担当ホストに月200万円……OLから風俗嬢になった女が駆け上がった「ホス狂い」の階段

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2019年02月11日 22:02  サイゾーウーマン

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サイゾーウーマン

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 ホストにハマりすぎている女たち――通称“ホス狂い”。「ホストに多額のカネを貢ぐ女」というイメージだけが横行する中、外の世界からはわからない彼女たちの悲喜劇がある。「ホストにハマらなかったら、今頃家が建っていた」という、新宿・歌舞伎町では名の知れたアラサー元風俗嬢ライター・せりなが、ホス狂いの姿を活写する。

 友達を初めてのホストクラブに連れて行くときは少しだけ罪悪感のようなものがある。なんというか、万引きに友達を誘うような気分になるのだ(もちろん比喩である)。だって、使うお金が、3,000円から3カ月後には100万円になっている可能性だってあるのだから。

 先日、この連載の担当編集者の希望で、彼女をホストに連れて行った。彼女は私に「ホス狂いの連載をしましょう」といってきたわりには、ホストに行ったことがないそうだ。

 そのときも実は少し罪悪感があった。もしかしたら彼女もそのままホス狂いの階段を駆け上がってしまうかもしれない。そして、そのうちホストの話ばかりするようになり、挙げ句の果てに編集者を辞めて風俗嬢になるかもしれない(その場合、この連載は終了する)。昔、ホストになんて縁がなかった友達が半年後にはOLを辞め、1年後には毎月200万円を担当ホストへ使う「エース」になってしまったように。

 3,000円が、100万円以上の遊びになる。なんだか、覚せい剤も最初はタダでもらえるんだとか、そんな話を想起する(もちろん比喩である)。つまり何が言いたいかというと、ホストで遊ぶ金額というのは最低金額と最高金額の幅が大きいのだ。だから、「騙されて大金を貢がされる」なんてイメージを持たれても致し方ない。

 実際にホストに行ったことのない人には、何がどうなって飲み代が数十万数百万になるのか想像がつきづらいと思う。今日はこの、「お金の話」がしたい。なので、ここでホストクラブの通貨単位を一度まとめてみようと思う。

・初回500〜3,000円程度
・初指名 1時間1万〜2万円の席料
・指名料 2,000円程度
・飲食料(3,000〜100万円以上)
・TAX(総額の40%)

 TAXとは簡単にいうと、サービス料のようなものだ。つまり1回目は高くても3,000円程度、2回目以降は最低でも2〜3万円のお金がかかる。店舗によっては2回目のハードルを下げるために、初めての指名は1万円飲み放題等のステップを設けていたりする。高すぎる階段は登りづらいから。

 担当編集がこの2段目の階段に足をかけるかはわからない。初回だけしか行かない、という人が大多数だ。

 先ほど少し話に出した、1年で、月に200万円を使う「エース」へと駆け上がっていった友達・サヤカ(仮名)を例にして説明する。サヤカはどのようにして初回客から「エース」への階段を登っていったのか。彼女から聞いた話をもとに再現してみよう。

 サヤカの2段目の階段は、1万円。彼女は新宿で友達と遊んでいた。22時。終電までは少し時間があった。そのとき、少し前に初回3,000円で行ったホストクラブのホストから「たまたま」連絡があった。

 ホストへ通うつもりはなかったので、たいした会話などしていなかった。でも、そのときはお酒も入っていてなんだか気分が良かったのだ。
「私、そんなにお金持ってないよ」
「初めての指名だし、1万円で飲めるから。遊びに来なよ」

 1万円だけなら、1回くらいいいかな。誰かと話したい気分だった。サヤカはあとで振り返って、そう語っていた。

 サヤカの3段目は14万円。いや、それはもうすでに数段飛び越えて10段目だったのかもしれない。「担当」になったホストは、別に顔が好みだとか元カレに似ているだとかそういうわけではなかった。ただ、初めての指名から、仕事が終わるころになると、毎日必ず電話がかかってきた。もちろんお店に来てもらうための、いわゆる「営業」であることくらいわかっていたし、電話に出ないときもあった。そう、どうでもいいような電話だったのだ。他愛もない話。

