犬蹴り動画の炎上に、松本人志「罪と罰のバランスが悪い」。実は他人事じゃない「瞬間動画」の怖さ

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2019年02月23日 01:00  citrus

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出典:「フジテレビ ワイドナショー」公式サイトより

『しらべぇ』によると、(偶然近くにいた人が隠し撮りした)散歩中に犬の腹を蹴り上げる飼い主の動画がSNSに投稿されて炎上。この件を受け、2月17日放送の『ワイドナショー』(フジテレビ系)でコメンテーターを務めるダウンタウンの松本人志(55)と、社会学者の古市憲寿(34)が、以下のような持論を述べた……らしい。

 

「身内がしてたら、なにしてんねんと言う。みなさんと同じ意見なんですけど、ただ罪と罰のバランスが悪くないかと。ここまで全国ネットでやられて、全国民からボロクソに言われてしまうのか。気持ちは同じだけど、ぼくはそこまで言えないな…。

正義感ブームに違和感を感じる。(中略)ぼくもそこそこ正義感はあるけど、そこまで正義感ないから怖いわ、なんか。

普段、動物を可愛がっている芸能人が叩かれるならアレなんですけど、顔を伏せていると言えども一般の方だし。悪いことで気持ちは一緒なんですけど、病気に対してお薬が強すぎへんか、と」(松本人志談)

 

「正論は誰にも批判できない。否定できないからこそ、正論を振りかざす時は謙虚にならないといけないのに、燃え上がるのはどうかと思う」(古市憲寿談)

 

SNSで拡散された張本人(飼い主)は「これはしつけ。過度に怒りすぎることもありますが、その分かわいがっています」と反論しているという。いっぽうで、動画を発見した直後、その風景から地図アプリを駆使して現場を特定し、飼い主のもとへと駆けつけた広島の動物保護団体によれば、飼い犬だったラブラドールレトリバーは膝に傷があり、重度の膀胱炎を患っていたとも聞く。実際にその映像をチェックしてみたら、たしかにひどい仕打ちであった。ああも無駄な動きがない蹴りを高い頻度で浴びせ続けていたら、そりゃあ膀胱にも異変をきたしてしまうだろう。

 

結局のところ、ラブラドールレトリバーは、この動画をきっかけとして然るべき所(=前出の動物保護団体)に保護され、「一件落着」のかたちで収まりはしたものの、そうやって「正義感」の御旗のもとになんでもかんでも写メにおさめ、証拠画像として安易にネット上へと垂れ流しては袋叩きにする昨今の風潮には、私もいささかな不気味さ、恐怖を感じてしまう。もし仮に、仮にである。これが「なにかの誤解」であったら……たとえば愛犬の足元に危険な毒虫が這っていたため、とっさに蹴りを入れて安全な場所に避難させた……みたいなシチュエーションだったとすれば(まあ、本案件に関してはほぼ100%あり得ないが)……それはそれで、糾弾した側にとっては取り返しのつかない重大な過失となってしまうのではなかろうか。

 

過去にこんなことがあった。

 

代官山にある、ペットOKのカフェで原稿を書いていた。すると、飼い主の足元にいた一匹のダックスフンドが、私のほうに近づいてきて、いきなり私のくるぶしあたりに噛みついた。「痛っ!」と、思わず私は叫び声をあげ、反射的にその犬に蹴りを入れた。20cmほどしかない小さな振り幅ではあったが、足の甲がモノの見事に犬の腹を直撃する、じつに効果的な蹴りだった。犬じゃなくサッカーボールだったら、さぞかし綺麗なパスが通っていたことであろう。ダックスフンドは、キャンキャン吼えながら私のまわりを走り回っている。店内の視線がいっせいに私のほうへと集まる。「ワンちゃん、かわいそう…」「信じられなーい!」……と、私に向けた非難の声が、あちこちから漏れ聞こえてくる。さらには事もあろうに、飼い主の女性がその現場に走り寄ってきて、犬の頭をよしよしと撫でつけながら、私の目をキッとにらみつける。ものすごく腹が立った。私はこの犬にくるぶしをけっこうな強度で噛まれたのだ。まぎれもない被害者なのである。「まいったなあ、もお……どーすりゃいいんですか、このワンちゃん?」と、ひきつった笑顔をつくり、噛まれた足首をぷらぷらとでもさせときゃいいのか? お店がペット同伴を許しているのだから、ワンちゃんだろうがネコちゃんだろうがイグアナちゃんであろうがタランチュラちゃんであろうが、連れてくるのはかまわない。むしろ可愛いと目さえ細めてしまうこともある。が、自分に向かって攻撃をしかけてきたならば、話は違ってくる。反撃するのが当然ではないか! 自慢のワンちゃんを公衆の面前にさらすのは勝手だが、その公衆からの迫害を避けたいのなら、最低限の迷惑をかけないよう注意を払うのが飼い主のつとめではないのか? もし、人間の赤ちゃんがナイフ片手によちよち歩きで私に近づいてきて、不意に私を刺そうとしてきたら、やはり私は迷わずその赤ちゃんを突き飛ばす。赤ちゃんにナイフを持たせ、野放しにするような教育しかしていない親が悪いのである。

 

まだスマホも普及していない15年近く前のエピソードなので、さすがにSNSに拡散……までには到らなかったのだけれど、万一、↑と同じような目に今日遭って、周囲の人たちからその「蹴りを入れた瞬間の画像だけ」を切り取って公開され、ネット上で人非人扱いされた日には……さすがの温厚で事なかれ主義な私も、持ちうる力のすべてを駆使して戦うくらいの気概はある。自身の正義を貫きとおすならば、それなりの覚悟と責任、慎重さをもって遂行してほしい……ということだ。ところで、前々から不思議に思えてならないんだが、ネコに学ラン着せたり犬をズタ袋に入れたりするCM──アレは問題にならんのか? コッチは「可愛い(ハートマーク)」で大丈夫なのか?

このニュースに関するつぶやき

  • 犬の腹を蹴り上げるなんてのはただの蛮行でしかなく許されることじゃないんだけども、私自身が犬がダメなのでなんとも言えない。特に後半の、犬にかまれた筆者のほうが非難を受ける行は、
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