山崎ケイの「ちょうどいいブス」キャラは、人をトリコにする? 炎上の背景に見えてくるモノ

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2019年03月08日 00:02  サイゾーウーマン

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サイゾーウーマン

相席スタート公式プロフィールより

 羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな有名人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます

<今回の有名人>
「出会いよ、出会い」相席スタート・山崎ケイ
(三菱地所CM「新しい匂いのする街」シリーズ「丸の内の健康意識篇」)

 芸人がネタ番組以外でテレビに出るには、キャラが要る。このキャラは、その芸人の真の姿である必要はなく、周囲とかぶらず、かつインパクトがあればよい。そういったセオリーに則ったであろうオンナ芸人、相席スタート・山崎ケイの「ちょうどいいブス」は、炎上騒ぎを2回経験している。炎上は珍しくないが、2回となると「ちょうどいいブス」が、誰かの神経を逆なでする、もしくは“トリコにする何か”を持っていると考えていいのではないだろうか。

 「男性はブスが嫌い」と巷間思われているが、一部の男性に“かわいげ”を感じさせるという意味で言うのなら、「ちょうどいいブス」は最強である。美人に失礼なことを言えば、嫌われてしまう。職場で女性に「おまえはブスだ」と言えば、ハラスメントになって問題になりかねない。しかし、女性側が「ちょうどいいブス」を自称するのなら、「ブスと言ってもいい」「下に見てもいい」「かつ、怒らない」という三原則が揃う。上から物を言いたい男性にとって、「ちょうどいいブス」は、ある意味キュートな存在だろう。

 最初の「ちょうどいいブス」炎上は、花王のヘアケア製品「エッセンシャル」のPR動画だった。山崎が同社の製品を使うと、「ちょうどいいブス」から「いいオンナ」になるというものだったが、批判が殺到。同社は謝罪するとともに、動画を削除した。制作側は、「山崎が“ちょうどいいブス”と自称しているのだから、女性蔑視ではない」と思ったのだろうが、たとえ自称であっても、顧客に夢を与える空間で、そのメイン層の女性を侮蔑する言葉を平気で使う見識の低さが炎上の原因なのではないか。

 2回目の炎上は、読売テレビが山崎の著書『ちょうどいいブスのススメ』(主婦の友社)をドラマ化すると発表した時だった。同署はモテ指南本なので、読売テレビ側は「ちょうどいいブスが、美人よりモテるなんて夢があって、ドラマにふさわしい」と考えたのだろう。一方の視聴者側は「男性に査定されて、モテることが幸せという時代ではない」と大炎上。とうとう、ドラマのタイトルが変更されることになった。ドラマの脚本は山崎が書いたものではないし、山崎のように“何としてでも男にモテたい”という価値観はあってもいいと思うが、山崎自身にもバッシングの火の粉が飛んだ。

 そんな山崎、最近は三菱地所のCM「新しい匂いのする街」シリーズ「丸の内の健康意識篇」に、女優・高畑充希と共に出演している。このCM、見ようによって、感想が違ったものになってくるあたりが、面白いと思う。

 「丸の内は健康意識が高い」という高畑のナレーションから始まるCMは、「健康意識」という言葉を、単純に「健康に気を使っていること」と解釈するか、「意識高い女性が気を使いがちなこと」と解釈するかで、見え方が違うのではないだろうか。

 CM内容はこうだ。山崎と高畑がレストランで食事をしているが、山崎は「焼きそばのそば抜き」を注文し、高畑に「それってただの野菜じゃ」と突っ込まれている。食事を終え、山崎は「さぁ、走るわよ」と意気込むが、途中で脚が吊って動けなくなる。そこにイケメンが現れ、おんぶしてもらうことに。高畑が「お知り合いですか?」と尋ねると、山崎は「出会いよ、出会い」と仮病であることをほのめかす。

 このCMを「健康に気を使っていること」という観点から見るのなら、糖質を気にして「焼きそばのそば抜き」を頼むのも理にかなっているし、皇居ランも妥当な選択だろう。食事や健康に気を付けた結果、イケメンとお知り合いになれたというご褒美もついてくるので“いい話”である。

 それでは、「意識高い女性が気を使いがちなこと」と解釈するのなら、どう見えるだろうか。

 『女が女に怒る夜』(日本テレビ系)など、オンナ芸人や駆け出しのタレントが嫌いな女の話をする番組で、必ずといって例に出てくるのが、この「意識高い女」である。例えば、モデルの真似をして、体が冷えないように常温の水を飲んだり、オーガニックの食品しか口にしない女性などを指すそうだが、なぜモデルなら許されて、一般人女性だとイラつかれるのかと言えば、結果の差だろう。「意識高い」という言葉は、「声高に努力を語る割に、結果が追い付いていない人」を小バカにしていると言えるのではないだろうか。

 こうした「意識高い女性が気を使いがちなこと」という観点からみると、山崎が「焼きそばのそば抜き」を注文して高畑に突っ込まれるシーンは、「やる気はあるけれど、抜けがある」エピソードに思えてくる。また、それを伏線だと解釈するなら、おんぶしてくれたイケメンと山崎がうまくいくことは「ない」と想像がつくだろう。このように、三菱地所のCMは、その人の悪意の含有量で、見え方が変わるCMなのである。

 悪意を視聴者に任せるという手法を番組で用いているのが、芸人・有吉弘行ではないだろうか。『有吉弘行のダレトク!?』(フジテレビ系)で、有吉はアシスタントを務めるフリーアナウンサー・高橋真麻に正面切って「ブスだなぁ」と述べるなど、有吉いわく「高橋英樹公認のブスいじり」をしてきた。しかし、そういった発言が炎上のもとになる風潮を察したのか、最近有吉は、外見を下げる言い方はしない。その代わり、有吉は逆に女性を一律褒めだしたのだ。

 例えば、『有吉反省会』(日本テレビ系)で、女性レギュラーやゲストを「反省会の美女軍団を用意しました」と言うのがまさにそれで、「その通り、美女だ」と肯定するか、「どこが美女だよ」と否定するかは、見る人に任される。確かなことは、有吉は言葉で女性をけなしていないので、クレームはつかないということだろう。

 クレームと言えば、不思議なことが一つ。ニュースサイト「週刊女性PRIME」が「女性が選ぶリアル“ちょうどいいブス”芸能人は?」という企画を行ったのだが、これは炎上しなかった。花王と同じく、女性週刊誌も女性を主な顧客としているだろうから、顧客である女性に対して侮蔑的な表現を取るのは禁忌だろう。そして、ブスと査定されることが嫌だ、失礼だと言いながら、「この人がブスだ」とブスチョイスに参加する女性も存在するわけだ。しかし、この記事は燃えない。私はここに、一つの深層心理が隠されているような気がしてならないのだ。

 自分がブスと言われるのは絶対にイヤだけど、人に言ったり、人が言われるのは面白いと感じる女性も、それなりに存在するのではないだろうか。有吉が(直接的な言葉は封印しても)容姿いじりを続けるのも、「ブス」が大衆ウケする不滅のコンテンツだと読んでいるからかもしれない。山崎の「ちょうどいいブス」は、案外長持ちするキャラになりそうな予感がする。

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