まれない残念美人OL・麻弓、サークルクラッシャーの腹黒女子大生・彩花といった一癖も二癖もある河合荘の住人たち。大人げない彼らは、ピュアな2人にあの手この手でちょっかいをかけてきます。



 その上、宇佐の片想いの相手・律は、小説以外に全く興味を示さない、恋愛などとは程遠い難しい性格の持ち主。初期条件「ハードモード」どころか「ナイトメア」に近い状態で、果たして宇佐は律の心を射止めることができるのか――。



 連載当初は、ごくごくわずかしか2人の距離が縮まらず、このままではハッピーエンドなど無理ゲーの極致とも思えたものですが、今回あらためて第1巻から読み返してみるにつけ、「よくぞここまで……」と積み重ねた歳月の重みをしみじみと感じずにはいられません。



 また、宇佐と律先輩の距離が縮まるにつれ、初々しい若者への嫉妬心が具現化し、そのルックスが妖怪を超えて、もはやクリーチャーと化しつつあった麻弓さんの行方には、残念眼鏡女子好きとして「これ以上彼女が堕ちていくのを見ていられない!」とハラハラしたものですが、それもまた予想外(いや、あるいは予想通り?)の形で浄化される結末に落ち着いて、本当に良かったです。本当に良かったです(大事なので2度言う)。宇佐と律だけでなく、残念な河合荘の大人たちまで、まとめて大団円へと導いた宮原先生の手腕は本当に素晴らしいの一言に尽きます。



 ラブコメ漫画を読む動機の1つに「作中の恋愛風景に自己を投影する」という楽しみ方がありますが、本作の場合、読者が投影する対象は主人公の宇佐や律ではなく、実は河合荘の同居人たちだったのではないでしょうか。



 本作は「端から見ていてむずがゆくなる若人の恋模様に、『下ネタ』という名のグングニルな横槍を入れて邪魔をしながら、それでいて心の奥底では成就することを願っている」という優しきひねくれ者のために作られたラブコメと言ってもよいでしょう。



 男性にも女性にもぜひぜひ読んでみてほしい傑作です。



●「このマンガがすごい!」にランクインしなかったけどすごい! 2019



・【第1位】『僕らはみんな河合荘』(宮原るり)



・【第2位】『恋の撮り方』(たなかのか)



・【第3位】『みんなで辞めれば怖くない』(中憲人)



・【第4位】『一変世界』(明治カナ子)



・【第5位】『なつやすみの友』(雨野さやか)



 というわけで、2018年完結の5作品をランキング形式で紹介しました。長文お付き合いありがとうございました。



 マンガアプリや電子書籍の普及のおかげで、近ごろは本屋に行かずともマンガにアプローチできるようになり、作品に触れるハードルは随分下がりました。



 しかしその一方で、書店員のようなプロの目利きを介さず、読めるものを手当たり次第に読むことが増えたため、それが本当に自分が楽しめる作品なのかどうかが分かりにくい弊害が生まれたようにも思います。その結果、既に定評ある作者の「手堅い」作品にばかり注目が集まりやすくなり、結果として「まだ見ぬ当たり」が掘り起こされにくくなったと言っていいかもしれません。



 どんなマンガを好むかは人それぞれですが、今回挙げた5作品はできるだけ多くの人に興味を持ってもらえるようジャンルを分散させて選びました。あえて言えば、今回はハートウォーミングな作品を多めに選んでいます。きっと5作品のうちのどれかは、これを読まれた方にとって「まだ見ぬ当たり」になるだろうと確信しています。



 連載100回を目指し、今年も「まだあまり知られていないけど面白いマンガ」を取り上げていきたいと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。


このニュースに関するつぶやき

  • ヘルクしかしらない。
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  • 本屋に行っても漫画が多すぎて、どれを読んでいいかわからないので、こういう丁寧な紹介は有り難いですね。
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