今石洋之×中島かずき「プロメア」誕生秘話と見どころ、“ガロとカミナがそっくりな理由”は?【インタビュー】

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2019年02月17日 19:22  アニメ!アニメ!

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今石洋之×中島かずき「プロメア」誕生秘話と見どころ、“ガロとカミナがそっくりな理由”は?【インタビュー】
『天元突破グレンラガン』、『キルラキル』に続く今石洋之監督と脚本家の中島かずき氏の最強タッグによる最新作『プロメア』が2019年5月に公開される。

物語の舞台は、「世界大炎上」と呼ばれる、世界の半分が消失する未曾有の事態が起きた世界。その大火災の引き金となったのは、突然変異で誕生した炎を操る人種「バーニッシュ」だった。
一部の攻撃的なバーニッシュの面々は、「マッドバーニッシュ」を名乗り、放火と犯罪を繰り返す集団と化す。
黒いスーツに身を包んだ、マッドバーニッシュたちが起こす火災を鎮火すべく結成されたのが、対バーニッシュ用消防隊「バーニングレスキュー」だ。

ガロ・ティモスは、念願叶いバーニングレスキューの新人隊員となった、燃える“火消し魂”を宿した熱き男! マッドバーニッシュが引き起こす悲劇の炎を消すため、消火武装装甲「マトイ」とともに、現場に駆けつける!!

『髑髏城の七人』シリーズや『五右衛門ロック』、『蒼の乱』など、劇団☆新感線で、数々のアクション活劇を生み出してきた中島らしい脚本。
その脚本に乗りに乗り、コテコテの映像に仕上げてきた今石が、“上乗せ上等”という従来のスタイルを捨て、新たに挑んだ映像表現とは?

企画立ち上げから、二転三転したストーリーづくりなどの制作秘話、そしてファンの間で話題となった「ガロとカミナがそっくりな理由」を、今石と中島が語る。
[取材・構成=中村美奈子]

プロメア

2019年5月全国ロードショー
■『キルラキル』終了後、すぐに意気投合した劇場アニメの制作
――TRIGGERが劇場アニメの制作プロジェクトを発表したのは、2017年の夏にLAで行われたアニメエキスポでした。そもそも、劇場アニメの企画が立ち上がったのは、いつ頃でしたか?

中島かずき(以下、中島)
2013年に『キルラキル』が終わったところで、「次はできれば劇場で」と2人で話したところからです。最初は、『レ・ミゼラブル』のゾンビ版『レ・ゾンビラブル』をやろうと一所懸命プレゼンしましたが、「キョトン……」とされて。

今石洋之(以下、今石)
僕もミュージカルがやりたいって言っていたら誰にも賛同されず……。でも、そこからわりと早い段階で、中島さんから「炎」というテーマが出てきました。

中島
そこらへんで「世界大炎上」のイメージとキーワードが浮かんだので、半年から1年後には、企画をまとめて今石さんに持って行ったんですが、そこからが長かった。

今石さんが、僕が書いた最初の本を破るのは毎回恒例なんだけど、『天元突破グレンラガン』(以下『グレンラガン』)、『キルラキル』と2回続けて破られたから、今度は僕が最初に破ってやろうと思って。
でもダメだったね(笑)。

今石
1回、固まりかけたんですけどね。

――具体的にどんな部分が、再考になったのでしょうか。

中島
『プロメア』は、人類とバーニッシュが対立する構図が軸になっているけれど、それをストーリーでどう展開し、見せていくのかと考えたときに、主人公をどちらの立場にするか、で二転三転しましたね。
僕が最初出したアイデアは、主人公は“火消し”でもバーニッシュでもない、ごく普通の少年が成長していく話だったんです。
でも、ある程度時間をかけて描けるTVシリーズと違って、2時間くらいの劇場作品と考えると、設定をシンプルにする必要がある。そこで、まずは“火消し”を主人公にした脚本を書いて、自ら破って。

次に出たのが、バーニッシュを主人公とした案でしたが、今石さんが途中で「やっぱりバーニッシュが主人公じゃダメだ」とまた破って。
ぐるっと1周回って、やっぱり“火消し”を主人公にすることになりました。

――その理由は?

