容姿や年齢より「使った金額」! ホス狂いたちが繰り広げる、担当ホストのエースをめぐる闘争

1

2019年02月23日 20:02  サイゾーウーマン

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

サイゾーウーマン

写真

 ホストにハマりすぎている女たち――通称“ホス狂い”。「ホストに多額のカネを貢ぐ女」というイメージだけが横行する中、外の世界からはわからない彼女たちの悲喜劇がある。「ホストにハマらなかったら、今頃家が建っていた」という、新宿・歌舞伎町では名の知れたアラサー元風俗嬢ライター・せりなが、ホス狂いの姿を活写する。


 今日は、ホストクラブがまだ開いていないので、代わりに近所のロイヤルホストからこの原稿を書いている。

 前回、OLがホストにハマって風俗嬢になり、月に200万円を使うようになるまでの道のりについて話した。しかし、そのことについて、ひとつ補足をしておきたい。この200万円というのは、全部が全部「担当への純度100%の愛」でなしえたと断定することはできない。さまざまな要素が課金を加速させている側面がある。その一つが「女同士の戦い」だ。

 今日はこの不毛とも言える闘争について書いてみたい。

 好きなホストに会いにホストクラブへ足を運ぶのに、誰と戦うというのか。それは、「被り客」である。「ライバル」と読む。嘘だ。そのまま「かぶりきゃく」だ。

 この「被り」とは「指名がかぶっている」ことを指す。つまり、被り客とは「同じホストを指名している、ほかの女性客」のことである。もちろんこれは主観での言葉なので、被り客側から見れば、自分自身が被り客ということは忘れてはならない。全員が全員、お姫様(ホストクラブで、客は「お姫様」と呼ばれる)であり、にっくき被り客なのだ。

 ホス狂いたちは、営業時間以外にも、日夜、この被り客と場外乱闘を繰り広げている。そのフィールドは、インターネット空間かリアルの場所かは問わない。試しに、Twitterで「被り客」と検索してみてほしい。……どうだろうか。それはそれは、恐ろしい世界が広がっていただろう。

 もちろん私も例に漏れず、被り客は嫌いだった。被り客も私が嫌いだったはずだ。「殺してやる」と間接的に言われたこともある。私の知人モエ(仮名)は、一緒にホストクラブに行ったとき、被り客にグラスを投げて追い出されていた。私もついでに追い出された。

 夜職の人が集うネット掲示板「ホスラブ」には、お客さんの名前や勤務先を特定するような書き込みが投下される。まったく物騒な話である。

 ほかのお客さんなんて、気にしなければいいのに。そう思うかもしれない。私も最初はそう思っていた。なぜ被り客に敏感になるのか。なぜ、私たちは被り客を攻撃するのか。一見無益な女同士の争いを展開するのか。リアルでも、ネットでも。単なる憂さ晴らしではない。実は合理的な理由があるのだ。

 それは、担当ホストのお客の中で一番お金を使い、大事にされる「エース」を目指すならば、ほかのお客さんに勝たなければいけないからだ。つまり、ライバルがいてこそ、エースは存在できる。彼女らに勝利してこそ、初めて1番になれるのだ。それは孤独なタイムアタックではない。各者一斉スタートで1位を競うレースである。ただし、たまに圧倒的経済力をもって乱入してくる選手もいる。

 レースに勝ちたければ、現状認識が大切だ。もし、自分がエースでないとしたら、まずは己の立ち位置を確認する必要がある。自分の上には何人の被り客がいるのか。あといくら使えば「トップ=エース」をとれるのか。常にそれを脳内にマッピングしながら走るのだ。

 それを再現してみたのが、下の図だ。昔、脳内メーカーがはやったが(ちなみに私の脳内は全て“無”だった)、それと似たような試みだ。震えよ、これがホス狂いマッピングだ。

 この図は、横軸をホストへ使う金額、縦軸をホストからどれくらい大事にされるか、つまり良い待遇を受けるか、で示したホス狂いのマッピングである。縦の糸はホスト、横の糸は私(の頑張り)、と考えてもらえればわかりやすいだろうか。

 中心の金額は0ではないが、図の左側は要するに「お金を使っていない人」と認識して問題ない。お金を使っていない人の存在は一旦忘れて説明しよう。

 前回書いたホス狂いの階段、というのは、この図の中心から右上へ昇っていくことを指す。使う金額が上がるにつれ、担当ホストから大事にされるようになる。お金を使っていても、ホストへの態度が悪ければ対応も悪くなり、「痛い客」になる。そこそこの金額で、そこそこの接客を受けているお客たちは「エンジョイ勢」と呼べるだろう。この人たちが、実は一番幸せなのかもしれない。マラソンで言えば自分のペースでのんびり歩いている人たちだ。

 ホストクラブの世界は「一番お金を使っていて」、「一番大事にされている」お客が一番偉い、という価値観で成立している。たまに、エースと結婚するホストがいる。それは「一番偉いエース」のさらに先だろう。ここに到達するのは、めちゃくちゃ難しい。あるかどうかもわからない。

 コロンブスはインドだと思ってアメリカに到達したが、エースもきっと同様である。ついにゴールへ到達したと思っても、また別の大陸なだけのことがほとんどだ。とはいえ、ホストクラブの中では、お金を使えば容姿や年齢に関係なく、一番のお姫様になれる。ある意味ではわかりやすい価値観だ。そして、一番のお姫様には1人しかなれないけれど、1人だけではお姫様になれないのだ。

 余談ではあるが、店側もそういったホス狂いの心理を熟知していて、1日の営業終わり間際に、その日の売り上げナンバーワンのホストが歌を歌う「ラストソング」という制度を導入している。冷静に考えなくても謎の奇習であるが、「ラストソングを、私の横で歌ってほしい」というホス狂いたちの気持ちに火をつけ、レースを盛り上げるのだ。ちなみに、歌舞伎町のホストクラブで一番多く歌われている曲はKinKi Kidsの「愛のかたまり」だという。

 少し話がそれたが、要するにホス狂いの世界で自分がどの位置にいるかということを確認するためには、嫌いな被り客のことも注視しなければならないのだ。楽しみたくてホストに行っているのに、なんとも皮肉な話である。

「私たち、こういう関係じゃなかったら友達になれたかもね」

 これは先ほどのモエが、バーでたまたま一緒になった被り客のお姉さんに実際に言われた台詞だ。まるで戦場のような価値観である。

 まぁ、雲の上にある見えないゴールに向かって1人で走り続けるのはつらいから、ときにはライバルも必要なのかもしれない。願わくば、ゴールには担当ホストが立っていてほしいものである。

せりな
新宿・歌舞伎町の元風俗嬢ライター。『マツコが日本の風俗を紐解く』(日本テレビ系)で、 現役時代のプレイ動画を「徹底した商業主義に支配された風俗嬢」 と勝手に流されたが、 ホストに貢いでいたのであながち間違いではない。その他、デリヘル経営に携わるなど、業界では知られた存在。 現在も夜な夜な歌舞伎町の飲み屋に出没している。
Twitter

【バックナンバー】
第1回:歌舞伎町の元風俗嬢が語る、愛しき“ホス狂い”たち――「滑稽だけど大真面目」な素顔
第2回:担当ホストに月200万円……OLから風俗嬢になった女が駆け上がった「ホス狂い」の階段

 

このニュースに関するつぶやき

  • 女性客の間で火花が散っているのですね。
    • イイネ!11
    • コメント 1件

つぶやき一覧へ(1件)

ランキングライフスタイル

前日のランキングへ

ニュース設定