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ホンダ、したたかな大量解雇策…英国のEU離脱利用、生産撤退という“リストラ”断行

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2019年03月02日 07:12  Business Journal

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Business Journal

写真ホンダ・シビック(「Wikipedia」より)
ホンダ・シビック(「Wikipedia」より)

 ホンダが英国ウィルシャー州スウィンドン市にある工場の閉鎖を決めた。英国が国民投票でEU離脱(ブレグジット)を決めてから、自動車メーカーが英国内にある工場の閉鎖を決定したのは初めて。英政府も落胆の色を隠せない状態で、ホンダに続いて生産拠点を閉鎖する動きが相次ぐことを警戒する。ホンダが他社に先駆けて英国工場の閉鎖を決めた理由は何か。


「今回の内容はグローバルでの生産配置と生産能力の適正化、それと電動化を加速させるために実施するもの。また、今回発表したタイミングは次期『シビック』の生産拠点を決定するためであり、今回の発表内容はブレグジットとは関係ない」


2月19日午後5時から東京都港区にあるホンダ本社で開いた記者会見で、八郷隆弘社長は、英国とトルコでの現地生産から撤退するなど、四輪車生産体制の見直しを説明した後、わざわざ一拍置いて、英国工場の閉鎖はEU離脱が理由ではないと強調した。


 3月29日のEU離脱が迫るなか、英議会でEU離脱に関する協定の承認は得られておらず、EUとの離脱案修正協議も難航している。このままでは「合意なき離脱」となってしまう可能性も高まっている。その場合、英国に工場を持つ自動車メーカーはEUへの自動車の輸出に10%の関税が課せられるほか、EU域内から調達する部品の通関手続きに時間を要して、部品不足で自動車生産に支障が及ぶ恐れも取り沙汰されている。


 このため、自動車各社は対応に乗り出している。合意なき離脱となった場合、トヨタ自動車やBMW、ジャガー&ランドローバーなどは、混乱を避けるため、4月に一時的に英国での生産を停止することを決めている。日産自動車は欧州向けSUV「エクストレイル」の次期モデルを英国で生産することを2016年に発表していたが、今年2月にこれを撤回、次期モデルは日産自動車九州で生産することを発表した。フォード・モーターは英国でのエンジン生産からの撤退、BMWは一部の生産をオランダへ移管することをそれぞれ検討。ジャガー&ランドローバーは英国を中心に4500人の人員削減を検討している。


●生産能力削減の一環


 そしてホンダは英国とトルコでの完成車生産を21年中に終了して、欧州での現地生産から撤退することを発表した。離脱まで2カ月を切ったなかだけに、記者会見では幾度となくEU離脱の影響かと問われたものの、八郷社長は生産能力の最適化と電動化対応が理由で「ブレグジットは考慮していない」と断言した。しかし、英国営放送のBBCを含め、ホンダの英国撤退はEU離脱と関連付けて報じられた。


 これに対して日系自動車メーカーの幹部は「ホンダはうまいやり方で人員削減を実行する」と解説する。約3500人が働くホンダの英国工場ホンダ・オブ・ザ・UK・マニュファクチュアリングは現在、「シビック(ハッチバック)」と「シビックタイプR」を生産している。18年は約16万台を生産したが、このうち55%は北米市場向け。もともと英国工場は収益力が弱く、ホンダのグローバル生産拠点では「お荷物的存在」。英国工場の稼働率を確保するため、グローバル市場向け「シビック・ハッチバック」を集中生産していた状況で、「いつ閉鎖してもおかしくない」(自動車担当記者)と見られていた。


 ホンダは前任社長だった伊東孝紳氏が「16年度に世界販売600万台」という目標を掲げた影響から、身の丈に余る生産能力を抱えており、これがライバルと比べても低い営業利益率の原因となっている。生産能力削減による経営効率化が大きな課題となっていた。


八郷氏が社長に就任してから600万台計画の旗を降ろして軌道修正し、17年には埼玉県にある狭山工場を閉鎖し、22年度をメドに同じ埼玉県にある寄居工場に集約することを決定。ブラジルでは稼働を延期していたサンパウロ州イチラピーナ市にある四輪車生産拠点を19年から稼働したが、既存のスマレ工場では完成車の生産を取り止めてパワートレインを生産するなど、生産体制の再編を進めてきた。


 ただ、大規模な解雇が発生して地域のコミュニティーを破壊しかねない工場の完全閉鎖には踏み切れないでいた。


●工場の閉鎖によるイメージ悪化を回避


 そこでホンダが利用したのがブレグジットだ。ホンダの英国工場周辺には、ホンダ向けが8割以上というホンダ系部品メーカーもあり、ホンダが工場を閉鎖するとサプライヤーも連鎖的に工場閉鎖や生産休止に追いやられ、この地域で失業者が急増、政府を含めてホンダに対する批判が高まるのは確実だ。


 しかし、この時期にあえて発表することによって、EU離脱の影響をにおわせ「工場を閉鎖するのも仕方ない」と理解を促し、大量解雇というブランドイメージの悪化を和らげる狙いがある。ホンダは「欧州市場からの撤退は考えていない」(八郷社長)としており、英国工場の閉鎖によるイメージ悪化は避けたいところだ。しかもトップが「EU離脱が理由ではない」と断言することで、他の企業が英国撤退で追随してもホンダのせいではないことを示す。


 ホンダのグローバルでの生産能力は18年度末で540万台だが、今回の英国、トルコの工場閉鎖で、21年末には510万台に削減でき、経営効率化が前進する。ブレグジットを利用するホンダのしたたかさを目の当たりにして、英国に工場を持つ自動車メーカーは呆れ顔だ。
(文=河村靖史/ジャーナリスト)


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