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外資系企業も日本型「新卒一括採用」導入…欧米、エリート以外は低賃金のブラック企業就職

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2019年03月03日 08:11  Business Journal

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写真「Gettyimages」より
「Gettyimages」より

「新卒一括採用」は世界的に珍しい、日本特有の雇用制度だ。


 これまでは、経団連が定める“就活ルール”にのっとり、多くの企業が選考や広報の開始時期について足並みを揃えてきた。ところが昨年9月3日、経団連が就活ルールを廃止する意向を示したことで、今後の動向に注目が集まっている。


 そもそも新卒一括採用は、学生に「新卒というカードを切れるのは人生で一度だけ」という重圧を与えたり、一定期間に選考や説明会が集中することで学業が疎かになる恐れがあったりと、その欠点が指摘されている。


 では、なぜ日本は新卒一括採用を継続しているのか。『お祈りメール来た、日本死ね 「日本型新卒一括採用」を考える』(文春新書)などの著書を持つ雇用ジャーナリストで、ニッチモ代表取締役の海老原嗣生氏に話を聞いた。


●なぜ日本では新卒を大量に採用する?


 まず海老原氏は、「新卒一括採用」と同じく世界的に珍しい「無限定雇用」という契約制度こそが、日本の新卒一括採用を可能にしているのだと説明する。


「日本と欧米では雇用契約に違いがあり、欧米は『職務限定雇用』です。企業は人事権を持たず、職務を限定して採用するため、人事異動をさせることができません。それに対して日本は無限定雇用であり、企業が人事権を持ち、採用後はさまざまな部署へ異動させることができます。この違いこそが各国の雇用制度に大きく関係しています。


 欧米の企業で欠員が出た場合、会社の外部から同業同職の経験者を雇うことで欠員を補充します。ただ、経験者を雇おうとすると、競合他社から引き抜かねばなりません。これによって欠員が生じた競合他社もまた、外部から経験者を連れてこようとするため、常に自社の人材が他社に取られてしまう可能性がついてまわるのです。これが欧米型の雇用制度の大きな問題点となっています。


 次に、日本の企業で欠員が出た場合は、その下の役職に就いている者を昇進させたり、ほかの支社から同じ職務に就いている者を異動させたりできます。さらに、その昇進によって発生した下位ポストを補充するために昇進、異動……と繰り返していくと、最後に空席ができるのは、末端の役職です。その空席を埋めるために行われるのが新卒一括採用だということは、もうおわかりでしょう。上位の役職に欠員が生じても社内で補充すればよいので、新たに雇うのは末端の新人だけですみます」(海老原氏)


 これならば、同業同職の経験者をわざわざ外部からヘッドハンティングする必要がなく、労力もかからない。


「このような日本の雇用契約は『メンバーシップ型』と呼ばれており、社内教育を施すことを前提として人材を採用します。新入社員には未経験でも遂行できる簡単な職務から任せ、徐々に職務を高度なものにしていくのです。とはいえ、ずっと同じ職務を任せるわけではないため、採用時点では実務的なスキルではなく、コミュニケーション能力や責任感などの人間性を重視することになります。


 一方、欧米の雇用契約は『ジョブ型』。職務単位で仕事のできる人材を求め、そのまま職務転換もなく同じ仕事を長く続けさせますから、スキルや経験を重要視した選考を行うのです」(同)


●欧米型雇用制度の非常にシビアな事実


 では、欧米諸国の学生たちはどのように就職しているのだろうか。


「原則として欧米には、日本のような新卒一括採用というものがありません。新卒で優良企業に正社員として就職できるのは、有名大学出身の超エリートやエンジニアとなります。標準的な大学生が新卒で就職したいのなら、『エントリーレベル採用』というかたちで、末端に欠員が出やすい不人気な企業を甘んじて受けるしかないのです。


 要するに欧米の社会では、経験者の中途採用が基本。学生は即戦力として評価されるために経験を積まなければならず、その方法のひとつに、インターンシップへの参加があります。日本のインターンシップは長くても1カ月程度で終わるのに対し、欧米では数カ月もの間、低賃金の職業訓練を受けなければなりません。


