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『クマのプーさん展』企画者が語る魅力「プーは非常に日本的な物語」

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2019年03月08日 06:31  ウレぴあ総研

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ウレぴあ総研

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「クマのプーさん展」が2019年4月14日(日)まで渋谷Bunkamura ザ・ミュージアムで開催されています。

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イギリス・ロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館(V&A)からプーの貴重な原画が多数来日している本企画展。

そのこだわりや見どころについて、日英の両企画者に伺いました。

■次の世代にインスピレーションを与えたい

まずはロンドンV&Aから、商務・デジタル・展覧会担当部長アレックス・スティットさんにインタビュー。

V&Aはプーの挿絵画家・E.H.シェパードから原画を多数譲り受け、保管しています。

「クマのプーさん展」は、その原画を40年ぶりにイギリスで企画展として公開した「Winnie-the-Pooh: Exploring a Classic」(2017年12月〜2018年3月開催)の世界巡回版。

今回40年ぶりに大規模な原画展を開催した経緯を伺いました。

――アレックスさんの普段の仕事内容を教えてください

毎日毎日、素晴らしい展覧会の企画を考えるのが私の仕事です。

私はヴィクトリア&アルバート博物館で仕事しているのですが、我々は素晴らしいコレクションをたくさん有しています。

またたくさんの豊富な知識も持っていますので、それをどうやって生かせるのか、どういう次の展覧会を考えられるか、ということを毎日毎日考えています。私の仕事はとても楽しい仕事です。

展覧会といっても様々なものがあります。最近私が関わったものといえば、歌手のピンク・フロイドや、オーシャン・ライナー、大型客船、そして最近ではファッションの巨匠クリスチャン・ディオールの展覧会を開催したりしています。

――どういった経緯で今この原画展を開催したのでしょうか?

これだけ多くの作品が一ヵ所で見られるのはイギリスでも40年ぶりになります。

また今後は、さらに40年後にならないと、このような展覧会は開催できないと思います。

多くの子供たち、そして多くの大人は、プーとその友達とともに育ったわけです。

ですから一生に一回は、皆さんに元々の原画をご自分の目で見ていただく機会を与えたいと思ったのです。

「プーの喜びはどうやって誕生したのか」ということを説明することは、ある意味で我々の義務だと思っています。

我々は基本的には、次の世代のクリエイターたちにインスピレーションを与えたいと思っています。

特に児童向けのものを作るクリエイターの方々に、インスピレーションを与えたいのです。

100年近く前の話ですが、ミルンとシェパードは、生きる喜びや純粋な友情の楽しみ方といったものを非常にわかりやすい形で、非常に心に訴えるような形でみんなに提唱したわけです。

それと同じようなことを、この展覧会を通じて届けたいと思っています。

■プーは「非常に日本的な物語」

――本展を通して何を伝えたいと考えていますか?

我々が何かを伝えるというのはちょっと上から目線で、そういうことを考えているのではなく、我々としては元々ミルンとシェパードが伝えたかったメッセージを、できるだけきれいな、純粋な形で、来られた方々に伝えられればと思っています。

ミルンとシェパードが伝えたいと思ったメッセージとは、きっと「Simple Thing」=日々の普通のこと。

例えば森の中を散歩すること、友達と一緒に棒投げをすること、ちょっとした問題を解決すること、あるいは友情を深く味わうこと――そういう、人生の中の小さなことだけどすごく大切なこと、その喜びを作者と画家は伝えようとしたのだと思います。それを感じていただければとても嬉しいと思っています。

幸いに日本の会場でも素晴らしい設営をしてくださったので、皆様にそんなメッセージを感じていただけるのではないかと思っています。

また考えてみるとプーというのは、もしかしたら非常に日本的な物語なのかもしれません。

スケッチを見ると分かるように、ちょっとしたシンプルな絵と少ない言葉で書かれた文章で、大事なメッセージを伝えてくれる。そんなところが、非常に日本的な考え方じゃないかとも思うんです。

■各国の文化に合わせた翻訳を通して、プーのイメージが進化する

「クマのプーさん展」は世界巡回の企画展ですが、日本では独自の展示として「日本とプーさん」というコーナーがあります。

これは、「クマのプーさん」の邦訳者である石井桃子さんとプーの人生を紹介するものです。

――石井桃子さんを紹介する日本向けの展示を入れた理由はなんでしょうか?

