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「子連れ出勤」後押しの発想に「対赤ちゃん時間」の見積もりの甘さ ――育児現場は非常事態!

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2019年02月18日 12:01  MAMApicks

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「子連れ出勤」の話題がまだ記憶に新しい方は多いだろう。1月半ばに少子化対策担当大臣が子連れ出勤の様子を視察し、政府として後押しする方針を出したことに対し、多くの子育て世代が違和感を示した。当初SNSがざわつき、それらの反応を新聞等が次々に報じた。

■それは果たして「昭和の頭の硬いオヤジ的発想」なのか?
「子連れ出勤」というスタイルが、選択肢のひとつとして排除されることなく認められること自体は柔軟性という意味でおおいに歓迎したい。でも、それが可能かどうかは別の話だ。「子連れ出勤」が多くの親たちを救う解決策か、と聞かれたら、それは明らかにNOだ。

子どもがそばにいる状態で仕事をするには、子どもの性格、健康状態、発達段階、親の仕事の環境、仕事内容のすべてがラッキーな側に傾いている必要がある。すべて、努力して手に入れられるものではなく、「たまたま」どうか、という種の要素ばかり。該当する人や時期は極めて限られているだろう。


ところが、育児をディープに経験していない多くの人は「赤ちゃんのめんどうをみながらでも仕事はできる」って思ってしまいがちだ。これは「昭和の頭の硬いオヤジ的発想」と思われがちだけれどもそんなことはない。子どもが乳児期の男性でも日中会社にいて主に妻が育児をしていたらたぶんそう思う。女性だって、育児に直面していない人は、たぶんそう思う。

実のところ、私自身も子どもを生んで育児がリアルに始まるまで、なんとなく「どうにかなるかな」と思っていた。

実際は、ほんとうに、無理だった。

■人間の赤ちゃんは本当に手のかかる存在
出産当時、私たち夫婦はふたりともフリーランスで自宅が仕事場という生活をしていたため、仕事と日常生活に赤ちゃんと育児が追加される「だけ」のはずだった。双方の実家ヘルプはなしだったからそれなりに時間が必要だとは思っていたものの、夫と私ふたりの手があればまぁ、なんとなく、育児と仕事もそこそこどうにかなるんじゃないか、という漠然としたイメージのまま産後に突入してしまった。

自宅が仕事場で仕事道具がパソコンだと、通勤はないし、着替えや身支度すらしなくてもパソコンの前に座れば仕事ができる。赤ちゃんが泣いて迷惑をかける同僚もいない。いっけん、仕事なんか余裕で出来そうに思えるだろう。

ところが、人間の赤ちゃんて、本当に手のかかる存在だったのだ。

起きている間はほぼたえずだっこ要求ですぐに泣き出す。授乳している間は静かだけれど親は身動きできない。ひとりでは寝入ってくれないし、寝たとしても短時間ですぐに起きる。これが昼夜なく延々と続き親の睡眠時間は極限まで減っていく。

こんなふうに人間の赤ちゃんはほぼ24時間、うすく長くだらだらと常に大人を必要とし、決して離れられない。これが「ワンオペ」がいかに人の心と体力を限界まで追い込むか、という現実だ。

さて、私たちは夫婦ともに家が仕事場だった、ということは、「ツーオペ」だから余裕じゃない? 交代で赤ちゃんのめんどうをみればいいでしょ? ということになる。たしかにそのとおりで、赤ちゃんに関しては交代体制が取れる。

■ふたりで同時に仕事ができない!!
しかし、ゆるゆると私も仕事に手をつけ始めて間もなく直面したのは、「ふたりで同時に仕事ができない」というあまりにもシンプルな現実だった。

私がパソコンに向かいたい間は夫が赤ちゃん担当でだっこやら何やらしていなければならないし、夫がパソコンに向かいたい間は私が赤ちゃん担当をすることになる。今まで当たり前に同時に仕事ができていたのに、「そっちが仕事したらこっちは仕事できない!」の無限ループに陥った。

ふたりで同時に仕事が出来ないと、ふたりでこなせる仕事量は激減する。産前にふたりで、2〜2.5人分/1日の仕事をこなせていたとするなら、ふたりで1〜1.5人分/1日の仕事しかこなせない。さらに、赤ちゃんに時間を寸断されるから作業効率はひどく落ちる。

フリーランスは仕事量の減少が即減収だし、産休育休の恩恵は受けられない。12年前当時の保育園事情は、保活という言葉すらなくフリーランスの身分には厳しかったし、他の事情もあって保育園は検討の圏外に。

これはまずい、赤ちゃんは、こんなにも大人ひとり分の時間と身体をほぼ24時間分占有する存在だったのか……。

■ふたりで時間を確保して
夫婦ふたり分の時間をセットにして1日48時間。これをどうやって再配分しても、仕事時間を減らさないで済む方法はなかった。だって赤ちゃん用にふたりで24時間必要なのだ。残りの24時間をさらにふたりで分け合って、仕事も家事も自分の生活も仕事もまわさなければならない。

これはもう、分担がどうこうの問題ではなくて、赤ちゃんが必要とする絶対的な時間が、予測に反し相当長かったっていうことなのだ。

もちろん、第3の大人の手である保育環境が1日8時間あるとすれば、ふたりの持ち時間はプラス8時間になる。だいぶ助かるとはいえ、たった8時間。しかもその時間を親は自分の睡眠や家事ではなく仕事にあててしまうから、24時間体制の赤ちゃんに張りつく生活面と身体面の圧迫感は変わらないだろう。

