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「子育てに手遅れはない」がんばる親たちへの“最高の子育て”論【高橋孝雄先生インタビュー】

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2019年02月26日 10:31  ウレぴあ総研

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ウレぴあ総研

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慶應義塾大学医学部小児科教授の高橋孝雄先生が、小児科医として36年間、病気の子どもとその保護者によりそった経験の集大成を書いた初の著書『小児科のぼくが伝えたい 最高の子育て』が好評、話題を呼んでいます。

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本のなかの「子どもを信じて待てば、いつか必ず持って生まれた才能は花開く」というメッセージは、正解を求めて右往左往しがちな現代のママたちにも確実に届いているようです。

とかくないものねだりをしがちな私たちですが、「トンビがタカを産むことはない」と高橋先生。それはあきらめではなく、最初からそこにある可能性を見つけ直す作業とも言えるかもしれません。

ですが、子育てINGのママたちには不安がいっぱい。事前に現役の子育てママたちからリアルな悩みを集めて、高橋先生にうかがってきました。インタビュー形式でお楽しみください。

■“子どもの病気を治したければ、おかあさんを治しなさい“

――ご著書を読ませていただきました。私自身も子育て中なのですが、「子育てに手遅れはない」、「子どもが好きなのは、いまのおかあさん」など、励まされるような言葉があふれていて、最初の子が生まれた時にこんなお医者さんが身近にいたらよかったのにと思いました。

高橋孝雄先生(以下高橋)「いなかったですか? そこら中にいますよ(笑)」

――本当ですか?(笑) 病院っていうところは子どもを持つ親にとっては、緊張する場所なのですよね。なにか怒られるんじゃないかって身構えてしまいます。

高橋「そうですね、自分が病気の時は患者さんだけど、子どもが病気になって連れて行く時は、保護監督の義務のある保護者ですから、なにやってたんだって言われる、あるいは、なんでこのくらいで連れて来るんだって言われる、と思うのかもしれないですね」

――そうなんです。わかっていただけてうれしいです。先生のご著書の前書きに書かれていた、“子どもの病気を治したければ、おかあさんを治しなさい“という言葉が印象に残っています。

高橋「あれはぼくの言葉ではなく、ぼくが最初に教わったことなんです。もう100年の歴史がある言葉で、どんな小児科医も最後には悟るわけです。子どもを治すのはもちろんだけど、おかあさんを治さなくてはいけないのだなって。ぼくもようやく気づいたんですよ」

――そうなんですね。それを実践されているのは素晴らしいと思います。

■現代ママたちは正しい情報にふりまわされてしまっている!?

――実際に、外来に来られるママたちと接していて、なにか感じられることはありますか。

高橋「私のところは小児神経の外来なので、発達が遅れているとかてんかん発作があるとか自閉症やADHDではないか、ということで来られる方が多くいらっしゃいます。

ですから、通常の病院とは若干事情が異なることもありますが、私が感じていることは、世の中に正しい情報が多すぎるということですね」

――正しい情報ですか?

高橋「はい、よく“世の中には間違った情報があふれている”といいますが、ひとつひとつ見てみると、そうでもないんですよね。むしろ正しい情報がネットや本の中にあふれていることがおかあさんのプレッシャーになっているんですね」

――なるほど〜。

高橋「間違った情報であれば、修正すればいいのですが、正しい情報だとそうはいかないですよね。

それに、正しい情報があなたにとって役立つ情報とは限らないんです。また、正しいからといって、子どもにやらせていいとは限らない。

そこが、現代の子育てのつらいところなのではないかと思いますね。多くのおかあさんたちは、正論をかざされたら、それをやっていない自分は間違っていると指摘されたと感じてしまうのでしょう」

――正しい情報に振り回されてしまうのですね。

■子育てに「手遅れ」はない

高橋「それから、少子化で「子は宝」「子育てや教育環境が大事」ということが言われていますよね。それはその通りで、事実です。

だからといって、(子どもに関することすべてが)おかあさんの責任だとは言っていないのですが、“でもあなたが産んだんでしょ、あなたが育てているんでしょ、そしてあなたの子育ての結果、子どもの将来が決まるんだからあなたの責任ですよ”って、おかあさんたちには聞こえるんです。

でも、そんな仕事、世の中にないと思うんですよ。もっと言えば、おとうさんはそんな責任、感じていないです、ぼくもそうでしたが。

ぼくがこの本で書きたかったのは、“子育てに関して正しいことは世の中にあるかもしれないけど、そんなことはどうでもいい”ってことなんです。

やりたかったらやってもいいし、でもやらなくてもいいんですよ。やらなかったからといってどうなるもんじゃないよと(笑)」

――うわ、肩の力抜けますね、それは!

