「バカな客」扱いする居酒屋バイトは、むしろ「客へのハラスメント」だ

J CASTニュースによると、居酒屋で10年間のアルバイト経験をもつ、お笑いコンビ『ウエストランド』の井口浩之（34）というヒトが、バラエティ番組『俺の持論』（テレビ朝日系）で、「飲食店バイトを必修科目にするべき」と切り出し、「バカなお客さんだと気付いてない人が多い。なぜなら飲食店でバイトをしていないから！」と持論を展開。客のどんな行為が従業員を困らせるかを、実例を出して語り、それがネット上で反響を呼んでいる……らしい。とりあえず、この井口というヒトが挙げた「従業員を困らせる客」とは、以下のとおりである。

 

１．飲み干したグラスを従業員に差し出し「すみません。同じのもう一杯」と注文する客（※「いやいや、全部同じジョッキ使っているから」「なにを飲んでいるか知らないよ。そんなに注目していないから！」「自己顕示欲が高くなっているんですよ。バカな客の典型です。自意識過剰の極みです」と、井口というヒトはツッコミ）

 

２．トイレに行く途中で従業員にすれ違いざま「オレのところにビールちょうだい」などと注文する客］（※「いやいや、お前の席がどこか知らないから！　いちいち覚えていないですよ！」「これも、自分がどこにいるか店員が把握しているだろう、という勝手な思い込み、自意識過剰なんです」と、井口というヒトはツッコミ）

 

３．入店時に「４〜５人で」と声をかける客（※４名席か６名席のどちらに通すか迷うんです。規模によっては６名席が一つしかない場合もあります。そのテーブルを４名で埋めたら、後で６名が来てもお断りするしかない。そうしたら客単価3000円だとしても、6000円のマイナスになるんですよ！）と、井口というヒトはツッコミ）

 

さて。ここまでを読んで、賢明なるcitrus読者の皆さまは、どうお感じになったことだろう。

 

「完全同意。当店に来る馬鹿客と全く同じ迷惑行為」

 

「井口氏の素晴らしい福音を聞いて理解できない馬鹿は居酒屋に来ないで下さい。馬鹿の相手は本当に大変なんです」

 

「凄い共感できる部分が結構あって笑ってたｗ。ピーク時はほんま戦争だもんね」

 

……などと、賛同の声も意外に多いと聞くが、私は正直とてもイヤ〜な読後感をおぼえた。そこまで客は、居酒屋で働く方々に気を使わなければならないのか……と。

 

私はてっきり、酔った勢いでケンカを売ってくる客だとか、トイレに籠もって出てこない客だとか、テーブルでゲロまき散らす客だとか……そういうレベルの迷惑行為が飛び出すのかとばかり想像していた。でも、この程度？　

 

そりゃあ、私は今現在まで飲食の仕事に就いた経験は一切ない。指摘されてみたら「たしかに…」と納得できる部分だってなくはない。別に「お客さまは神様です」の精神で接客に臨むべし──なんて古い考えを押しつけているわけでもない。が、これくらいの自意識過剰や曖昧な注文は「ぐっと我慢の範疇」ではないのか？　もし、「同じのもう一杯」や「トイレ客の席」が識別できないなら、きちんと「申し訳ございません、同じのってなんでしたっけ？」「お客さまのお席はどちらでしたっけ？」と尋ねればいい。「いずれ来るかもしれない６人客」を期待するなら、「４〜５人で」って客には「満席です」なり「４名席なら空いてますが…」なりとお断りを入れればいい。それで相手がキレたら、そのとき始めて「うぜぇ客だな」と内なり外なりで毒づけばいい。

 

そもそも、この手の愚痴をネット上でつぶやくならまだしも、テレビで、それも地上波で後出し的に暴露するのって、しかも「バカ」呼ばわりってどーなのよ!?　コレって、れっきとした「客へのハラスメント」だと思う。「飲食」という職業に対する優越的な特権意識さえ感じ取ってしまう。「お笑い芸人との二足のわらじ状態の居酒屋バイト歴10年」ってそんなに偉いのか？　「バカじゃない賢い客」しか居酒屋に行っちゃあダメなのか？　「飲食でのバイト経験」すらない私はクズ人間なのか？　こんなことまで気を使わなければならないなら、もう居酒屋なんて絶対に行きたくない。これからは「同じのもう一杯」が許される小バコのレストランや赤提灯にしよっと……と、井口というヒトの福音がネガティブな方向に響いて、本気でこう心に誓った私であった。