この展覧会を見ていただくと、非常に深く感じられるのではないかと思うのですが、プーというのはイギリスで生まれたものなんですけれど、それぞれの国の、それぞれの翻訳によって全く違うものになっているというのが、非常に面白いところなんです。

先ほど話しましたように、プーにはあまり多くの言葉や文章が使われていません。シンプルな言葉がどういうふうに翻訳され、また作品を受け入れる文化がどういうものかによって、全然違うプーが誕生するんです。

例えばロシアではプーは全然違うものになっています。ロシアの文化に合ったものになっているんですね。イタリアでもそうです。

またディズニーの登場によっても、プーのイメージは非常に大きく変わりました。

つまり翻訳といっても、ただの直訳では不十分なんだと思います。

自分の子供も学校でイギリスの文章をフランス語に訳したりしていますけど、それだけでは原文の精神や心というのは伝わらないわけです。

それぞれの文化に合わせて翻訳を通してプーのイメージが変容・進化する、というのが、とても重要ではないかと思っています。

有名な話なんですが、ジェフリー・アーチャーという英国議会の議員にもなった方で、元々は作家でスリラー小説などを書いた方なのですが、私に言わせると彼の英語はひどいもので、空港で暇のあるときにしか読まないようなものなんです(笑)。

しかしフランスでは非常に有名な小説家が彼の本を翻訳することになったため、ジェフリー・アーチャーはフランスでは素晴らしい文学者として知られているんです。

翻訳といっても、いろいろあるんですね。

■みんながすぐ心が動かされる絵

――本展でアレックスさんが好きな作品を教えてください

私がたくさんの原画を見て感じるのは、シェパードがどのように成長したか、ということ。

成長したというのは、プーと仲間をどのような形で描くべきなのかシェパード自身が少しずつわかってきた、ということを感じるんです。

初期の絵を見ると、考え、悩みながらスケッチしているのが非常によく分かります。

それがだんだん後半になっていくと、彼がキャラクターを全部知り尽くし、絵を描く時に全く躊躇なく、まるでアスリートのように筋肉と頭が連動して何も考えなくぱっと描けるようになってくる。

そういった芸術家の進化・成長の過程が、非常に面白いと思います。

特に大好きな絵は、皆さんも同じかもしれませんが、プー棒投げ橋の非常に有名な絵がありますよね。

橋の上でちっぽけなコブタと中くらいなプーと大きなクリストファー・ロビンがいる絵、あれは非常にチャーミングなものだと思います。

あの絵を見ると、みんなすぐハッピーになるのではないかと思います。

年齢や文化を問わず、みんながすぐ心が動かされるような絵なんですね。

世界中で最も愛されるている絵のひとつではないかと思います。

そんな絵を今回の展覧会でお見せできるということを大変嬉しく思います。

■お話と絵を見て、プーを1から知ってほしい

続いて、日本での企画を担当した、フジテレビのプロデューサー中里弘毅さんにインタビュー。

――日本向けに変えた部分などありますか?

基本的にはイギリス・V&Aの展示の世界巡回企画なので、現地の展示をベースにしています。

V&Aで初めてとなる子供を含めたオールターゲットに向けた展覧会として、滑り台や実際の階段が作られていたり、特に子供目線を意識した内容になっていました。

一方、イギリスと日本の文化の異なる点は、日本では児童文学や絵本というものが大人の方にも広く親しまれていることが挙げられます。

日本でプーの展覧会を開催するにあたり、大人の方もかなりいらっしゃるので、日本では子供向けにせずに、プーを90年という長い歴史のある文学作品として捉える、ということを意識したのが、イギリス版との違いです。

実際、アトラクション的なものはそれほど多くせずに、きちんと原作に触れるということをメインにしています。

イギリスではプーさんの原作を、子供からおじいさんまで幅広い世代が知っています。

一方日本では、キャラクターのビジュアルやディズニーアニメのイメージでプーさんを知っていても、原作の内容や、極端に言うとプーさんの発祥がイギリスだということを知らない方もいるかもしれません。

今回の展示ではその辺の基本情報も丁寧に説明するようにしたので、ただ原画を見るということではなくて、プーさんを1から知っていけるような内容にアレンジしました。

展示を見ていただくと、今まで持っていたプーさんのイメージとの違いや、知らなかった背景などがきっとあると思います。

ディズニーランドがある日本と、ディズニーランドがないイギリスでは、プーさんの受け止められ方が全く違います。今回の展示は、より深くプーさんを知ることができるチャンスだと思います。

■石井桃子の人生は日本のプーに欠かせない

――「日本とプーさん」の展示だけでなく、全ての解説文も石井桃子さん訳で統一されていますね。

ディズニーアニメと原作の翻訳本では、キャラクターの呼び方からして違っています。今回“原作を知ってもらう”というテーマに沿っていくと、日本にこの作品を紹介した石井桃子さんの存在に行きつくので、そこは全て共通するようにしました。

