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キスなしで「超感覚」を手に入れる。鬼才・意思強ナツ子が描く、新たなる自己啓発ワールド

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2019年03月02日 18:11  ダ・ヴィンチニュース

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ダ・ヴィンチニュース

写真『アマゾネス・キス』(意思強ナツ子/リイド社)
『アマゾネス・キス』(意思強ナツ子/リイド社)

 あなたは突然、同じ会社で働く社員に「超感覚知覚能力に目覚めたくないか?」と言われたら、どう感じるだろうか。おそらくほとんどの人が眉をひそめるだろうし、インチキ商売や怪しげな宗教を思い浮かべるだろうし、その相手には深く踏み入れないよう距離を置くだろう。

衝撃作『よく宗教勧誘に来る人の家に生まれた子の話』著者インタビュー

 意思強ナツ子の描く連載漫画『アマゾネス・キス』(リイド社)の第1巻が発売された。

 主人公は、会社員をしながら占い師としても活動するOL・岡本はづき。いつか占い師で生計を立てていきたいと思うものの、今はまだ食べていけないから会社員をしている。そんな片手間気分でやっているから、ミスは多いし、上司に叱られるし、給料は上がる様子がないが、彼女は気にしない。彼女にとってのアイデンティティは占いの方にあるのだ。

 しかし、そんなはづきが会社で唯一執着する相手がいた。その会社から出ている人気商品「ボタニカチョコ」をデザインした天野だ。パッケージに様々な花をあしらったチョコレートで、彼女はそれを毎日買って、フィルムの裏にある毎日の運勢をチェックして、食べたあとの包装紙はノートにスクラップして集める、という筋金入りのオタクっぷり。

 ボタニカチョコを生み出した天野は、はづきにとって憧れの女性だった。そんな天野が、ある日会社をクビになったという。詳しい理由は明かされないものの、社内で怪しげな勧誘を続けていることが原因のようだった。話を聞けば、天野は「超感覚知覚力」がある人たちを救うため、会社を設立したという。

●キスや本番は許されない! 「超感覚知覚」マッサージの果てに…

「超感覚知覚トレーニングジム アマゾネス・キス」と呼ばれるその組織は、超感覚知覚力のある人たちがトレーナーとなり、会員のお客さんたちに性的なマッサージをしてお金をとるサービスをしている。いわゆる風俗なのだが、そこでは決してキスや本番が許されず、あくまで客は「超感覚知覚」を得るために身体的なマッサージを受けるのだ。

 はづきは、天野の客となり、通い詰めるようになる。決してキスをしてくれない、いつも寸止めで終わる。火照った体を持て余しながらも、それが救われるための道なのだから仕方ない。天野への執着によりそのサービスに没頭するはづきは、次第に占い師としての能力に変化が現れていることに気づく……。

 いわゆる「自己啓発」を扱う漫画なわけだが、この作品に登場するキャラクターたちは皆、この怪しげな組織を一途に信じ続けている。

 教祖のような立ち位置の天野が何を考えているのかは見当がつかないが、だからといってこれが単なる詐欺やインチキ商売の物語ではなく、主人公であるはづきが超感覚知覚により占い師としても会社員としても調子が上がり始めているのが面白い。この作品の世界の中では、「超感覚知覚トレーニングジム」が馬鹿馬鹿しいながらも、どこか信憑性があるように描かれている。

「キスなしで高次元を目指す」ために前戯行為を繰り返す彼女たちの姿は、たとえばセックスやオナニーで果てる前の、あの盲目的で熱っぽい、凄まじく集中している姿と重なる。果たして、本当に高次元能力を得たとき、彼女たちは何に目覚めるのだろうか。気がつくと、「超感覚知覚」が存在すると信じきって前のめりに読んでいる自分にハッとする。

文=園田菜々

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