中島
お客さん目線になったときに、一番感情移入しやすいキャラクターを主人公に据えるべきだという、考えですね。
この作品は、まっとうな困難にぶち当たり、その困難を打破する主人公の話にしたかったんです。

バーニッシュだと、どうしても抑圧されて半分悪いほうになってしまう。
そうではなく、ストレートで、冒険活劇的な、まっとうな主人公でやったほうがいいよねと、落ち着きました。

今石
アイデア段階から変わらなかったのは、特殊な炎を操るバーニッシュと、その炎を消すのが使命の“火消し”という、2つの軸です。
両者の対立をより明確に見せるために設定をシンプルにしていった結果、主人公の年齢を青年まで引き上げ、職業として火消しを行う、バーニングレスキューという設定に繋がっていきました。

――先日公開されたばかりのPV第2弾の映像を観ると、レスキュー隊ということで、災害救助ロボのようなものが登場していましたが、今作はロボットものなのでしょうか。


今石
僕は映画をやるとなったときに、とにかくストレートなアクション映画をやりたいと思ったんです。ガロが使う“マトイ”は、ロボットというよりパワードスーツという設定です。
基本的にはアクション映画の中のひとつの要素としてメカが出てくる、という感覚です。僕がアクションの見せ方としてこだわったのが、そこですね。

中島
やっぱり、炎を操る突然変異に人類が対抗するには、武装装甲が必要だろうということでできた設定です。

――その“マトイ”を纏うガロが、『グレンラガン』のカミナに似ていると、ネット上で話題になっているのですが、なにか含まれた意味があるのでしょうか?


【関連記事】今石洋之×中島かずき新作アニメ「プロメア」、キャラが「グレンラガン」カミナに似ていると話題

今石
他人のそら似です! (笑)。
まあ今回、僕がわりと直球でものを作ろうという意識でやっている影響ですね。

『グレンラガン』もそうだったんですが、自分で企画を立てて主人公を描くと、だいたいあの髪型になるんです。
それをキャラクターデザイナーが、「それはちょっと……」と下を向かせたり、片側に流したりして、ちょうどいいあんばいに仕上がります。

中島
今回は火事場に行くので、現場には常に上向きの風が吹くんですよ。
上昇気流が発生すると、当然、髪の毛が上がる。炎に近い襟足は熱くなるから、刈り込むでしょう。

そう考えて描くと、”火消し“はこういう髪型になるんです。だからカミナとは違う。「職業髪」なんです。
僕はそうやって、キャラクター会議の時に熱弁しました。

今石
「職業髪」ってすごいな。今、初めて聴きましたよ。そんな設定だったんだ(笑)。

中島
……嘘です、今思いつきました(笑)。

→次のページ:こだわったのは、2時間でスッキリ気持ち良くなる爽快感

■こだわったのは、2時間でスッキリ気持ち良くなる爽快感
――今のお話のように、お2人は毎回、いろいろ意見を交わしながら企画を固めて行くそうですが、今回の企画決めの中でもっとも難航したことはなんでしたか?

中島
脚本ですね。2時間という限られた枠の中で何を書くのか、というところでずいぶん話し合いました。

今石
やっぱり映画は一発勝負。TVシリーズだと、話数を積み上げつつ、お互いの理解を深めながら作って行くことができるんですが、映画はここで一発決めておかないと後がないので。
そういう意味で、2人で全部きちんと話しておこうと。

中島
最初にも出ましたが、今回やろうと思ったことが「W主人公の男2人がガチバトルをし合うこと」だったので、それをどういう形で描くのがベストかをずっと探っていた感じです。

今石
僕は演出的な立場から、2時間の中でどういう風に、楽しくなる部分を置いていくか、一番気持ち良いポイントをどこに持ってくるかなど、テンポ感やエモーショナルな部分のボリュームとバランスに気をつけました。
それでいて、ストーリーを成立させていくという点で、かなり練りました。

――お2人の作品のおもしろさは、まさにそのエモーショナルコントロールとラストのカタルシスの大きさにあると思います。だからこそ、2時間という限られた時間枠の中で、どうお客さんに気持ち良くなってもらうかということで、脚本の練り上げに苦心したということですね。
それでいくと、中島さんは「劇団☆新感線」で舞台脚本を手がけているぶん、書きやすかったのでしょうか?

