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データのノイズとなるアドフラウドは徹底的に排除すべき/Gunosyが挑んだアドフラウド対策とは?

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2019年03月20日 08:02  MarkeZine

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 広告業界を長年悩ませるアドフラウド問題。ここ1〜2年で業界全体の危機意識は高まってきたものの、広告主側でリスクを認識し対策に取り組んでいる企業はまだ多くはない。そんな中、Gunosyは2017年からアドフラウド問題に取り組み始めた。そもそも、日本におけるアドフラウドの被害はどれほどの規模なのか。なぜ広告主自らが対策を講じなければいけないのか。アドフラウドを取り巻く状況と対策について、Gunosy 石渡氏とAdjust 佐々氏で対談を行った。


■広告予算の20%はアドフラウドの被害にあっている



(左)株式会社Gunosy メディア事業本部 メディア運営推進部プロモーションチーム マネージャー 石渡 貴大氏

(右)adjust株式会社 日本カントリーマネージャー 佐々 直紀氏


MarkeZine編集部(以下、MZ):ここ数年、アドフラウドへの危機意識が、日本においても高まっているように感じますが、実際のところ、現状はいかがでしょうか。


佐々:残念ながらまだ高くはないですね。Gunosyさんのように、かなり早い段階から対策されているところもいらっしゃいますが、それはごく一部の企業です。被害は年々深刻になっているので、リスクを啓蒙していかなければいけないと感じています。日本の場合は代理店文化が強いので、代理店を通じてアドフラウド対策を提供していく枠組みを作っていく必要もあるでしょう。


MZ:自分たちは被害に遭っていないはず、と思われている企業が多いということでしょうか。


佐々:そうだと思います。しかし、今はどの企業も例外なく広告予算のうち平均20%近くは被害にあっています。多いところだと30%に上る場合もあるんです。利用する配信ネットワークによって多少変動はありますが、何も対策をしていない場合は、広告予算の20%は不正業者に盗まれていると考えたほうがいいでしょう。


 昔は不正業者といえばアフィリエイターや媒体がメインでしたが、今は世界各国の犯罪組織が介入してきている状態です。仕組みを作ってしまえば、自動的にお金の流れができてしまう分野でもあり、特に対策が進んでいない日本は狙われやすい。社会的責任という観点からも、自社のお金が犯罪組織に流れないようにしっかりブロックしなければいけないなと。


MZ:なぜ日本ではそれほど対策が進んでいないのでしょうか。


佐々:他国と比べて、日本は信頼の文化が強いからではないでしょうか。あとは、広告全体の効果が悪くなければいいとか、自分たちのKPIが達成していればいいという意識が強いのもあると思います。全体の成果が良いんだから、わざわざ面倒な仕事を増やさなくてもいいのではないかという。


■Gunosyがアドフラウドに気づいたきっかけ


MZ:なるほど。そのような意識を持つ企業が多いなかで、Gunosyさんは自らアドフラウド対策に取り組んだわけですね。


石渡:そうですね。アプリのインストール施策はGoogleやFacebookなど大手媒体での広告配信がメインだったのですが、ずっとやっていると天井が見えてきて。2017年5月頃から、海外のアドネットワークも増え始めたので、広告配信先を増やしてみたんです。


 配信先を増やしてしばらくしてから、おかしな数字が発生していることに気づいたんです。私の部署ではアプリのDL数だけでなく、アクティブ率も一貫して計測しているのですが、明らかに挙動がおかしいユーザーが大量に発生していました。


MZ:挙動がおかしいというのは?


石渡:たとえば、健全な経路から獲得すると、毎日少しずつアクティブ率が下がっていくのが普通です。ただ、それがある日突然アクティブ率がゼロになったり、7日後にいきなりアクティブ率が80%になったりするユーザーが数百件単位で発生していたのです。当時、アドフラウド自体はなんとなく認識していた程度なのですが、これこそアドフラウドなのではないかと疑い始めたんです。


MZ:Gunosyさんのように、アドフラウドの発生に自ら気付ける広告主は少ないのでしょうか?


佐々:まだまだ少ないですね。インストール後、どのようなKPIを設定しているかにもよります。Gunosyさんのようにインストールからアクティブまで一貫して見て、厳密に数字を見ていれば気づきやすいかもしれませんが、そこまでできている広告主はあまりいません。


 近年は、まるで広告主側のKPIを知っているかのように、回遊率や滞在時間を調整してKPIを達成させ、不正に気づきにくくさせるアドフラウドも出てきていますので、なかなか見分けるのは難しいでしょう。当社ではそのような巧妙な手口にも対応できるよう、詳細なログデータを取れる機能を実装しています。


■アドフラウド被害に気づいた時、会社や代理店にどう説明する?


MZ:アドフラウドに気づいた時、自社の広告費が不正業者に流れていることを、会社に説明しづらかったのでは?


