「オンナ芸人のブスいじり」が消えつつある今、バービーがニューヒロインになりそうな理由

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2019年02月22日 00:02  サイゾーウーマン

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サイゾーウーマン

バービーインスタグラムより

 羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな有名人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます

<今回の有名人>
「オンナ芸人の人ってどこか自信がないのに、プライドはあるんですよ。もっと素直に愛されよう!」フォーリンラブ・バービー
『さんまのお笑い向上委員会』(フジテレビ系、2月16日)

 現在放送中のドラマ『人生が楽しくなる幸せの法則』(日本テレビ系)は、もともとのタイトルが『ちょうどいいブスのススメ』だった。相席スタート・山崎ケイの同名エッセイをドラマ化したものだが、SNSで「ちょうどいいブスとは何事か」と炎上。山崎の言う「ちょうどいいブス」の定義が「酔ったらいける」であったことから、「そこまでオトコにへりくだる必要があるのか」「オンナはオトコにジャッジされるべき存在ではない」といった怒りが噴出した。このままでは視聴率にいい影響がないと判断したのだろう。日本テレビは、ドラマのタイトルを変更すると発表した。

 オンナ芸人にとって、ブスはある意味一番簡単に笑いを稼ぐネタだったが、こういった炎上を恐れてだろう。バラエティー番組で、はっきりしたブスいじりを見ることはほとんどなくなった。ジェンダーとして考えれば適切な方向だが、こうなると現場にいるオンナ芸人は、ブスやモテない以外の新しいキャラを早急に見つけないといけない。今、そこから頭ひとつ出ているのが、フォーリンラブ・バービーではないだろうか。

 今から4年ほど前『金曜 ロンドンハーツ』(テレビ朝日系)で、「ホントはイイ女GP(グランプリ)」という企画が行われたことがあった。司会のロンドンブーツ1号2号・田村淳が、独身のオンナ芸人やグラビアアイドルの家を訪れ、料理や掃除、整理整頓が行き届いているかをチェックし、もてなしの心地よさを競うといった内容だった。バービーはこの企画に参加し、淳から高評価を受けていたが、その一方で「結婚願望がない」「結婚していないイコールかわいそうという扱いに納得がいかない」「自分をブスだと思っていない」といった具合に、「オンナ芸人はブスで結婚できない」という既存のフォーマットに異を唱えている。

 2013年に『ナインティナインのオールナイトニッポン』(ニッポン放送)に出演したオアシズ・大久保佳代子によると、オンナ芸人の中で一番性欲が強いのはバービーだそうで、純粋なマッサージに行くときも“何か”を期待して、性欲が強そうなマッサージ師を探すそうだ。マレーシアに旅行に行った際は、インド人のタクシーの運転手に口説かれて、深い仲になったらしい。もちろん大久保は芸人なので、話を盛っている可能性はあるだろう。しかし、外国人男性もOKというキャラは、これまでなかなかいなかっただけに、ビジネスチャンスと見ていいのではないか。

■バービーの行動は視聴者からのクレームがつきにくい

 男性に対してアグレッシブなのは、今も変わっていないようだ。2月16日放送の『さんまのお笑い向上委員会』(フジテレビ系)に出演したバービーは、ガンバレルーヤ・よしこに「男漁りがひどくて、オンナ芸人の品を下げている」と指摘されていた。バービーはSNSでダイレクトメールを送ってくる一般人とデートをし、会ったその日に“ぺろんちょ”(おそらく性行為の意味)したことがあるらしい。SNSが発達した今、有名人と一般人の間でトラブルがあった場合、リスクが大きいのは知名度高い有名人の方である。そのリスクを考えたのだろう、オトコ芸人は「一般の人でしょ?」と驚き、オンナ芸人は「オンナ芸人がみんなそんなふうに貞操観念が緩いと思われたら、困る」とバービーに抗議した。バービーは「オンナ芸人の人ってどこか自信がないのに、プライドはあるんですよ。もっと素直に愛されよう!」と反論していた。

 会ったその日に“ぺろんちょ”する考えの好き嫌いは別として、バービーの行動は視聴者からのクレームがつきにくいだろう。なぜなら、バービーの行動で傷つく人はいないから。バービーはテレビで彼氏がいると明言していないし、独身である。そのため、性に奔放であっても、誰にも迷惑をかけていないことになる。

 女性がよく知らない人と簡単にセックスするなんてと眉を顰める人もいるだろう。安全上の問題や、セックスを長期的に交際するための駆け引きとして使うという観点で言えば、危険な決断かもしれない。しかし、「女性だから」貞操を守らなければならないと考えているとしたら、それは女性の性的な自由を認めない、もしくは女性は性的な経験が少ない方がいいという女性差別にあたる。なので、クレームがあったとしても、「ちょうどいいブス」ほどの盛り上がりにはならない。

 それにしても、テレビは炎上の理由がいまいちわかっていないと思わされることがある。

 性欲が強いキャラで売っているからだろう。バービーはネタのふりをして、陣内智則にキスをしたり股間に顔をうずめ、突き飛ばされてオチを迎えるネタをたびたび披露する。陣内もバービーも視聴者も、同意の上に行われたネタであることは承知しているだろう。けれど、私に言わせるのなら、これもアウトである。もし男性タレントが女性タレントに同じこと、つまり無断でキスをしたり、股間に顔をうずめたりしたら炎上必至のはずだ。女性に差別をしてはいけないのではなく、女性(男性)にやってはいけないことは、男性(女性)にもやってはいけないのだ。放送の最終決定権を持つテレビ局がそういった根本的な部分を理解していないために、表面上は女性に気を使っているが、炎上要素を含んだネタが繰り返される羽目になっている。

 性犯罪でも毎回女性が悪く言われ、ジェンダー観の過渡期を迎える日本で、性欲の強いキャラは実は立ち回りが難しいポジションだ。そこをうまく切り抜けて、性を謳歌する独身のニューヒロインとなってほしい。

仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。
ブログ「もさ子の女たるもの」

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