『はじこい』横浜流星の努力をみんなで温かく見守る 深田恭子との出会いから最後に学ぶものとは?

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2019年03月13日 12:01  リアルサウンド

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「由利匡平。東大一次、通過」


参考:『はじこい』深田恭子の言葉が胸に刺さる 横浜流星との出会いがもたらした“変化”とは?


 “ユリユリ”こと由利匡平(横浜流星)は、その嬉しい知らせを、誰よりも先に想いを寄せる春見順子(深田恭子)に、ちゃんと会って伝えたかったのだろう。これまで何度も訪れた塾の講師ルーム。そのどの場面よりも、キラキラと輝いて見えた。それは、人が夢に向かって突き進んでいるときに出る自信や充実感からだろう。


 彼の予想通り、順子は「ユリユリ!」と満面の笑みで駆け寄る。だが順子よりも早く、ユリユリをハグしたのは塾長(生瀬勝久)や売れっ子男性講師陣たちだった。ワッと囲んで、「よくやった」と心から労う姿は、このドラマを見続けてきた視聴者にも重なって見えて、思わず頬が緩んだ。


 『初めて恋をした日に読む話』(TBS系)第9話。いよいよ、ユリユリの受験がスタート。そして仕事でロシア行きを命じられた八雲雅志(永山絢斗)は、ついに順子に決死のプロポーズをした。


 この物語は、もちろんフィクションだ。非現実的だとツッコミを入れ始めたらキリがない。だが、それでも恋愛ベタな雅志が意を決してキスしたり、誠心誠意を込めて結婚を申し込む姿には、こちらも正座して応援したくなる。試験直前の大事な時期にユリユリが風邪を引いたら「もー、何やってるの!」とヤキモキしてしまうし、順子に心配させまいと舌ぺろしてみせるユリユリに別の意味で「もー、何やってるの!」とニヤニヤしてしまう。


 フィクションだとわかっていながら、これほど感情移入してしまうのは、きっとこのドラマに登場する人物に対する“好き“が、圧倒的なリアルだからだ。特に、ひたむきに努力を続けてきたユリユリのことは、私たち視聴者はもちろん、登場人物もみんな大好きだ。


 実は、こっそり順子を巡る恋の争奪戦に参戦していたことが発覚したゴリさん(皆川猿時)も、ユリユリの受験対策本部として開店前の店舗をわざわざ提供してくれる。経歴詐称問題で専門学校を追われた牧瀬朋奈(高梨臨)も、フリーランス講師として理数系を指導する心強い味方に。


 最初は面白半分で見守っていた順子の幼なじみ・松岡美和(安達祐実)もユリユリの恋の相談にのるし、順子とは関係がこじれていた母親の春見しのぶ(檀ふみ)も気づけば「体調には気をつけて」と温かく見守る。


 山下一真(中村倫也)は、教え子であるユリユリの将来を守るために人生の大きな決断をしたし、受験当日は会場まで様子を見に行く。また、絶賛恋のライバルである雅志も一次通過の知らせを聞いて、職場で大声を上げて喜ぶ。


 誰もが、ユリユリの努力が報われるように全力で支えてきた。そんな大人たちに囲まれる息子を見て、ユリユリの父・由利菖次郎(鶴見辰吾)は「いい先生に恵まれたな」と笑う。そして「お前が努力してるからだ」とも。


 みんながユリユリを好きなのは、その努力する姿にこちらまでワクワクせずにはいられないからだ。ユリユリの「勉強して、なりたい自分になりたい」という決断が、順子の仕事への情熱を呼び起こした。そして、イキイキとする順子を見て、雅志の恋心はさらに燃え上がり、山下は男としての信念を思い出す形に。ひとりの勇気ある決断とひたむきな努力は、まわりの人にとって、大事なことを気づかせてくれるスイッチになるのだ。


 だが、菖次郎が言うように人生は「高みを目指すと厳しい選択を迫られる」もの。その言葉に「俺は両方取りに行く」と返すユリユリは、きっとまだ自分で何かを掴み取る決断しか経験がないのかもしれない。


 選択の場面には、自分の意志ではどうしようもない状況もある。大事なものを守るために、同じくらい大切なものを手放すしかない……そんな選択もあることを、彼はまだ知らない。きっと、その無知ゆえに、無垢な状態こそが、若さというものなのだろう。私たちは苦しい選択を飲み込んで、大人になっていくのだから。


 「子どもでいられるのは、あと少し」。18歳が大人と見なされるひとつのラインと信じてきたユリユリは、ようやく心にとどめていた順子への想いを告白する。「好きです。好きです。先生のことが、好きです」溢れる思いを言葉にして、順子を抱きしめたユリユリ。順子も、自然とユリユリの背中に腕を回し、自分の気持ちを自覚する。


 あとは、ふたりが見据えた東大合格のゴールに突き進むだけ、と思われたが、ラスト数分でまさかの展開に……。ユリユリが、東大受験と順子への恋を通じて最後に学ぶものとは何か。次回は、ついに最終回。この楽しいドラマが、「4月になったら覚める夢」だなんて思いたくない。願わくば、この愛すべきキャラクターたちが、みんな幸せになることを。そして、描かれるユリユリの決断が、視聴者にとっても大切な何かを気づかせてくれる、そんなフィナーレとなることを祈っている。(佐藤結衣)


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