中島
最初はそう思っていたんですが、大切なのは今石さんとどうやるか。
今石さんと組んだTVシリーズでは、とにかくアイデアをどんどん膨らませていって、どれだけ乗せるかという方向でしたが、今回はその逆で、膨らませたアイデアをどれだけ削るかだったんです。
だから、合い言葉は「我慢しなきゃね」でした。

今石
だいぶ我慢しましたよね。

中島
僕が我慢して我慢して、アイデアを研ぎ澄まして作ったものの上に、さらに今石さんがどれだけ「乗っけているか」が、『プロメア』の見どころです。
「それで出たのがこれかよ」「手癖じゃないのか」と言われそうな感じもありますが、研ぎ澄まして研ぎ澄ましたら手癖になりました、ということで(笑)。

でも、どうしてもちょっとした所で「手癖」が出ちゃうんですよ。そこは自分で「あーあ、書いちゃった」と思いながらやっていました。

今石
いやもう、最高に研ぎ澄まされた「手癖」ですから(笑)。

■直球のアニメスタイルとカートゥーンを融合させた、新スタイルの試行

――今作は「炎」がテーマということで、「炎」の表現としてこだわったことはなんでしょうか? メインビジュアルやPVを見ると、普段目にしている赤や青の炎ではなく、蛍光イエローや紫など、変わった色味で表現していますね。

今石
今作ではCGを多用しているので、CGと作画の両方で成立するエフェクト表現を考えたときに、「シルエットだけでも勝負できるぐらい、シンプルなもの」という考えに行き着いたんです。脚本と同じですが、足し算ではなく引き算で考えるという方向性ですね。

描きこんだり過剰にしたりするのは楽ですが、やはり劇場アニメへの挑戦ということで、新しい表現をしたいと思ったんです。
『グレンラガン』の後に作った『パンティ&ストッキング withガーターベルト』では、カートゥーンっぽいタッチを活かした画づくりをしたので、『プロメア』では、カートゥーンのシンプルで削ぎ落とされたスタイルに、『グレンラガン』や『キルラキル』の直球アニメのスタイルを融合させて、新しいスタイルを成立させてやろうという狙いもあります。

シンプルな情報で「炎」を表現するには、現実に近づける写実方向に比べて、知恵を使わなくてはいけないし大変なんですが、すごくやりがいがありました。

中島
PVを見ると一目瞭然ですが、スタイリッシュな絵面になっていますよね。

■引いても引いてもあふれ出る今石×中島カラーを劇場で楽しんで欲しい

――バーニッシュのデザインも、アメコミヒーロー的なカッコ良さがあります。今回の企画を最初に発表したのがLAということで、制作するうえで「世界の目」を意識したことはありましたか?

中島
主人公の名前をカタカナにすることですね! “燃尽”(モヤシツクス)とかじゃなく(笑)。

今石
『キルラキル』のキャラクター名の翻訳が、すごく大変だったことを踏まえました。漢字で書いたからこそ意味が出るというのを、日本語を母国語にしていない方に理解して頂くのは大変だろうという。

――キャラクター名もシンプルに。『プロメア』の制作キーワードは、まさしく「引き算」ですね。

中島
我々に「引き算」という言葉があったのかと!
でもやっぱり、盛りたがり精神が出てしまうんです。特に後半に漏れ出ちゃって(笑)。
そのあふれ出たセリフをまた、クレイ役の堺雅人くんが、真面目に大見得切ってやってくれているんですが、すごく良い感じなんですよ!