 ちなみに、欧州だと原則、非正規雇用が認められていないため、インターンシップに参加する学生は正社員として雇われます。もっとも、学生は何がなんでも仕事を覚えなければいけない立場にありますので、企業からすれば、たとえ正社員でも非正規雇用と同じように安く働かせられるわけですね。


 整理すると、欧米の学生はよほどエリートでない限り、エントリーレベル採用で“ブラック企業”に就職するか、低賃金のインターンシップで働いてから中途採用を受けるのが一般的ということです」(同)


 欧州では日本よりもはるかに若年失業率(15〜24歳)が高く、経済協力開発機構(OECD)の2017年のデータによれば、スペインが38.7%でイタリアが34.8%。日本の4.7%という数値と比べると、欧米諸国は非常にシビアな現実に直面していることがわかるだろう。


「さらに欧州では、教育システムと将来の職業とは密接に関係しています。特に顕著なのはフランスの事例で、義務教育にも落第という制度があります。成績不振の生徒は中学卒業後、職人コースに振り分けられ、高校に進学することさえできません。


 高校に進学できたとしても、生徒には複数の分岐点が用意されており、進むべき道が次第に限定されていきます。こうして、エリート教育を受ける者と職業学校で訓練を受ける者の階層構造ができあがるのです。


 欧州の社会はけっきょく、日本のような誰でも高校に進学して大学を自由に選べ、そして新卒で正社員として雇ってもらえるような仕組みにはなっていません。こうした階層社会は、日本ですぐさま受け入れられるものではないでしょう」(同)


●新卒一括採用は今後も続いていく?


 海老原氏は「日本型と欧米型、どちらが正しいという問題ではない」と念を押すが、今後、日本の雇用制度はどのような道をたどっていくのだろうか。


「昨今は、日本に進出してくる外資系企業でさえも無限定雇用を一部取り入れ、末端ポスト補充のために新卒一括採用を行っています。経団連の会員ではない外資系企業は、はじめから就活ルールに関係がないので、日本企業以上に早期の新卒囲い込みを狙っているわけです。ベンチャー企業も、規模が小さいときには経験者を求めて中途採用を主にしていますが、やがて成長すると、新卒を雇い始めるようになります。


 企業に人事権が認められ、欠員を末端に集められる無限定雇用が続く限り、新卒一括採用は非常に都合のよいシステムということになります。それを企業が手放すというのは、この先も考えにくい話でしょう」(同)


 ただし、無限定雇用によって企業が負うリスクもあるのだと海老原氏は続ける。


「無限定雇用の場合、企業は労働者に対して『会社に入れる』という契約を結ぶため、仮に任せる仕事がなくなったとしても、すぐには解雇できません。仕事がなくなった際は、人事異動により職務転換することで対応します。


 一方で労働者も、『未経験でも会社に入れる』『賃金や地位は年々上がっていくのが当たり前』といったメリットを享受する代わりに、異動の拒否ができないというデメリットを背負わされているのです。


 本来、雇用というものは企業と労働者との間で“一勝一敗”の関係が保たれるように、さまざまな調整が入り、どちらか片方に利益が傾くものではありません。無限定雇用のメリットを悪用し、利益のバランスを崩そうとするブラック企業が日本の大きな社会問題となっているのは事実ですが、それだけを取り上げて日本型の雇用制度全体を批判するのは、見当外れだといえるでしょう」(同)


 日本の新卒一括採用は独自の進化を遂げ、欧米では実現し得ない、確かなメリットをもたらしている部分もあるようだ。日本と欧米の制度を、雇用契約の違いという本質的な問題を見落としたまま安易に比較するのは短絡的ということか。
(文=A4studio)


このニュースに関するつぶやき

  • 通年採用では大学で四年間社会から隔離されてただけの高卒でレジ打ちでもしてた程度の人材が、社会人経験者と張り合う事になる 今の日本の制度が恵まれてるんだよ
    • イイネ!1
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