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多くの新規サッカーファンの取り込みに成功 Jリーグ×ドコモによるデジタルマーケティングの全貌

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2019年03月20日 07:02  MarkeZine

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MarkeZine

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 スポーツチームの支援に力を入れているプラスクラスの平地大樹氏とともに、同業界のマーケティングの現状と課題、今後について探る本連載。今回は、2017年にサッカー産業の発展と地域コミュニティの活性化をデジタルで推進する「トップパートナー契約」を結んだ、Jリーグとドコモのキーマン2人に登場頂いた。スポーツ文化を育むJリーグの百年構想は、デジタルで新たなステージに立っている。


■2016年に本格化したJリーグのデジタル活用


●今回の登場人物


画像左:株式会社プラスクラス 代表取締役 平地大樹氏


 Webコンサルティング会社プラスクラス代表。プロバスケ選手引退後、人材業界を経験し、Web業界へ。営業活動一切ナシのWebコンサル事業をプラスクラスとして収益化し、現在はプラスクラス・スポーツ・インキュベーション代表として、スポーツ界にWeb/ITを取り入れることを推進している。


画像中央:株式会社Jリーグデジタル プラットフォーム戦略部 部長

笹田 賢吾氏


 18年間勤務したニフティから、2015年4月に公益社団法人日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)へ転職。Jリーグのグループ再編により、2017年4月から株式会社Jリーグデジタル プラットフォーム戦略部部長に。Jリーグのデジタルマーケティング戦略を担当するほか、Jリーグの事業・マーケティング本部のto C企画戦略事務局を兼務。


画像右:株式会社NTTドコモ スマートライフ推進部 スポーツ&ライブビジネス推進室

パートナー協創担当部長 石村 彰啓氏


 Jリーグとドコモの「トップパートナー契約」、そしてNTTグループによる「オフィシャルテクノロジーパートナー契約」のもと、Jリーグのデジタルトランスフォーメーションを支援するキーマンとして関わる。


平地:Jリーグとドコモは、2017年に「トップパートナー契約」を結ばれ、両社でデジタル戦略を推進しています。本日は、これまでの取り組みを振り返っていただくとともに、今後の展開をお伺いします。まずは笹田さんから、Jリーグの現状を教えていただけますか。


笹田:現在、公益社団法人日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)は、Jリーグホールディングス直下4つの事業会社、そしてJ1からJ3までの39都道府県・55クラブより成り立っています。Jリーグは、2015年から4年連続で入場者数1,000万人を突破し、17年度の事業規模は1,000億を超えました。すべてのクラブで3期連続赤字、債務超過がゼロと、世界的に見ても財務状況の良いプロスポーツリーグであることが特長です。


平地:すばらしい運営状況だと思います。最近では日本代表の活躍や、海外のビッグプレーヤーの移籍など、嬉しい話題も続いていますし、リーグ全体で好調と言えそうですね。


笹田:日本には、まだまだスポーツ産業の成長する余地があり、東京五輪を機に活性化が期待されています。そのカギとなるのが、デジタルだと私たちは考えています。そのため、組織の重点戦略として、2016年からデジタル活用をスタートしています。


■コアファンの育成が課題に


平地:プロジェクトは、4年目に入られているんですね。これまで、どのような施策を進められてきたのですか。


笹田:まず2015年に、Jリーグ公式サイト「J.LEAGUE.jp」のスマートフォン対応、SEOやオウンドメディア、SNSの強化を行いました。本格的なデジタル活用に着手した2016年は、CRMの領域に注力しました。2017年には、チケット購入・EC・スタジアムWi-Fiなどのサービスが利用できる、CRMを基盤としたJリーグIDをスタート。そのタイミングで公式のチケットサイトとECサイトのリニューアル、公式アプリ「Club J.LEAGUE」のリリースを行いました。


