いま中国で話題の“選択式”ミステリー番組「頭号嫌疑人」の魅力とは?

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2019年03月20日 10:01  リアルサウンド

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 中国でも最近「インタラクティブ」という言葉をよく耳にするようになった。「インタラクティブ」とは、簡単にいうと、対話、双方向や相互作用という意味で、多く使われている用途は、展示イベントやレジャー施設、あるいは文化芸術分野での”インタラクティブ体験“だ。


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 このインタラクティブ体験の中でも、今年にはいってSNS、ネット世代の若者を中心に人気を集めているのが、湖南衛視の配信サイト「芒果TV(Mango TV)」のインタラクティブ番組「頭号嫌疑人」だ。


 この「頭号嫌疑人」はいわゆる「微電視劇(ネットドラマ)」とよばれる1話約20分のショートドラマで、ストーリージャンルは謎解きミステリーだ。6話のエピソードに分かれていて、視聴者はパソコンやスマートフォンの画面をクリック操作することでこのドラマに参加でき、手がかりを分析、犯人を特定するための推理を組み立てていくというゲーム要素が組み込まれている。


 一般的なミステリードラマは、主人公の刑事、或いは探偵が少しずつ謎解きをして、時に視聴者にヒントを見せるなどの手法で、主人公と一緒に、あるいは視聴者が主人公よりも早く犯人へとたどりつき、最後には「やっぱり、犯人はこの人だった」となるのがセオリーだ。


 今回の「頭号嫌疑人」は、インタラクティブ•謎解きミステリー(視聴者参加型謎解きミステリー)という新たな分野を打ち出し、多くの視聴者を魅了しているが、その理由はさまざま考えられる。


 まず、単純に言えば、この一見斬新に見える「インタラクティブ体験ドラマ」、使われているツールはパソコンやスマートフォン、とりわけスマートフォンが主流になると思うが、若者からすると日常使い慣れている身近なツールで、操作にも抵抗感がないことがあげられる。しかも配信元の「芒果TV(Mango TV)」はこれまで数々のヒット作品を出していて、若者の圧倒的支持を集める人気サイトのひとつ。


 さらにストーリーの最後には、SNSを使った視聴者同士の情報シェアやコミュニケーションができる、といまどきの若者の趣向を全てカバーしている。こうしたことがまず前提にあり、短期間にかかわらず、厚いファン層をつくっているとも言える。


 そしてストーリーだが、視聴者の好奇心を刺激するハラハラドキドキのミステリー要素満載で、通常のTV番組のミステリーだけでは物足りない、犯人が分かっているのに展開が進まずもどかしい、といった歯痒さがないばかりか、逆に、視聴者の観察力、洞察力そして判断力などの真価が問われる、視聴者にとってチャレンジングな番組になっている。当然、ドラマを盛りあげるために不可欠な愛情、憎悪、財産、口封じ、事件当時の完璧なアリバイなどの要素も盛り込まれている。


 もちろん個性的な登場人物の演技も見逃せない。登場人物それぞれが、取調室という画面空間を通じて、視聴者に状況証拠となるような供述をする。視聴者にはそれぞれの登場人物から豊富な情報が提供されるのだが、一人一人がなかなか手ごわく、どこに手がかりがあり、どう関係していくのか、情報が多ければ多いほど、情報の信憑性を判断することが必要になる。


 視聴者は神経を集中させて一つ一つを検証していきながら、ストーリーを見ていかなくてはならず、そういう意味では娯楽感よりも緊張感のほうが増していると言える。この絶妙な緊張感もまた、視聴者をくぎ付けにする理由の一つとなっている。


 特に、スマートフォンはどこでも簡単に見ることができるので、その機能上、”ながら見“する人も多くなりがちだが、この視聴者参加型の番組は、ただ見ているだけなのとちがい、自分自身が主人公となる擬似体験ができる。この擬似体験こそが、双方向のコミュニケーションとなり、視聴者は、あたかも自分が真相を解明しないといけないという不思議な義務感に駆られ、その世界にどっぷりつかっていく。そして、この「頭号嫌疑人」の世界にはまった、”にわか“探偵が多く誕生し、ネットやSNSを大いに盛り上げている。


 簡単にいえば、パソコンやスマートフォンを使い、SNSを駆使したシェア方法や綿密なストーリーと解明困難な真相が視聴者の好奇心をくすぐり、この番組の人気を支えているのだ。


 さらに言えば、体験方法にも工夫がある。ドラマは「劇情版」と「真相版」とがあり、視聴者はまず「劇情版」エピソードを一通り見て、手がかりや登場人物についての情報を模索する。


 そしてあらゆる状況を分析していき、最終的には、指定のインタラクティブ•サイトで「案件報告」、つまり自分自身が推理し、行きついた事件の調書を提出する。そして視聴者どうし、あれこれと自分が特定した「犯人」について推理の”応戦“ができるのも魅力の一つになっている。


 ストーリーの途中で選択していく従来のインタラクティブ的な手法と異なり、ストーリーを最初から最後まで見ることができるので、ストーリーが途切れることなく、視聴者の印象に残る。途中で切替えることで集中力がきれるというようなストレスもない。


 「頭号嫌疑人」は、単なるインタラクティブ体験だけではなく、+αとして、参加者が自分の好奇心を満たし推理できること、観察力や判断力といったスキルを試せること、そして同じく犯人を特定した仲間と真相をシェアできること、真相を解明したあとの共感の連鎖……といった様々な付加価値がついている。


 こうしたインタラクティブ的手法は、今後、映画、テレビ、ネットそして動画メディアにおける作品づくりの新たな要素としてますます存在感を増していくものと思われる。


参考:
http://www.sosoxian.com/news/2019/0225/12855.html
https://www.mgtv.com/act/2018/thxyr/


(フライメディア)


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