――今回、キャスト陣も注目ですよね。堺雅人さんをはじめ、ガロ役の松山ケンイチさん、リオ役の早乙女太一さんは、いずれも劇団☆新感線の舞台出演で馴染みがある面々です。PVでは、ガロが歌舞伎の見栄切りのように口上を述べてポーズをとるシーンもありますが、舞台俳優さんの起用は劇場を意識してのことでしたか?

今石
それよりも、芝居ができて、中島さんのセリフをカッコ良く読める人がいいなと思ってのことです。

中島
僕は秘かに、やりたいなと思っていました。役者さんたちとは親交がありますし、僕のリズムもわかってくれているという安心感もあって。
脚本の上がりが早かったので、さすがに当て書きとまではいきませんでしたが、クレイを書くときに、堺雅人くんのイメージが湧いていたんです。
だから、クレイの声は堺くんがいいなと思っていたので、松山くん早乙女くん共々、第一希望が通ってうれしかったですね。

実は松山くんは、今石アニメが大好きなんですよ。
初めて会ったときに「『グレンガラン』見ました!」って、うれしそうに話してくれて。
太一くんは、普段ボソボソとしゃべる感じの子なんですが、実はすごく声が良い。だから、リオ役はハマると思っていましたが、予想以上でした。

今石
本当に。第一声で「リオがしゃべっている!」と思いましたね。

中島
ひと言しゃべっただけで、宿業を背負った人の声が出ていました。だからこの3人は、僕たちの作品を、僕達がこの人に演って欲しいと思ったメンバーです。

――そんな『プロメア』の特徴をひと言で表すと?

今石
若林(広海)プロデューサーが言っていたのは、「スーパーリットメガアクションレスキューヒューマンドラマ!」でしたっけ? メチャクチャ熱い人間ドラマという意味らしいです(笑)。

中島
長いよ! 「ヒューマンドラマ」が言いたいとしたら、ずばり「人間大炎上ドラマ」、縮めて「にんじょう」ですね。

今石
引き算しすぎですよ(笑)。

――最後に、久々のお2人のタッグ、しかも劇場アニメということで、期待しているファンにメッセージをお願いします。

今石
ただただ、観て気持ち良くなって欲しいです。ベタですが、全部が見どころです。
「引き算」で削ぎ落としたからこそのフル活劇になっていますし、そういう意味では見応えも十分だと自負しています。
うんざりするぐらいこだわっていますので、そこは信用して、ぜひ劇場に観に来てください。

中島
『プロメア』はある種、我々の総決算でありながら、次のスタートでもあると思っています。
初めての人も楽しめるし、過去の作品のファンの人なら「待ってました!」という部分と新しい部分両方が楽しめますので、ぜひ老若男女、ペットさんも連れてきていただければ。映画館にペットは無理ですけど。

今石
そうなんです、今回は完全に全年齢向けです。

中島
『キルラキル』みたいに「ハレンチ〜!!」ということはないです。大丈夫です。
そして、引いても引いてもあふれ出る「過剰さ」というものを、劇場で堪能してください。

映画『プロメア』
【キャスト】
松山ケンイチ 早乙女太一/堺雅人
佐倉綾音 吉野裕行 稲田徹 新谷真弓 小山力也 小清水亜美 楠大典 檜山修之 小西克幸
【スタッフ】
原作:TRIGGER・中島かずき 監督:今石洋之 脚本:中島かずき キャラクターデザイン:コヤマシゲト 美術監督:久保友孝 色彩設計:垣田由紀子 3DCG制作:サンジゲン 3Dディレクター:石川真平
撮影監督:池田新助 編集:植松淳一 音楽:澤野弘之 音響監督:えびなやすのり タイトルロゴデザイン:市古斉史
アニメーション制作:TRIGGER 製作:XFLAG 配給:東宝映像事業部
(C)TRIGGER・中島かずき/XFLAG

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