「患者も医師の命も守れない」 残業「年1860時間まで」案、見直しを要望

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2019年03月10日 10:21  弁護士ドットコム

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医師の残業時間の上限をどれくらいに設定するのかーー。「例外的に年間1860時間も認める」との案が出され、厚生労働省の検討会での議論は大詰めを迎えつつある。そうしたなか、「これでは医師の過労死は減らない」と現役医師たちは懸念の声を強めている。


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●「現場は過重労働でも耐えてきた」

3月7日午後、東京・永田町の衆議院第2議員会館。「過労死ラインを超えては、患者も医師の命も守れない」との思いを共有する医師や看護師、過労死遺族、現役の医学生らが集まり、会見を開いた。



植山直人医師(全国医師ユニオン代表)は「厚労省は現状で年間2000時間を超えて働く医師が1割いるのでそこに合わせるというが、まずこれを下げる努力を真っ先にするべきだ。現場は過重労働でも耐えてきた。これでは医師の過労死は減らない」と述べた。



厚労省は当初、地域医療の確保のためにやむを得ない場合は「年間1900〜2000時間」との案を出していた。ところが「過労死ラインの2倍を超える水準だ」「医師は不死身ではない」などの批判が相次ぎ、「年間1860時間」とする案を2月20日に再提示していた。



下がったとはいえ、一般労働者(休日労働込みで年間960時間)の2倍近い水準にとどまった。「過労死ラインを超える医師が残るのはおかしい。一般と同じ水準の時間外労働(残業時間)にすべきだ」(植山氏)と厚労省に再考するよう求めている。



過重労働におちいる医師を減らすため、一部業務を看護師らに任せる「タスク・シフティング」を進める必要性も検討会では指摘される。この点について植山氏は「看護師も不足し、過労死もしている。単に業務を委譲するのではなく、新しい職種を作るべきだ」と語った。



●波乱含みの厚労省検討会、副座長が辞任届

厚労省の検討会は3月末までの議論取りまとめを目指し、最終段階に入ろうとしている。ただ、残業時間の上限規制のあり方をめぐり議論が紛糾。それまで議論をリードしてきた副座長の渋谷健司・東大院教授が、副座長職の辞任を申し出るなど波乱も起きている。



医療系メディア「m3.com」によると、渋谷氏は「1860時間に納得できるロジックがあるわけではないので、前に進めるのならば僕ではない人を副座長に選んでまとめていただきたいと思っている」と語ったという。



検討会でまとめる方向性を踏まえ、残業時間の上限規制は2024年4月から適用される見込みだ。



(弁護士ドットコムニュース)


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