『はじこい』深田恭子と横浜流星が教えてくれた“無敵な自分”になること すべてが愛おしい最終話に

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2019年03月20日 12:21  リアルサウンド

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「私には、君みたいな無敵な時間はない。だけど、好きな色を選んで笑うのも、ムチャな道を進んで泣くのも自由。全部“自分のせい”にできる歳だ」


参考:深田恭子が明かす、『初めて恋をした日に読む話』男性陣3人の魅力 “こじらせ女子役”への心境も


 『初めて恋をした日に読む話』(TBS系)が、ついに最終回を迎えた。描かれたのは、人生で後悔のない選択をする難しさ。「なんで年って取るんだろう/もう背は伸びないくせに」。そんなback numberの主題歌が響く中、大人になるということは、年を重ねていくということは、その数だけ自分の選択を“自分のせい”にして、受け止めていくことなのだと、教えてくれるドラマだった。


 東大二次試験当日、ユリユリこと由利匡平(横浜流星)は、交通事故に遭った順子(深田恭子)が運ばれた病院ではなく、試験会場に足を向けた。その決断こそ、これまで手を取り合って歩んできた順子の願いであると、確信できたからだ。しかし、受験を選択したということは、一刻も早く順子の様子を見に行くという道を捨てたとも言える。「そんな自分が嫌い」だと落ち込むのだった。


 順子への恋も、東大受験も、「両方手に入れる」。そう断言していたユリユリ。それができると、信じることを疑わないこと。そんな“無敵な時間=若さ”は、いつの間にか過ぎ去っていく。人生を歩むうちに、厳しい選択に迫られ、自分の無力さに打ちひしがれ、そしていつしかピュアではいられなくなる。多くの人が選ぶであろう“普通”の選択肢に身を委ね、気づけば“普通の大人”になっていく。それも、ひとつの回答だ。だが、ユリユリがなりたかったのは、そんな“普通の大人”ではなく、自分の想いにまっすぐな“変な大人”だった。そう、出会ったときの順子のように……。


 一方、20年近く順子に想いを寄せ続けてきた八雲雅志(永山絢斗)は、迷うことなく昇進のかかった仕事を蹴ってまで、順子のそばへ駆けつける。その選択によってキャリアは傷つき、順子からも「雅志のこと好きだよ。だけど結婚とか、恋とかの好きじゃない」と振られてしまう。だが、雅志の顔は晴れやかだ。結果として実らなかったとしても、素敵な恋ができたのだ、と。きっと、順子を想い続けることで、自分自身がピュアでいられたこと。そんな自分を好きでいられたということを、雅志は知っていたのだろう。


 気づいたら誰かを好きになっていたとき、その人を想っている自分のことも好きになれる。その人のためになりたいと、努力できる自分。その人の苦しみを代わってあげたいと、涙する自分。その人が笑ってくれるなら、どんなことでもできるような気がする……それは、いつの間にか忘れかけていた“無敵な自分”に再会できる瞬間。だから、恋を手放すことは、寂しくて、悲しくて、痛い。その人のそばで笑っている“自分が好きな自分”とも、お別れしなければならないのだから。


 しかし、大人になると“自分が好きな自分”を手放してでも、傷つくことを避けようとしてしまいがちだ。失ったとしても、またゼロに戻るだけ。致命傷を受けてマイナスになるよりは、マシだと言い聞かせて……。なぜなら、大人になるほど肉体と同じく、心の傷の治りが遅くなるのを実感しているから。“変な大人”だったはずの順子も、ユリユリとの恋を手放そうとした。それが、“普通の塾講師”がする大人の役目であると、自分を納得させながら。そしてユリユリもまた、東大に合格したからといって、「どうやって養っていくの?」という質問に、すぐさま答えられるほど大人になれたわけではないことを思い知る。


 “好き”だけで、すべてを手に入れられると信じられる無敵の時間は、永遠には続かない。しかし“好き”がなければ、何も手に入らない。いつの日か深く傷つくことを恐れて、今日の“好き”を諦めていたら、一生ゼロのままだ。0点がイヤならば、リスクを取ってでも点を取りにいくしかない。ピンクの服に身を包んで、東大の講義室に踏み込む順子は間違いなく“変な大人”だ。だが、その原動力はユリユリへの恋という、この上なくピュアなもの。自分の好きな自分に、素直に生きる勇気を振り絞るのは、いつだって今しかない。今より若い=“無敵に近い“日はないのだ。何歳になっても“変な大人”であり続けようではないか。誰かに「されたられた」と振り回されず、全部「自分のせい」にできるのが大人なのだから。


 ラストまで、ユリユリはまっすぐだったし、雅志はどこまでも雅志で、山下一真(中村倫也)も視聴者を魅了する食えない男だった。それぞれが順子を、そして彼女を好きになった自分を愛し、笑顔で自分の選択を受け入れていた。そんな姿を通じて、私たちもいつだって“無敵な時間”を生み出せるのだと教えてくれた。言うなれば、このドラマを好きになった自分を好きになれた。気づいたら恋をしていたような、そんな楽しい3カ月間だった。「ときめきってやつ? し放題で。うらやましいだろ?」と泣きながら笑う雅志のように、この思い出を大事に胸にしまって、また新たな“好き”を探しにいきたい。(佐藤結衣)


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