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マンション、所有者不明等の物件が1割超に…修繕も解体もできない事例増加が現実味

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2019年03月02日 06:11  Business Journal

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写真「Gettyimages」より
「Gettyimages」より

●マンションでも所有者不明物件が増加


 所有者がわからない土地が全国で増え、社会問題化しているが、分譲マンションでもこうした物件が増えつつある。土地と同様、相続未登記や相続放棄が増えていることによる。国土交通省が2016年から17年にかけて管理組合に対して行った調査(「マンションの再生手法及び合意形成に係る調査」、回収数639件)によれば、「連絡先不通または所有者不明」の物件があるマンションは全体の13.6%(87件)存在した。連絡先不通・所有者不明物件のあるマンションの内訳は、築40年以上が29%、築30年以上40年未満が24%と、高経年物件が多くを占めている。


 所有者不明・不在物件が増えることの問題点としては、(1)管理費や修繕積立金が徴収できなくなること、(2)管理が行われないことで劣化が進んだり周囲に悪影響を及ぼしたりすること、(3)多数決による決議が困難になることなどが挙げられる。つまりはマンション管理上の、さまざまな支障を来すということである。(3)については、同じ調査で、今後は建て替え決議などの成立が困難になっていくと考える割合が7割に達している。


●財産管理人による処分の可能性


 管理組合は、所有者不明となった場合は不在者財産管理制度、相続放棄された場合は相続財産管理制度によって、物件を処分することができる。管理人選任は、家庭裁判所に申し立てることによって行われるが、その際、数十万〜100万円程度の予納金の支払いが必要になる。それでも、物件を売却できれば予納金や管理費滞納分などに充当することができる。


 しかし、そもそも所有者不明・不在となる物件は、価値がないためにそうなってしまった可能性が高く、たとえ売れたとしても予納金や滞納分を賄うのに十分な値段に達しない場合が多いと考えられる。その場合、滞納分は新たな区分所有者が引き継がなければならなくなり、ますます買い手を見つけるのが難しくなる。


 所有者不明・不在となった土地の場合は、市場で価値がなくても、隣の人にとっては敷地拡張のために価値があり、買い取ってもらえる場合がある。マンションの場合も、市場で売れなくとも、従前からの区分所有者に買い増し需要があれば、引き取ってもらえる可能性はある。しかし、建物が老朽化するとともに区分所有者も高齢化しているマンションにおいては、そのような需要はあまり期待できそうにない。


 結局のところ、所有者不明・不在となると、管理組合はその物件の処分に窮することになる。相続放棄には遺産すべての放棄が必要で、マンションだけを選択的に放棄できないが、今後、ほかにめぼしい遺産はないといったケースが増えれば、放棄が増加していく可能性がある。将来的には、市場価値のないマンションの大半が相続放棄されてしまうといった事態も起こりかねない。放棄しないまでも、相続未登記が増え、権利者に連絡を取るのが難しくなるケースが増えていくことも考えられる。


●利用権設定のアイディア
 
 所有者不明・不在の物件が増えてその期間も長引くと、荒廃し物件全体が危険な状態となる可能性が出てくる。2015年5月に全面施行された空家対策特別措置法では、共同住宅は、全室が空室となった時に限って対象となり、特定空家に認定されて解体の必要が生じた場合、代執行の措置を取ることができる。しかし、解体するには現在の相場では、1戸当たり200万円ほどの費用がかかり、50戸のマンションの場合、1億円かかる計算になる。それを自治体が立て替えることができるかといえばかなり難しく、土地を売却できたとしても回収できるかどうかはわからない。


 所有者不明・不在物件が放置され、管理が行き届かなくなる事態を避けるため、長期間空室になっているマンションについて、裁定によって利用権や所有権の設定を可能にするアイディアも提起されている(土地総合研究所<2017>)。管理組合が、仮に将来所有者が現れた場合に支払う補償金を供託した上で権利を得て、利用または処分するというものである。管理組合はこれを賃貸物件として貸し出せば賃料収入が得られ、管理費や修繕積立金に充てることもできるようになるかもしれない。


 利用権設定については、遊休農地の場合は都道府県知事の裁定によって可能で、農地中間管理機構は補償金を供託した上で利用権を取得できる。また、所有者不明の土地については、知事の裁定により利用権を設定し、補償金を供託した上で公共性を持つ事業に使えるようになった。利用権設定は、将来的にはマンションについても検討する必要がある。


