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東京ディズニーRが抱える「世界観の崩壊」という深刻なリスク

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2019年02月15日 05:10  まぐまぐニュース!

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2018年4月に開園35周年を迎えた東京ディズニーリゾート(TDR)の業績が絶好調です。19年3月期の営業利益も過去最高を更新すると見られていますが、「今後は予断を許さない」とするのは、店舗経営コンサルタントの佐藤昌司さん。佐藤さんは自身の無料メルマガ『店舗経営者の繁盛店講座|小売業・飲食店・サービス業』で、「チケット料金」と「世界観」という2つの面からTDRの「死角」について考察しています。

業績好調の東京ディズニーRに潜む「深刻なリスク」

東京ディズニーリゾート(TDR)を運営するオリエンタルランドの業績が絶好調だ。1月30日発表の2018年4〜12月期連結決算は、売上高が前年同期比9.6%増の3,996億円、本業のもうけを示す営業利益が14.3%増の1,067億円だった。最終的なもうけを示す純利益は7.1%増の743億円だった。

18年4月に始まったTDRの開業35周年イベントの効果で入園者数が増えたことに加え、35周年イベントの関連商品の販売が伸びて入園者1人当たりの売上高が増加したほか、宿泊需要の高まりでホテル事業が好調に推移し、大幅な増収となった。また、増収効果がコスト増を吸収し、営業利益を押し上げた。

TDRの入園者数は好調に推移している。13年度に3,000万の大台を突破し、17年度まで5年連続で3,000万人超えを実現したが、18年度も好調に推移しており、上半期(4〜9月)の入園者数は前年同期比5.0%増の1,551万人と上半期として過去最高を更新した。35周年イベントが好調だったほか、3月に年間パスポートを値下げした効果が出たとみられる。

業績は好調に推移しているが、19年3月期の業績見通しは従来予想を据え置いた。売上高は前期比4.5%増の5,008億円、営業利益は2.9%増の1,134億円を見込む。純利益は1.4%減の800億円とした。ただ、集客状況などから従来予想を大きく上回って終着するとみられており、営業利益は過去最高(14年3月期の1,144億円)を更新することがほぼ確実視されている。

順風満帆に見えるTDRだが、19年度は予断を許さない。18年度に実施した35周年イベントの反動減は小さくないとみられるためだ。19年7月に、約180億円を投じて建設する新アトラクション「ソアリン」が開業する予定だが、35周年イベントの反動減を補えるほどの集客が見込めるかは不透明だ。

そういったなか、当面の業績を大きく左右する施策で焦点となるのが「チケットの値上げ」だろう。収益の最大化と入園者数の調節を目的に16年まで3年連続で値上げしたが、17年と18年は値上げを見送っている。今年は10月に消費増税が予定されており、3年半ぶりとなる値上げに踏み切る可能性が高い。

TDRは混雑による顧客満足度の低下が指摘されており、混雑解消が重要な経営課題となっている。混雑を解消するためにチケットの値上げを実施する側面もある。

「変動価格制」の導入は有り得るか

一方で、混雑解消の手段として「パークの拡張」がある。オリエンタルランドは約2,500億円を投じて東京ディズニーシー(TDS)を約2割拡張し、映画「アナと雪の女王」のアトラクションなどを建設する予定だ。この拡張により混雑緩和を図りたい考えだが、開業日は23年3月期中を予定しているため、拡張による混雑緩和は先の話となる。

そこで、すぐに効果が得られるチケットの値上げが切り札となってくるわけだが、過度な値上げは顧客満足度の低下を招いてしまい、また、適正な入園者数を実現できなくなる恐れもある。そうなってしまえば、収益が低下する可能性が高まってしまう。

そうならないよう、当面の年間入園者数をここ数年の水準から大きくかけ離れることがないようにコントロールしたいところだ。17年度までの5年間の年間入園者数がそれぞれ3,000万〜3,200万人となっていることをベースに、現状の入園者数のペースや平準化策の影響などを加味して考えてみると、19年度と20年度の年間入園者数がそれぞれ3,100万〜3,200万人で収まるような価格設定を実施したいところだろう。

なお、東京ディズニーランド(TDL)かTDSで使える大人の1日券「1デーパスポート」の価格は14年4月の改定前は6,200円だったが、3度の改定を経て16年4月に7,400円になり、現在まで同価格が続いている。値上げする場合、主力の同パスポートの価格がいくらになるのかに注目が集まる。

テーマパークでの値上げを巡っては、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)の取り組みに注目が集まっている。USJでは1月10日からチケットの変動価格制を取り入れた。変動価格制とは需要に応じて価格を変える仕組みのことで、繁忙期の価格は高く設定し、閑散期は低く設定するなどして入園者数の平準化を図ることができる。

USJは人気の高まりで入園者数が増えている。16年度は1,460万人で3年連続で過去最高を更新した。17年度は運営会社による公開がなかったため入園者数は不明だが、勢いが衰えていなかったことから前年度を超えて4年連続で過去最高を更新したとみられる。

USJでは入園者数の増加に伴い、TDRと同様に収益の最大化と入園者数の調節を目的に値上げを繰り返してきた。変動価格制を取り入れる前の大人の1日券「スタジオ・パス」の価格は7,900円にまで高まっていた。

変動価格制を取り入れたことで以前の価格との単純比較ができなくなったが、変動価格制導入後の価格を見てみると、値下げ幅より値上げ幅が大きく、全体では値上げの色が濃い。ただ、価格変動の全体像を把握することが困難なこともあり、値上がり感はそれほど高くはない。それでいて収益の最大化と入園者数の平準化も期待できるため、USJの変動価格制の行方に注目が集まっている。

TDRでも変動価格制の導入が期待される。TDRは他のテーマパークと同様、時期によって入園者数に大きな違いがある。閑散期に新たにイベントを開催するなどして平準化を図ってきたが、こういった手法には限界がある。そこで、大きな効果が見込めるとして期待されているのが変動価格制だ。USJで導入されたこともあり、TDRで取り入れられることは十分あり得るだろう。

ファン離れにつながりかねない「世界観の崩壊」

TDRには他のテーマパークにはない独自の世界観と歴史があり、それが大きな強みとなっている。差別化された強みのため、値上げに対する利用者の許容度は決して小さくはない。TDRの大人1日券の価格は、USJの変動価格制導入前の価格と比べて500円安いということもあり、値上げの余地は十分あると言えるだろう。とはいえ、高い顧客満足度と収益の最大化の両方を実現させる価格を導き出すのは簡単なことではない。慎重な情勢分析を行って、最適解を探すことになりそうだ。

こういった難しい課題を抱えているものの、それでもTDRは順風満帆と言っていいだろう。今のところ死角がないようにも思えるが、油断は禁物だ。特に雇用問題から生じるディズニーの世界観の崩壊の危険性に注意する必要があるだろう。

TDRはショーのパフォーマンスなどにおいて人材の質に特にこだわる必要があるが、少子化で労働人口が減少し人材獲得競争が激しさを増しているなか、優秀な人材を確保し続けることが以前にも増して重要になっている。優秀な人材が獲得できずにショーなどの質が低下し、それによりディズニーの世界観が崩壊してしまえば、深刻なファン離れにつながりかねない

また、人材のマネジメントにおいてトラブルが生じてしまい、訴訟問題に発展するなどしてTDRのブランドイメージが大きく低下してしまったら、ディズニーの世界観の崩壊が避けられないだろう。実際、オリエンタルランドでは過去に労働問題が何度か起きている。過去にないレベルの労働問題が生じてしまえば、世界観が崩壊し深刻なファン離れが起きるだろう。油断はできない。

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