石井桃子さん自身、プーさんの原作だけではなくてミルンの自伝も翻訳されています。しかもそれは石井さんが90歳を超えてから取り組んだ仕事です。

石井さんの人生は、まさに日本にプーさんを連れてきた歴史そのもの。今回の展示には欠かせないものなのです。

石井桃子さんは1933年に「プー横丁にたった家」に出会い、1940年に自身初の翻訳作として「クマのプーさん」を発売。

その後、日本を代表する児童文学者として数々の作品を翻訳しました。

クリストファー・ミルンの自伝「クマのプーさんと魔法の森」も邦訳、さらに90歳を超えてからミルンの自伝「今からでは遅すぎる」を訳し、プーをライフワークとして大切に扱ってきました。

■ディズニーも原作を大切にしている

音声ガイド(550円)では、ナレーションを女優の葵わかなさん、そして語りを声優の青森伸さんが務めています。

語りの青森さんはディズニー版プーシリーズの日本語吹き替え版のナレーターです。

おなじみのナレーターの声で原作を読んでもらえる、ぜいたくな音声ガイドです。

――音声ガイドでは青森伸さんが語りを務めていますが、どういった理由で選ばれたのでしょうか?

やはりプーさんに親和性のある声という所ですね。

音声ガイドではプーさんのストーリーの説明なども必要で、そういった朗読部分を素敵に聞かせられる人で、プーさんに親和性のある人は青森さんしかいない、ということになりました。プーさんのことをちゃんと知っていて、声も素晴らしい。

ディズニーのアニメーション自体もすごく原作を大事にして作られています。今回この展示に携わって、ディズニーが原作をとてもリスペクトしているということを、私たちも改めて知りました。アニメーションが原作を変えてしまったわけではなく、やはりアニメーションは原作に対してとても敬意を持っていると気づきました。

そういう意味では、青森さんはアニメに携わっているナレーターの方なので、ぴったりな人選だと思っています。

ウォルト・ディズニーは「クマのプーさん」をアニメーション化するにあたり、なるべく原作のままアニメーションにすることにこだわりました。

ディズニー版のオープニングでは実写で子供部屋を写し、部屋にある「くまのプーさん」の本に入っていくとアニメーションになるという構図で、「くまのプーさん」の本には著者としてA.A.ミルンの名が書かれているなど、原作を非常に重視しています。

■「お話と絵でプーさん」をグッズからも

――グッズも日本独自のものが、非常に多く制作されていますね。

日本でどんなものを作ろうかと相談したときに、ミュージアムグッズのポストカードは絵のみが描かれたものが一般的ですが、今回は「お話と絵がセットで、初めてプーさんである」ということを、どうやったらグッズで表現できるか、と考えました。

例えばポストカードでは絵に加えてその場面のお話が必ず一節書かれていたり、Tシャツに巻かれている帯にお話が書かれていたりと、お話のミルン+絵のシェパードでプーさんが完成する、ということを感じられるコンセプトにしました。

また、プーさんがイギリスから来たということを、グッズを通して皆さんにもっと知ってほしいということもあり、イギリスの紅茶やクッキー、はちみつなどをセレクトしました。

グッズでも展示のメッセージが伝わればいいなとの思いを持って企画しました。

■仕事帰りに立ち寄って癒されて

――最後にメッセージをお願いします

アレックスさん

ようこそ。

このような素晴らしい絵を皆様にお見せできることを大変光栄に思っています。

このチャンスを見逃さないでください。

今来てくださる若い方々には、皆様のお子さんが生まれるまで、あるいはお子さんが大きくなるまでこのような展覧会は開催できないと思いますので、本当に貴重なチャンスです。

そしてわざわざお越しいただいても、絶対がっかりさせないと思います。

我々が大切に保管している素晴らしい絵を惜しみなく、たくさん皆さんにお見せしたいと思います。

中里さん

大人になって見るプーさんは色々新しい発見がありますし、難しく考えなくても十分楽しんでいただけるので、ぜひ仕事帰りに立ち寄って癒されてください。

会場は渋谷、金曜・土曜日は夜21時まで開館しています。

ぜひプーの美しい世界に浸りに行ってください。

クマのプーさん展
会期:2019年2月9日(土)〜4月14日(日)
休館日」2月19日(火)、3月12日(火)
開館時間:10時 〜 18時 毎週金・土曜日は21時まで(入館は各閉館の30分前まで)
会場:Bunkamura ザ・ミュージアム(渋谷・東急本店横)
入館料(税込):一般1,500円、大学・高校生900円、中学・小学生600円、親子券1,600円

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