ONE OK ROCK、『Eye of the Storm』が日本の音楽シーンに与える影響 チャート1位機に考察

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2019年02月23日 14:21  リアルサウンド

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参考:2019年02月25日付週間アルバムランキング(2019年2月11日〜2019年2月17日・ORICON NEWS)


 すごい。と同時に、これは多面的な問題提起の作品になるのではないか、とも思いました。


(関連:ONE OK ROCKが国内外で続けるあくなき挑戦 カテゴライズ超越した『Eye of the Storm』を聴いて


 ONE OK ROCKの『Eye of the Storm』。約19.7万枚という数字で今週のチャート1位に輝いた作品です。そして2位のあいみょん『瞬間的シックスセンス』を挟み、3位には輸入盤『Eye of the Storm』もランクイン。こちらは約2.8万枚のセールスなので、このニューアルバムは発売一週間で22.5万枚を売り上げたことになります。


 見事ですね。でも正味な話、日本での売上は前作のほうが少しだけ上でした。2年半前の『Ambitions』は初週で23万枚、輸入盤が3.7万枚。ただし若者を中心に音楽リスナーがどんどんサブスクに移行していることを思えば、売上枚数だけでバンドの勢いを測ることは到底できないわけで。むしろ今の時代、20万人以上に「フィジカルが欲しい!」と思わせること自体が驚異的。そのうえで、作品を入手した日本のファンがこの音を聴いていったい何を思うのか。そこが興味深いのです。


 『Eye of the Storm』は、こと日本のロックバンドに親しんでいる人にとって衝撃的なサウンドです。“ロック”と言われてイメージできるエレキギターの音はほぼ聴こえてこないし、ギターソロなど皆無。生ドラムの音も多少ありますが、基本は打ち込みのビートとシンセベースで構築されている。つまり、今のアメリカの主流。そこに意識を向けていたのは前作も同様ですが、今回はもう振り切り方が違う。「これがアメリカで奮闘する日本のバンドだ」と紹介しても「え……これはロックバンドの音ですか?」という人がいるかもしれない。これをバンド名義で出すのはかなり勇気のいることだったと思います。


 ボーカルのTakaが表紙を飾る音楽雑誌『MUSICA』2019年3月号では、「ロックバンドである以上、バンドサウンドに重きを置かない形で曲を作るのは大変な作業」だと前置きしたうえで、冷静に時代を見つめている彼のインタビューが読めます。いわく「ロックが死んでいる状況の中で、自分たちが日本でやってるロックをアメリカで掻き鳴らしていいのかといわれると、そこに対しては相当な疑問がある」。そして「ロックを生き返らせたいとは思っている」、その方法論がこのアルバムなんじゃないか、と語っています。つまり、大衆の興味を惹くためにはロック的なアプローチをどんどん減らさなきゃいけない。そのチャレンジをしながら、「ライヴではロックバンドとして見せていく」。それこそがアメリカで売れているバンドの基本パターンなのだ、という話です。


 ギター主体の音楽が元気な日本ではピンと来ないですよね。それを最も日本で人気のあるバンドのひとつであるONE OK ROCKが教えてくれている。本気で「ちがうんだよ」と示し始めた。そんな作品を今現在20万人以上のリスナーが支持している。これはいったいどんな未来につながるのでしょうか。


 ONE OK ROCKをきっかけに、海外の最新チャートに開眼していく人は多々いるでしょう。また日本の現状が違うからこそ、ロックバンド=生音主義をより頑なにする人もいるのかもしれない。どちらのきっかけにもなりうるのが『Eye of the Storm』。また、頻繁に出てくる日本語の歌唱を“USシーンで注目を浴びるアジアン・カルチャー”の一環として捉えれば、韓国語のラップを積極的に押し出しているK-POPとの繋がりも見えてくる。小さなムラ社会の出来事ではない、20万枚超えのセールスだからこそ、広がり方は無限大です。この作品をどう受け止めるか。これは日本の音楽の未来に関して、とても重要だという気がします。(石井恵梨子)


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