●放棄の一般ルールの必要性
 
 マンションの場合、仕組み自体が新しいため、土地のように所有者を探索するために何代も遡らなくてならないようなものは存在せず、仮に未登記の場合でも、所有者にたどりつける可能性は高い。しかし問題は相続放棄であり、これは認められている権利とはいえ、残された区分所有者が負担を押し付けられる結果になっている。前述のように、今後、ほかにめぼしい遺産はないといったケースが増えれば、マンションの相続放棄が増加していく可能性がある。


 相続放棄物件のその後の処理コストが嵩むことを考慮すれば、最初から放棄できる一般ルールを定めておいたほうが望ましいとの考え方に立つことも可能である。民法には「所有者のない不動産は、国庫に帰属する」との規定があり、登記に放棄手続きを設ければ、所有権放棄が一般に可能になる。国の負担が増すが、放棄時に費用負担を求める仕組みにすればよい。その後、物件と放棄料は管理組合に移せるようにし、管理や処分を行っていくことが考えられる。求める費用負担額としては、例えば、管理費、修繕積立金、固定資産税などの何年か分という設定が考えられる。


 放棄の一般ルールを設けるメリットとしては、相続放棄のように一方的に放棄されるわけではなく、放棄される管理組合の側は放棄料を得ることができ、その後の管理や処分費用に充てることができることがある。この仕組みでは、マンションの区分所有者は、いわば放棄料支払いというマイナス価格で、管理組合に物件を引き取ってもらうかたちになる。この仕組みのデメリットとしては、放棄料が安すぎると簡単に放棄できるため、放棄が爆発的に増えてしまう可能性があるという点であろう。


 一方、現在の相続放棄の仕組みは、相続財産すべてを放棄しなければならないことが一定のハードルになっている。しかし、これには対策を講じることもできる。必要な財産を遺言書で遺贈したり、生前贈与したりしておけば、必要な財産を確保した上、最後に不要な不動産のみを相続放棄して手放すといったことも不可能ではない。こうしたかたちで、なし崩し的に相続放棄が増えていく可能性を考慮すれば、放棄の一般ルールを定めたほうが、まだましだとも考えられる。


 もちろん、先に紹介したような、所有者不明・不在となって長期間経過した後で、利用権や所有権を設定する仕組みでも悪くはないが、それには時間を要する。不要なものは最初から放棄料を支払う条件で放棄を認め、管理組合がその後の利用や処理を早期に考えるほうが合理的だと考えられる。


●解体費用積み立ての仕組み


 ただ実際問題としては、放棄料を支払ってまで捨てたいマンションは、たとえコミュニティースペースや賃貸物件として管理組合が一時的に利用できたとしても、売却はできない可能性が高い。最終的に直面する問題は、建物の寿命が尽きた時点での、区分所有権の解消、解体という問題である。


 より大きなマンションに建て替え、売却できるなどの好条件を備えていれば、解体費の心配をする必要はないが、そもそもそのような好条件の物件が放棄される可能性は低い。放棄されるような物件が心配しなければならないことは、最後の解体の問題になる。危険な状態になった時、自分たちで解体できない場合、代執行など公費解体にならざるを得ない。


 こうしたことを考えれば、今後は、区分所有者はあらかじめマンションの解体費用を積み立てておく必要性が高い。現在、定期借地権の期間(50年以上)を満了すると地主に土地を返さなければならない定借マンションでは、一戸あたり最終的に200万円程度になるよう解体費用が積み立てられている(齊藤<2014>)。一般のマンションでも計画的に積み立てておけば、仮にその後、所有者不明・不在になったとしても解体費用を心配する必要はなくなる。


 このように所有者不明・不在のマンションの増加は、放棄された管理組合の側が過度に不利益を被らないような放棄の一般ルールの仕組み、そして最終的に解体しなければならないことを考えると、当初から解体費用を積み立てておく仕組みの必要性を問題提起している。


 なお、ここまで述べてきたことは、マンションの管理組合が機能していることを前提にしてきたが、管理組合が機能していない場合は、放棄が増えた物件についてはその後の管理、処分を行う受け皿機関のようなものも必要になるかもしれない。
(文=米山秀隆/富士通総研経済研究所主席研究員) 


【参考文献】
齊藤広子(2014)「マンションにおける空き家予防と活用、計画的解消のために」 浅見泰司編著『都市の空閑地・空き家を考える』プログレス
土地総合研究所(2017)「人口減少下における土地の所有と管理に係る今後の制度のあり方に関する研究会 平成28年度とりまとめ」『土地総合研究』春号


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