petit milady、“プチミレ流ロック”に豊洲PITが熱狂した夜 悠木&竹達コンビ5周年の集大成を見た

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2019年03月13日 12:01  リアルサウンド

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 petit miladyが3月3日、東京・豊洲PITにて『petit milady 5th LIVE「Howling!!」』を開催した。


参考:petit milady×河谷英夫が振り返る、プチミレ歴代MVに込められた実験的アイデアと結成5年の軌跡


 petit milady(以下:プチミレ)は、2013年5月にデビューした、悠木碧と竹達彩奈による声優ユニット。活動5周年イヤーを迎えた彼女たちは、昨年12月にアルバム『Howling!!』をリリースした。同作は、彼女たちのバックバンドであるリアジュボーンが全収録曲でアレンジを担当するなど、“プチミレ流ロック”を提示する一枚に。新曲はもちろん、先駆けてシングルカットされた「A or A!?」などでも、バンドサウンドを前面に押し出すべくリアレンジが施されている。そのアルバムを引っさげての同公演が、彼女たちの5周年イヤーの締めくくりとなる。


 そんな彼女たちは結成以来、両者とも全開に振り切ったキャラクターで、数々のステージを盛り上げ続けてきた。しかし、今回のアルバムは一味違う。それは、ライブ披露を前提に制作された楽曲が『Howling!!』には数多く収録されているからだ。また、曲中での情景描写も、豊かな音圧によってそのスケールがぐっと広がるなど、ステージでの仕上がりが楽しみな楽曲になったことも大きい。そんなプチミレの“切り札”が揃ったライブは、どう転んでも“とんでもない祭り”になってしまう。開演前から、そんな期待に胸が高鳴っていた。


 その嬉しい予感は、この日の開幕曲「Howling」で見事に的中する。ライブ序盤にも関わらず、フロアはジェットコースターさながら、大きな熱のうねりを見せる。制作作家の名前を借りるならば、“俊龍アドベンチャー”とも評せるだろう。なかでも〈男子〉や〈女子〉と、ファンの熱量を確認するコール&レスポンスは、ライブでこそ真価を発揮するパートだ。ここでは、ファンの100点満点な声援に、ステージの2人も笑顔で応答。〈も、もっと声が聞きたいな〉とあざとく誘う竹達のセリフは原曲よりも可愛らしく、〈さっきより、また可愛くなったな〉と凛々しく囁くような悠木のセリフも、極上の“イケボ”で届けられた。


 次のブロックでは、クールなサウンドを武器に、プチミレの数々の人気楽曲を提供してきた伊藤賢による楽曲を立て続けに演奏。まずは、「azurite」「アップデートの坂道」「人魚姫 (BPM of the 21st century)」を組み合わせたメドレーを歌唱。それぞれワンコーラスずつ歌い上げながらも、各楽曲はリアジュボーンによって違和感なく繋がれていく。最後には、2周目となる「azurite」でこのパートを締めくくったのも、ファンにとってはたまらない選曲だったに違いない。また、このメドレーアレンジは、ライブ終盤への布石となっていたとも記しておこう。その後も、同じく伊藤賢作曲の「桜のドアを」「blue cores」が続けて演奏された。


 8曲目「Color voice」は、エレクトロテイストに仕上げられた、アルバム内でも異色なナンバー。その演奏時には、カッティングを多用したギター、スラップで魅せるベース、16ビートを細かに刻み、踊りやすい空間を構築するドラムなどにより、楽曲のもつオシャレ具合を底上げしていく。あわせて、2人のボーカルにもリバーブを掛けるなど、“プチミレ流ロック”の洗練された一面もパフォーマンスしてみせた。


 10曲目「はじまりのうた」では、ツインボーカルのたくましさを存分に発揮。同曲は、アルバムで数少ないバラード楽曲ながらも、バンドの演奏はさほどボリュームを落とさず。それに負けじと、プチミレの2人も芯の太さを感じさせながら、しっとりと歌い上げる。また間奏後には、2人が舞台中央で向き合って柔らかな歌声を紡いだかと思えば、大サビではくるりと回転して、互いが背中を預ける形に。ここでもまた、長年を共にしてきた彼女たちだからこそ、その動作ひとつにさえ並々ならぬ説得力を感じられた。


 今回のライブを振り返ると、各楽曲での表情や風景描写に対して、これまで以上に“奥行き”を実感できた。これはおそらく、生音をバックにした同公演ならではのものだろう。その傾向を特に感じたのが、本編終盤の「360°星のオーケストラ」である。同楽曲では、一面に広がる夜空の雄大さなどが歌われるのだが、今回のステージではその“スケール感”が原曲よりも一層に増していた。また、同楽曲は昨年10月開催のオーケストラライブでも本編終盤に披露。その際には、フルオーケストラによる旋律で、星の瞬きなどを繊細に表現することが重視されていたように思える。それらを踏まえるに、今回のバンドアレンジで、また新たなプチミレ楽曲の一面が開拓されたようだ。


 ライブパフォーマンスを前提に、盛り上がりやすいジャンルであるロックを用いれば、フロアが自然と沸くことは容易に想像できるだろう。しかし、プチミレの音楽はそのような単純な次元にとどまらず、リスナーに様々な景色を見せてくれる。また、全楽曲がバンド披露でありながらも、彼女たちの歌声が何色にも切り替わることで、その雰囲気は優しさや柔らかさ、時には切なさを帯びたものにまで多様に変化していた。これは、本人たちのキュートな性格や歌声、そして何より、声優として様々なキャラクターを演じ分けられる技量があってこそ実現できたものだろう。


 この日のステージは、ダブルアンコールまで続くことに。最後には「100%サイダーガール」と「ドキ♡ドキド」を“同時披露”した。このアレンジは、4曲目のメドレーからさらにグレードアップ。Aメロで「100%サイダーガール」を歌ったかと思えば、Bメロとサビが気付けば「ドキ♡ドキド」に。両楽曲がそれぞれのアンサーソングとしての一面も備えているからこそ上手くいった仕掛けだろう。何より、あらゆる祭りに神輿があるのと同様、プチミレの歴史に「100%サイダーガール」あり。最後までお祭り気分を忘れさせない、5周年の集大成にふさわしい一夜となった。


 時には本編そっちのけのコメディトークを繰り広げながらも、パフォーマンス時にはアーティストとして確かなステップアップを感じさせていたpetit milady。2人の旅路はこれから先、どこに続いているのか。この日に見せたような爆発力があれば、きっとどこにだって連れて行ってくれそうだ。(青木皓太)


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