平地:クラブごとのIDではなく、Jリーグ共通のIDを発行することで、様々なサービスを1つのIDで利用することができ、ファンにとっての利便性も高まりますね。また、チケット販売はぴあ、ECは楽天と、サービスごとに企業とパートナーシップを結んでいることが特徴的だと思います。2017年からは、DAZN(ダゾーン)にてOTT(Over The Top)配信もスタートされました。


笹田:Jリーグはプラットフォームとしてデータを持ち、各サービスはその分野で強みを持つパートナー様と協業しています。そして、データとサービスのハブとなるのがJリーグIDです。現在ID数は、106万ID(2018年末現在)と伸長しています。2018年以降は、このIDから得られるデータをもとに、ファンをF0からF5の6層に分け、各層に最適なアプローチを進めています。


 直近1年以内の来場回数と、過去の観戦経験の有無という2軸で見ると、実はJリーグIDの8割は直近の来場回数1、2回という潜在ファン層F0から、ライトファン層F2までの方なんです。


 我々としては、今後その8割の方が年3回以上来場するF3層になっていただけるようなサービスを提供していきたいと考えています。これらのデータは、ユーザー許諾を得ていますので、各クラブで活用いただくことも可能です。


■JリーグのKPI、KGIは?


平地:クラブでの利用も想定して一元管理を行っているというわけですね。Jリーグでは、どのような成果指標を設定しているのでしょうか。


笹田:KGIは、入場者数(チケット販売)とDAZN利用者数、EC(MD)の売上、そして協業企業とのパートナーシップの強化です。


 これらに紐づくKPIに関しては、「環境整備・リーグとしての利活用」「クラブとしての利活用」の側面から設計しています。リーグ側は、サイト・SNS・動画などによる情報接触数、JリーグID数、そのアクティブ率がKPI。クラブサイドは、データ利用を開始したクラブ数・利用頻度などがKPIです。クラブのデータ利活用に関しては、デジタル人材育成の研修を月1回行い、55クラブ中49クラブが参加するまでになりました。


■ドコモ所有のデータ基盤を活用するビジネス支援とは


平地:続いて、NTTドコモさんとの取り組みに話を移したいと思います。ドコモが、スポーツ産業のデジタルマーケティング支援に乗り出した背景を伺えますか。


石村:まず、弊社として「スポーツ産業の成長と地域コミュニティの活性化を、テクノロジーで支援していきたい」という思いがあります。Jリーグ、DAZN、NTTグループによるスタジアム・ホームタウンのICT化を目的とした「スマートスタジアム事業」をはじめ、DAZN for docomoによる新しい映像視聴体験、そしてデジタルマーケティング支援。これらの取り組みを通じて、サッカー観戦にまつわる体験をよりエキサイティングにするというビジョンを描いているのです。


 またドコモは、通信のご契約者だけでなくキャリアを問わないキャリアフリーのお客様も含めたサービス戦略へと、大きく舵を切っています。その軸となるのが、共通ID・dアカウントを入り口としたdポイントプログラムです。この会員基盤をもとに、自社サービスとパートナーサービスへの送客、ドコモの決済、データ蓄積と活用、お客様へのサービス提供というエコシステムを構築しています。


平地:なるほど。携帯電話利用の約4割のシェア(総務省「電気通信サービスの契約数およびシェアに関する四半期データ」より)を誇るドコモ独自のデータ基盤とエコシステムで、デジタルマーケティングを支援されているんですね。Jリーグさんとの具体的な施策についても教えてもらえますか?


石村:最初に Jリーグのオフィシャルサイトへドコモのタグを設置し、来訪者の可視化を試みました。さらに、データの利用許諾をいただいているお客様のプロファイルやオンライン・オフラインの行動・購入履歴などのデータと来訪者データを掛け合わせ、Jリーグへの潜在関心層をターゲティングし、Jリーグのチケットストアへと送客を行いました。


 送客のチャネルは、プライベートDMPからの広告出稿とドコモのポータルや会員向けサイト、プッシュ通知などです。「d払い(ドコモのモバイル決済システム)のチケット購入でdポイント10倍」といったキャンペーンも行い、さらなるデータ蓄積と予兆モデルを足すことでモデルの精緻化を進めています。