「じゃあ、今日も仕事頑張ってくるね」
「うん、頑張ってね」

 ホストの太客の中には100万円以上を毎月使う人もいるらしい。それなのに、1万と3,000円“しか”使っていない私に毎日連絡してくれる。どうでもいい着信は、そのときにはもう「してくれる」ものになっていた。「してくれる」から、お礼をしようと思った。

 1万円を使ってから1カ月後。ちょうど、ホストクラブの何周年だとか、名目は忘れたけれどイベントがあった。他愛もない話に付き合ってくれる。そのお礼の気持ちで貯金を下ろした。

 シャンパン含めて10万円。TAX入って14万円。シャンパンコール。店中のホストが集まってくる。担当ホストと私にマイクが向けられる。テレビドラマで見たことがあるような光景だった。

「初めてのシャンパン、ありがとう。これからもっと仲良くしていこうね」
「……………」

 緊張なのか何も言えなかった。あのとき、ドラマのヒロインはなんて言ってたっけ……そこからは階段の頂上まではあっという間だった。

「風俗のお店を紹介してほしい」

 サヤカをホストクラブに連れて行ってから、半年後のことだった。

 私とサヤカは風俗の同僚になった。真面目なサヤカは毎日、それこそ朝から朝まで働いていた。これは私の偏見だが、もともと昼の仕事をしていた女の子がホストにハマると、ものすごいスピードでホス狂いへの階段を昇っていく。遅刻もしない、当日欠勤もしない。社会人として当たり前だと思うかもしれないが、風俗の世界ではそれだけでもう優等生だったりする。

 1日10万円。月に20日働いて200万円。生活費はどうしているのかというと、担当ホストと一緒に住み始めたそうだ。究極の節約術である。

 こうしてサヤカは1年で担当ホストの「エース」になった。毎月200万円。天井知らずの世界とはいえ、ホス狂いの階段の頂上付近まで登っていたように見えた。

 長々と「エース」への道のりについて説明してきたが、これはもちろんホストの世界の一例でしかない。全員が全員「エース」になるわけでもないし、風俗嬢になるわけでもない。月数万円くらいで楽しく飲み続けている人だっている。ちょっと贅沢な遊びであって、別に人生がかかっているわけではない人も多いだろう。

 私はホストやホス狂いの世界を糾弾する意図はまったくない。むしろホストが好きだからホストの話を嬉々として書いている。あくまで、ホストの世界でどうやって短期間で大金を使うかを説明したかっただけだ。それと短期間でエースにまで上り詰めた、真面目で一生懸命な一人の友達の話。見ようによっては、それは依存症であり、不幸への転落人生と思うかもしれない。

 けれど、私はそうは見たくない。だから、一貫して、彼女の1年間を「階段」の比喩でたとえてきた。そう、ホス狂いの階段は昇るものなのである。まあ、たまに頂上から飛び降りる人もいるけど。飛び降りるにしたって、高いところまで昇る必要があるのだ。下り階段かもしれないじゃないか、という指摘は受け付けない。それは自分が決めることだ。

 1段目は3,000円、2段目は1万円。3段目からはあっという間。てっぺんは雲の上、何度も言うが、天井はない。

 以上、ホス狂いが月に200万円を使うまでの簡単なあらすじである。ちなみに編集者が2段目、3段目の階段を昇ったところで私は止めるつもりはない。けれど、「若い男と話すのって楽しい!」と帰り際に叫んでいたので、やや心配ではある。

せりな
新宿・歌舞伎町の元風俗嬢ライター。『マツコが日本の風俗を紐解く』(日本テレビ系)で、 現役時代のプレイ動画を「徹底した商業主義に支配された風俗嬢」 と勝手に流されたが、 ホストに貢いでいたのであながち間違いではない。その他、デリヘル経営に携わるなど、業界では知られた存在。 現在も夜な夜な歌舞伎町の飲み屋に出没している。
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【バックナンバー】
第1回:歌舞伎町の元風俗嬢が語る、愛しき“ホス狂い”たち――「滑稽だけど大真面目」な素顔

このニュースに関するつぶやき

  • 風俗嬢になってまでホストに貢ぐ方も、貢がせる方も、良いイメージを持てないなぁ。
    • イイネ!1
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