高橋「あと、よく聞かれる“〇歳までにこれをしなくてはいけない”ということも、そんなことはないんです。

そういう本は多いですけど、ある時期までにあることをしないと取り返しのつかないことになるということは、ほぼありません。

医学的にクリティカルピリオド(臨界期)と呼ばれるもの以外は」

――クリティカルピリオドとは?

高橋「クリティカルピリオドで一番知られているのは視力です。

人は、ものを見ることによって、後頭部にある脳が発達して、ものを見て理解することができるようになります。

だから、生まれたばかりの赤ちゃんに眼帯を当てていると、当てていた方の目は見えなくなるんです。これは後で取り返すことはできません。ただ、通常赤ちゃんに眼帯はしないですよね」

――そうですね。

高橋「ですから、クリティカルピリオドのように、遺伝子が決めた大事な時期もあえてとんでもないことをしないかぎり、この時期を外したらダメということはないんです」

――“遺伝子が決める”という言葉は、たびたびご本のなかに出てきますよね。

高橋「たとえば、流産についてですが、受精した卵子の3割くらいしか着床しません。着床したとしても、流産はいっぱいあります。そのほとんどは、そもそも卵子や精子に問題があるんです。

遺伝子が途中で”無理!“と判断すると、自分から切るわけですね。

だから本にも書きましたけど、生まれてきたってことは、それだけでOKなんですよ。生まれて来ていいんだよって遺伝子が決めたんです。どんな障がいを持った子どもでもそうです。

ですが、おかあさんは自分を責めるわけです。子どもが熱を出せば、自分が寒いところに連れていったせいじゃないかとか、おなかをこわせば、自分の食事が悪かったんじゃないかとか。

子どものあれこれを自分のせいだと思うおかあさんは、驚くほどたくさんいます。おかあさんの責任感の強さはすごいですね、あれは母性だと思います」

――母性ですか、なるほど・・その結果、”正解“を求めて、世に出回るいろいろな情報に翻弄されてしまうママが多いということですね。

高橋「正しくて力のある情報に振り回されているんですね。ぼくの本なんか、正しいことはあまり書いてなくて、ぼわーんとしてますよね、こーんな感じみたいなね(笑)」

――「子どもがしあわせなら、それだけで、みんなしあわせ」とか、「楽しく食べることがなにより大事です」とか(笑)

高橋「そっちの方が、結局は大事だと思うんですよね。子育てなんか、かわいいから育てるだけですよ」

――そう考えると、気が楽になりますね。

■「大丈夫、」と言うのも医者の大事な仕事

――先生のところには、神経系の病気のお子さんを連れたママさんたちが多くいらっしゃるのですよね。そういった方たちの苦労というのは、はかりしれないものがあると思うのですが。

高橋「そうですね。いろんな方がいらっしゃいます。子どもの背が低いことを気にして“とにかく成長ホルモンを打ってください”というおかあさん。

“自分の子はADHDじゃないか、ネットで調べて間違いない”っていうおかあさん。

そういったおかあさんたちに、大丈夫ですよ、お嬢さんはご両親に似て背が低めなだけですよ、息子さんはちょっとやんちゃなだけですよ、と説得するのが医者の仕事です。

病気ではないことを証明をするのも医者の仕事。

これはいわゆる”悪魔の証明”の一種ですね。悪魔がいないことを証明すること、心配ないんだということを説得することは、悪魔、つまり病気を見つけるよりもよっぽど難しいです」

――大変なお仕事ですね。

高橋「でも、やりがいがあるんですよ(笑) 検査しましょう、もう少し待ちましょう、ではなく、できればその場で大丈夫だ! と安心させてあげたいですね。

特に重い神経系の病気の子どもを抱えたおかあさんは、子どもの病気を自分のせいだと思うんです。子どもが脳性まひになったのは、妊娠中に飛行機に乗ったせいだとまわりに言われて、信じているおかあさんもいます。できることなら、一刻も早く安心させてあげたいものです」

――えー! それは傷つきますね…。そんなわけはないんですよね?