だから、保育園があれば万事解決なんてことはなくて、男女ともに産前と変わらぬ時間の使い方ではいられない、というのが基本だと思っていた方がいい。

男女どちらか一方が、赤ちゃん用の24時間をまるごと担当すれば解決する、というのも幻想だ。赤ちゃんに24時間占有されたままこなせることなんて限られていて非効率で、ひとりで100%請け負ったら身体に無理がいくかストレスでつぶれるかどちらかだ。

保育環境があろうが、一方が専業だろうが、とりあえず産後1〜2年の一番キツイ時期は、ふたりの時間を大幅に組み替えて乗り切る必要がある。

赤ちゃんへの愛情って簡単にわき出るけれど、赤ちゃんのための時間ていうのは努力しないと確保できない。仕事時間を引き算する覚悟も含め、時間の用途を振替えて対赤ちゃん用の時間を確保するしかない。

■「赤ちゃん用時間の見積もりミス」ととらえる
「子連れ出勤」が可能だとか、女性がひとりで育児家事を吸収できるっていう幻想が生まれるのは、ジェンダー視点の欠如という以前に、シンプルに作業量に対する時間の見積もりが甘いってことだと思うのだ。

本当は、ひとりじゃ育児なんて無理なのに、多くの場合、産後の育児期がそこまでの緊急事態だとはあまり気付いていない。

他国と比べて日本の男性が家事育児時間が少ないことがよく指摘されるけれど、注目すべきは、家事育児時間が少ないことの裏にある「小さな子どもがいるのに仕事の時間が長いまま」であることの方だと思うのだ。

6才未満の子どもがいる男女の生活時間を国際比較したデータ(※)を見ると、確かに日本の男性の家事育児時間は短い。同時に、仕事時間が他国よりも目立って長いのだ。他国の男性は家事育児時間が日本の男性より長い分、仕事時間はその分短いことが数字に出ている。
※参照データ:総務省統計局「平成23年社会生活基本調査」

そこには、「仕事に影響を与えてまで男が育児家事の時間を確保する必要はない」という見積もりミスが見える。本当の緊急事態に接したととき、人は「忙しくて時間がないからできない」と引っ込めずに、「時間がないないから仕事を減らして時間を作るしかない」と発想するものだろう。そう発想できるほどには、育児現場が緊急事態だとは気付いていないのだ。

緊急度の高さに気づいていないのは、おそらく男性だけでなく、女性も。

女性が出産をきっかけに育児家事に専従化しているケースが多いから、専従者がひとりでできる(やるべき)分量だと思い込みやすい。これは完全な見積もりミスなのに。さらに収入が減ったら困るという恐怖感が、妻のみならず夫の仕事の仕方まで変えることにブレーキをかける。

■「思いやり」じゃなくて「正しい見積もり」と「リスク管理」
「子連れ出勤」の問題を「昭和の頭の硬いオヤジ的発想」と断罪するだけでは、世の中は変わらない。男女年代を問わず「赤ちゃん用時間の見積もりミス」としてとらえる機会にぜひして欲しい。人間の赤ちゃんて、本当に、ひとりで育てられるほど楽じゃないっていう常識に変えないと、ふたりで時間を作るっていう危機感も発想も生まれない。

仕事が重要なのもわかっている。でも家庭も産後の育児期は一番厳しい緊急事態なのだ。対赤ちゃん時間を正しく見積もりして、ふたりの時間を本気で組み直さなければ乗り越えられない。これはパートナーの負担への「思いやり」じゃなくて、家庭内の「リスク管理」だ。

もちろん、時間を作るのは楽じゃない。でも、例えば「大切な飲み会」なら定時で仕事を切り上げるのと同様に、1〜2週間に1度でいいから「大切な家庭の緊急事態」のために定時帰りして戦力になれないだろうか。それが無理なら、例えば毎日たった15分仕事時間を減らすことからでもいい。1日15分でできる家事はある。

金銭の不安には、会社員ならば、入金ゼロの恐怖を感じずに時間を捻出することができる育児休業だって用意されている。育児休業は、休む人に会社が給与を払っているわけではない。家庭内の育児で身体と時間を必要とされている人が、会社で働けない代わりに雇用保険が給付金をくれる制度だ。だから、少なくとも、金銭的に会社に遠慮する必要はないということは知っていてほしい。

夫婦ふたり+第3、第4の手で、赤ちゃん用の時間をどうにか確保する手段を、どちらかがひとりで考えるのではなく、ぜひ、ふたりの問題として考えて欲しい。ふたりの子どものことだから。

狩野さやかの著書『ふたりは同時に親になる 産後の「ずれ」の処方箋』が、ご好評をいただき増刷(第3刷)となりました。多くの子育て中の皆さんに読んでいただけたらうれしいです。

狩野さやか
Studio947デザイナー・ライター。ウェブ制作と共に、技術書籍やICT教育関連記事を執筆し、「知りたい!プログラミングツール図鑑」、「ICT toolbox」では、子ども向けプログラミングの情報発信に力を入れている。育児分野では、産後の夫婦の協業がテーマの著書『ふたりは同時に親になる 産後の「ずれ」の処方箋』があり、patomatoを運営しパパママ講座の講師も務める。2006年生まれの息子と夫の3人暮らし。

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