石渡:2017年当時は、弊社でもアドフラウドに対する理解がそれほどあったわけではないので、説明するのは大変でしたね。なので、アドフラウドを防ぐツールを導入する際は、想定被害額をはじめ、徹底的にエビデンスを揃えました。


 もともとAdjustの計測ツールを入れていたので、Adjust・自社双方のデータを突き合わせて、不正なユーザー行動を定義していきました。ある程度不正ユーザー数を把握できれば、CPIと掛け合わせて被害金額を推定できますよね。その被害金額と、不正防止機能導入費用を比較して、導入したほうが結果的にコストが下がりますよと会社に交渉し、導入に至りました。


 また、メディアをグロースさせていくためには価値のあるユーザーを獲得しなければいけません。定量的なデータだけではなく、ユーザーの質という文脈でもアドフラウド対策の重要性を伝えました。


■マーケター本来の仕事に注力するために、対策ツールを活用


MZ:不正発覚後、代理店に返金交渉をしなければいけなかったと思うのですが、そちらはどのように進めたのでしょうか?


石渡:不正ユーザーの動きを説明して、理解していただくしかありませんでしたね。当時は代理店側の理解もまだそれほど進んではいなかったので、ここでも説明に苦労しました。さすがに今はしっかり理解されている方がほとんどですけどね。不正行為の検証も返金交渉も労力がかかるし、マイナスをゼロに戻すだけの作業なので正直なところ楽しい仕事ではありませんでした。


 たとえば、テレビCMを見てアプリをDLしていただいた場合、流入経路は「オーガニック」に分類されるんですが、そのオーガニックを奪っていくタイプのアドフラウドが存在するんです。本来はオーガニックユーザーであるはずなのに、広告を踏んでいない媒体に起因したユーザーということになってしまうのです。このようにアプリDL後のユーザー行動だけでは定義できない場合もあるので本当に大変でした。


 本来、私たちマーケターの仕事は、DL数やアクティブ率を延ばしていくために新しい媒体を見つけたり、新しい訴求軸を考えたりするべきです。なのに、返金交渉や不正発見に時間をとられてしまい、そのような攻めの施策を考える時間が削られてしまったのは辛かったです。


佐々:自社で不正をすべて見つけ定義しようとすると、かなり手間がかかるしどうしても正確性に欠ける部分があります。また、石渡さんの仰る通り、返金交渉も大きな負担ですよね。私たちは、アドフラウドが発生してからの対応では遅いと考えています。


 当社の場合、独自システムで自動的に矛盾を検出し、不正発生前にカットする仕組みを構築しました。これで、不正の検証も返金交渉も不要になり、担当者は本来のマーケティング施策に時間を費やせるようになるというわけです。


■アドフラウドはデータのノイズ 徹底的に排除すべき


MZ:実際、不正防止機能を導入してどのような成果を得られたのでしょうか。


石渡:ツール導入後、3万件近い不正を検出しました。被害額も想定通りでしたね。不正業者に盗まれていた分の広告費を正しく使えるようになったので、当然成果は良くなります。ツール導入によりアドフラウド対策に関する作業がかなり軽減されたので、アプリをグロースさせるための戦略設計にリソースを割けるようになったのが何よりの収穫です。


佐々:まさしく石渡さんの状態が理想だと思います。我々は、マーケターがスムーズに仕事できるよう、データを正確に、安定的に届けることをミッションとしています。なので、ノイズとなるアドフラウドは徹底的に排除しなければいけない。マーケターに無駄な時間を使わせないことを徹底しています。


MZ:一方で、アドフラウド対策をやるべきなのは代理店・媒体側だと考えている広告主が多い印象もあります。


石渡:確かに信頼獲得のために、代理店や媒体側も取り組むべきだとは思います。最近は積極的に対策されるところがかなり増えてきましたね。だからといって、広告主側は何もしなくていいわけでは無いと思います。代理店が持っているデータと広告主のデータにはギャップがあるからです。


 当然といえば当然ですが、広告代理店に自社のデータを全部開示するわけにはいかないですよね。社外に出せない部分は、広告主が自らケアするべきです。表面的なKPIは共有できるけど、深いところは自分たちで見るしかない。


佐々:本来、アドフラウド問題はマーケターが1人で悩むことではありません。会社全体で取り組むべき問題なので、広告主となる企業が1社でも多くリスクを認識できるよう、業界全体で啓蒙を続けていかなければいけないと感じています。


■アドフラウド対策の第一歩は、データを見るところから


MZ:一部が責任を負うのではなく、全体で取り組むべきだと。アドフラウド対策をこれから始めようと言う方は、まず何をすれば良いのでしょうか。


佐々:アドフラウドの検出はすごく高度なテクニックが必要と思われるかもしれませんが、数字を継続的に見ていればなにかしらおかしな点に気付けるはずです。まずは、管理画面の数字と向き合ってみてください。あとは、媒体ごとに広告のカウント方法が異なるので、一度確認してみたほうがいいかもしれません。カウント方法を質問して回答を濁したり、掲載面を説明できないような媒体は要注意です。


石渡:広告主は、よくわからないからといって避けてしまうと、何も対策できないままただ搾取されてしまうだけです。逆に、正しい知識を持てば正しく戦えます。まずは自社のデータを見るところから、始めてみてはどうでしょうか。

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