■JリーグIDの新規発行が増加。LTVも向上


平地:取り組みを経て、どのような成果が得られましたか。


石村:d払いによるチケット購入の絶対数と比率が上がり、Jリーグチケットにおけるチケット購入のうち10人に1人がd払いを選択しています。これはd払いの一般的な比率よりも、非常に高い数値です。


 また、d払いの利便性が高いだけでなく、dポイントの利用シーンが多いことも成果の要因に挙げられます。チケット購入で貯めたポイントは、次の購入や一部のスタジアムで使うこともできます。このようなメリットから、チケット購入はd払いを選ぶファンが、増えているのではないでしょうか。


平地:これはすごい成果ですね! Jリーグさんとの協業で、d払いやdポイントの認知も広がっているように思います。笹田さんは、いかがですか。


笹田:最も大きな成果として強調したいのは、JリーグIDの新規登録者が多いことです。また、リピート購入の割合も高く、LTVも上がっています。共通ポイントを他業界で活用する事例は聞いていましたが、実際にここまでうまくいくと思いませんでした。


 さらにドコモさんのDMPによる広告配信や位置情報の活用など、踏み込んだデジタルマーケティングの結果、非常に親和性の高いお客様が集まっています。特に、ドコモさんが保有する位置情報を用いた観戦者の動向調査では、平均来場試合回数がJリーグの独自調査と異なるケースもありました。


 ドコモさんならではのデータを掛け合わせることで、リーチが広がり、トラッキングできるデータ量が増え、精緻化が進む。これらは、大きなメリットだと思います。


石村:シーズン通しての施策は、2018年が初めてでした。これだけの成果につながったのは、やはりJリーグさんの運用体制が整っているからです。土台としてJリーグIDがあり、クラブ側のデジタル人材育成にも注力するスポーツ組織の運営は、国内屈指の体制です。


 さらに、JリーグID会員のメルマガ開封率やサイト回遊度は、dポイントクラブのユーザーよりも高く、ファンの関心が常に向けられていることを実感します。


■エンゲージメントを高め、新たな観戦の提供へ


平地:最後に、今後の展望をお聞かせください。


石村:まずは、Club.J.LEAGUEとdポイントの連携強化です。また、スタジアム内でのdポイント利用も推進したいですね。チケット購入者のスタジアム内での行動や購買履歴が把握できるようになると、スタジアム内のお客様に対する取り組みも強化できると思います。


 そして新しい柱となるのが、5Gによるサッカー観戦の体験向上です。高臨場パブリックビューイングやVR/ソーシャルビューイングなど、新しい観戦方法だけでなく、選手にフォーカスした情報発信なども幅広く展開していきます。


 スタジアムの中でも、ハーフタイムの映像解説や、試合を別の角度で見るなど、テクノロジーを活用した特別な体験をお届けできたらと思います。もちろん、技術先行は避け、サッカー観戦の本質を損なわない形で、最適な方法を探っていきたいですね。5Gプレサービスが開始する2019年秋以降で実証実験を行っていきたいと考えております。


平地:笹田さんはいかがですか?


笹田:デジタル戦略の次のステップである、MA、プライベートDMPの導入・活用を進めたいですね。そして、パーソナライズしたアプローチで、ファンエンゲージメントの強化を目指します。


 また、デジタルマーケティングの成功事例は各クラブへ横展開していきたいです。クラブレベルの粒度では、反応率が高くなる一方、リーチ範囲が限られるため、まだまだ効率に課題が残るのが現実です。石村さんのお話にもありましたが、スタジアムでのdポイント利用など、顧客接点をオフライン領域にも広げなくてはなりません。今後も、ドコモさんをはじめとしたパートナー企業の皆さまとデジタル活用を進めていきます。


平地:リーグでの成功事例をクラブにも横展開していくことで、さらにデジタル活用が進む未来が見えました。本日は、ありがとうございました。

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