高橋「脳性まひの大半が原因不明です。以前はお産のせいだと言われていたんですが、分娩が格段に安全になっても脳性まひは減りませんでした。

ですが、脳性まひというと、お産の時になにかあったはずだとか、おかあさんが妊娠中に無理したせいだとかイメージする人が多いですよね。ですが、本当のところはわからないことが多いのです」

■高橋先生、Q&Aタイム

――では次に、現役で子育てをしているママたちからの質問を、高橋先生にぶつけさせていただきたいと思うのですが、よろしいでしょうか。

高橋「さっきチラ見したら、難しい質問ばかりでした(笑)」

――す、すみません!(笑)…ではさっそく、1つ目の質問から。

■Q1 「保育園で他の子とからまないという指摘を受けた5歳女児。マイペースすぎないか、心配です」

■A.それは個性に過ぎないんで大丈夫です。

高橋「マイペースというのが何を指しているかにもよるのですが、よく保育園などでは、“集団の指示が通らない子”がマイペースと言われがちなんですよね。

みんながわーっと何かを始めるとき、ひとりでポツーンとしている子っていますよね。そういうのをたぶんマイペースって言っていると思うんですが、それは個性に過ぎないんで大丈夫です。

全員が同じ指示に従って動くというのは、個性のない状態ですよね。子どもたちはみな素晴らしい個性を持っているわけですが、集団行動では個性のある子たちが一時的に個性のない行動をしているだけです。

それから外れたからといって、悪い意味のマイペースということにはならないと思います。

これが、たとえば指示している言葉の意味がまったくわからなくてついていけないとなると、また話は別ですが。

自分の子どものことはおかあさんが一番知っているわけですから、日常生活でおかあさんにとっては違和感がないのに、保育園や幼稚園に行ったとたんに“あなたのお子さんはちょっと変わっています”と言われるというケースは、ほぼほぼ大丈夫です。

あとよくあるのは、おかあさんかおとうさんもマイペースってケースですね(笑)」

――それが遺伝ってことですね。

高橋「遺伝です。いい遺伝ですよ。個性は遺伝した方がいいじゃないですか」

■Q2 「子どもが“ママだと泣く”と夫に言われるのがつらいのですが」

■A.ママと子どもの距離が近いからこそ、ママの前だと泣きやすいんですね

高橋「泣くって大事なことですよね。大人になると封印しますけど、泣くという感情は大笑いするよりももっと純粋で、とめがたい感情じゃないですか。子どもが泣くってそれほど悪いことじゃないんじゃないでしょうかね」

――それが、いまのママたちは子どもが泣くことがこわいみたいなんです。こわいというか、恐れているというか。

高橋「子どもがなぜ泣くかというと、言葉でうまく説明できないからなんですよね。

うわーって泣くじゃないですか。大人ではああはできないですよね。怒りとかさびしさとか、泣くには泣く意味があって、それは感情のいちばん純粋な表現の仕方なんですよね。

子どもにとってママの言葉はいちばんドーンとくるから、うわーって泣くんじゃないですか。パパはちょうどいい距離なんでしょうね」

――なるほど。ではまず、泣くことに対する認識を変えたらいいのかもしれないですね。泣くことは決して悪いことではない。ママと子どもの距離が近いからこそ、ママの前だと泣きやすいんですね。

高橋「自分の前で人が泣いてくれるのって、子どもじゃなくても、最高のことじゃないですか」

――信頼がないとできないことですよね。

■Q3 「小学校3年生の男の子。外でのことを聞いても何も話さない。これから思春期になるともっと話さなくなるのか、心配です」

■A.お子さんの行動は生物学的に正しいんです。

高橋「それはね、まず“なにがあったの?”って聞かれても、その子には特段なにもないんですよ(笑) 。

たとえば今日の給食はなんだったか、と聞かれたら答えられますけど、“今日、どうだったか”と聞かれても、答えようがないんですよ」

――ママが答えにくい質問をしてしまっている可能性がある、と。

高橋「もっと小さいときは、いろんなことが全部新鮮だから、おかあさんにお話したいことがいっぱいあったと思うんですよね。

それが小3くらいになると、おかあさんに話したくないわけではなく、特別におかあさんに話すようなことが起こらないから、というのがひとつの理由だと思います。

それから、年齢差はありますが、親子関係が一見疎遠になるときってありますよね。女の子であれば、男親を嫌いになったり。

こういったことは、近親相姦をふせぐためと言われています。

また、子どもはそれぞれ自分の性と同じ親をロールモデルとして育つようになっています。

どちらかというと、男の子はおとうさん、女の子はおかあさんと仲良くなるようにできているので、このお子さんの行動は生物学的に正しいんです」

――自然なことで、成長の一環なのですね。年齢は何歳くらいからにあたるのでしょうか。

高橋「だいたい思春期の前あたり、小学校高学年くらいからですね」

■Q4 「片づけられない、モノをなくす・・実は私も。これって遺伝ですか?」

■A.遺伝でしょうね

高橋「遺伝でしょうね」

――あははは、そうですか!(笑) 最近、大人のADHDという言葉を耳にすることもありますが。

高橋「ほとんどの人はADHD“っぽい”んだと思います、ぼくも含めて」

――私もです(笑)

高橋「本当のADHDは多動というより、衝動性の方が問題であることが多いのですが、うかつさ、忘れ物の多さというのは、ぼくはチャーミングなんじゃないかなと思っています。いつも忘れ物をするけど、みんなが助けてくれる人っているじゃないですか、ぼくみたいに(笑)」

――完璧な人間なんていませんよね。

高橋「本に出てくる、ぼくの留学時代の上司の教授もそうです」

――彼女はディスレクシア(発達性読み書き障害)であることを公言して、大量の書類を秘書やまわりの人に読んでもらうことで、乗り切っていたというエピソードですね。世界的に有名な研究をされたということとのギャップに驚きました。

高橋「ですから、生活に暗い影を落とさないかぎりはOKだと思いますよ」

――親はまた、自分に似た欠点だから気になるのですよね。

高橋「おかあさんが味方になってあげればいいんじゃないですかね。親子は遺伝子を半分あげた仲間なんですから」

――なるほど、それは思いつきませんでした、同じ個性を持った仲間なんですね。

高橋「そうですよ、最大の理解者になってあげてください。忘れ物が多くても、自分は今までそうやって生きてきたし、大丈夫だよ、と先発隊として言ってあげればいいんです。忘れ物多いひとはけっこう友達も多いよ、とかね」

――個性が遺伝してしまうのを、怒っても、自分のせいだと謝っても仕方ないですもんね(笑)

■最後に

余談になりますが、筆者の5歳の娘はよく泣き、時々、ウソ泣きさえします。かなりおしゃまで、毎日、自分なりのファッションを楽しんでいます。演技派という意味で、「将来は女優?」と言われたことも何回かあります。

とても私に似ているとは思えないのですが、と高橋先生に言うと、「おかあさんも実は泣き虫ってことはないですか? 環境でおしゃまになったり、泣き虫になったりすることって、ぼくはないと思っているんですよ」という答えが返ってきました。

しばし、記憶をたどってみると、そういえば、筆者は学生時代、演劇をかじっていたのでした! まったくの盲点で、遺伝子のなせるわざとはこういうことか・・と実感したひと時でした。

『小児科のぼくが伝えたい 最高の子育て』を通じて、子どもを育てるのに必要なことは、外側ではなく、自分の、そして子どもの内側にあるものなのではないかと気づかせてもらいました。

今、子育てに悩んでいるママも、本書をひもとけば、きっとふんわりした自信が生まれてくると思います。「子どもなんて、かわいいから育てるだけですよ」という高橋先生の笑顔が印象的でした。

【取材協力】高橋孝雄さん

慶應義塾大学医学部小児科教授。医学博士。専門は小児科一般と小児神経。日本小児科学会会長。

1957年8月生まれ。1982年慶應義塾大学医学部卒業。1988年から米国マサチューセッツ総合病院小児神経科に勤務、ハーバード大学医学部の神経学講師も務める。1994年帰国し、慶應義塾大学小児科で、医師、教授として活躍している。

趣味はランニング。マラソンのベスト記録は2016年の東京マラソンで3時間7分。別名“日本一足の速い小児科教授”。

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