「虐待かしつけか」園の指導に葛藤するママたち……一方、「声を荒げてしまう」保育士の言い分

4

2019年03月20日 16:12  サイゾーウーマン

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

サイゾーウーマン

写真

保育園、幼稚園、小学校、おけいこ事の教室などでは、日々子どもの保護者と施設側の間でトラブルが発生している。ほんの些細なことでも、自分のこと以上に気になってしまうのが親心というものなのか。わが子のことを思ってとクレームを入れるママもいれば、モンペと呼ばれることを恐れて我慢するママも。そんなトラブル事例とママの葛藤をつづる。


 福岡県の認可保育所で、保育士が園児に暴言や虐待行為を繰り返したことが明らかになった。子どもを預かってもらっている保護者からすれば、許しがたい行為ではあるが、子どもが虐待の事実をうまく説明できないため、園ぐるみで隠ぺいを行うなど、なかなか表沙汰にもなりにくい面もありそうだ。また保護者の中には、保育士の行為が、「しつけ」か「虐待」かの判断がつかずに悩む人もいるという。今回は、そんな保育園や幼稚園ママの声を紹介する。

「履けないなら置いていく」靴が履けずに下駄箱に放置される園児

 認証保育園と無認可保育所に、それぞれ3歳と0歳の娘を通わせている志保さん(仮名)は、保育園によってしつけの質が違うと感じている一人だ。

「下の子が通っている園は、少人数のため、保育士さんが子どもの性格を見ながら育児しているようでした。でも上の子が通っている保育園は大型のせいか、担任以外の補助の先生がフォローに入ることが多くて、たまにヒステリックに園児を怒っている補助の保育士を見かけます」

 彼女は、「『認証』だから安心」と思っていたが、実際に子どもが通ってみないと実情はわからなかったという。

「この前は、園庭で遊んでいた2歳児クラスの子たちが、呼んでもうまく整列できなかったという理由で、保育士さんが『きちんと並びなさいよ』『並べないなら遊ばせません』と怒鳴っているのを見かけました。靴箱でうまく靴が履けない子を『置いていくよ』と言って下駄箱の前にしばらく放置していたり……。下の子が大きくなった時に、この先生が担任になると嫌なので、ほかの園を探しています」

 5歳になる男児を認可保育園に預けている美佐枝さん(仮名)は、「モンペ認定されたら、子どもに対する保育士の態度が変わるのではないかと思うと強く言えない」と語る。

 体が大きくなる5歳児は、狭い園内を走り回るだけでも、園児同士の衝突が起きてしまうなど、危険な面がある。ある時、男性保育士が、走り回る美佐枝さんの息子を担ぎ上げ、嫌がっても降ろさず「反省するまで降ろさない」と注意していたそうだ。早迎えでその状況を見かけたママから、話を聞いた美佐枝さんは、園にクレームを入れるか悩んだという。

「息子に聞いたら、『すごく怖くて泣いてしまった』って言うんです。でも迎えに行った時は、先生から何も報告されませんでしたね。『もともとは、うちの子が言うことを聞かなかったのが原因。しつけを受けただけだし、気にしすぎるのはよくない』と思う半面、『さすがにやりすぎではないか』『ほかの子と比べて、うちの子ばかりが怒られているかもしれない』とも思ってしまい……園に言うべきか悩んでいます」

 厳しすぎるしつけが表面化しづらいのは保育園より幼稚園なのかもしれない。園の教育方針に賛同して入園している手前、保護者が声を上げづらいのだ。4歳児を私立幼稚園に通わせている香奈さん(仮名)は、こう語る。

「普段は優しい先生なのですが、運動会で披露する組体操やパラバルーンの練習がうまくいかないと、『きちんとしなさい』と言って、娘の腕やお尻などを軽く叩くそうなのです。娘が言うには、パラバルーンを持ち上げ続けるのがつらく、どんどん腕が下がってしまうそうで、そうすると先生に後ろからぐいっと腕を掴まれ、上げたままの状態にされて『痛かった』と……」

 運動会や音楽発表会などの練習時、指導に熱が入ってしまい、つい手が出てしまう先生もいるようだ。

「うちの娘は、運動会の季節が近づくと『運動会の練習が嫌だ』『先生が怖い』と言って、泣くんです。ただ、あくまで行事の準備期間だけですし、親としても、運動会や発表会の成果にはいつも感動するので、先生方に『指導法をあらためてください』と言いづらいんです……。ほかの保護者も厳しい指導を我慢していますし、自分だけ園や先生にやめてくださいとは言えず。あと数年で卒園すると思うと、幼稚園の場合は我慢してしまいますね」

 一方で、保育士側は、自身の言動が子どもにとって「厳しすぎる」と感じることはないのだろうか。都内にある認可保育園で働いている晴美さん(仮名)は、スマホでの動画視聴などの影響により、子どもの言動に変化が見られるようになったと感じている。

「保育士として10年近く働いています。ここ数年は、スマホ育児の影響でYouTube動画を見る子が増えているからか、以前より、子どもたちの言葉遣いがおとなびてきているように感じます。昔から、大人のマネやテレビのマネをする子どもはいたのですが、最近、保育士が何かミスをすると、女児でも『バカじゃねえ』と言ってきたりするんです。何か説明すると『なんで? どうして?』と聞いてきて、『これはこうだからこうなります』と丁寧に伝えても、さらに『なんでそんなふうにする必要があるの?』って、しつこく聞いてきたり。何かやろうにも、5歳児くらいになると、保育士の揚げ足を取ってくるので、なかなか思うように進まず、イライラして声を荒げてしまうこともあります……」

 年配の保育士がきつく言えば、子どももおとなしくするというが、若い保育士だと、話を聞かずに、子どもたちが騒ぎ出すこともあるそうだ。その際、つい厳しい態度を取ってしまうが、一方で、叱ることへの恐怖もあるという。

「ある若い保育士が、トイレで走っていた女児の髪の毛を引っ張ったんです。するとその子が、迎えにきた親に『先生に髪を引っ張られた』と言ったため、園長が呼び出されて謝罪する事態になりました。こういうのを見ていると、うかつに叱ったりもできないんですよ。保育園の場合は、保護者とトラブルがあると、役所や第三者機関などへの無記名投書や、区からのアンケートなどに保育士の態度を記入されるので、つい手が出そうになっても我慢しています」

 家庭でも、保護者が子どもを思うばかりに、きつく叱らないケースが増えてきているのではないかと晴美さんは言う。保育士には、園生活において協調性のない子どもを注意するという仕事が増え、負担は増す一方だ。きつい言い方をしただけで、親からクレームが入るケースもあり、デリケートな対応にならざるを得ない。

 保育士の厳しい対応を、虐待行為と取るか、しつけと取るかは明確な基準がないため、判断が難しい。しかし、幼児たちはまだ状況説明がきちんとできないだけに、保護者から見て、園側の注意の仕方を「不快」に感じたら、それは問題視されるべきではないかとも思う。もちろん子どもがひどく泣いた時は、しつけの範囲を越えているだろう。保護者が何か不満を抱えたとき、すぐ園側に声をかけられるような関係性を普段からを作ることこそ、大事だと感じた。
(池守りぜね)

このニュースに関するつぶやき

  • 怒ると叱るは違う。まぁやりにくさってのはあるだろうから大変だと思う。が、髪の毛引っ張ったのは「え?」ってなるわ。コレに関しては謝罪するハメになった的な発言がおかしいと思いますが?
    • イイネ!3
    • コメント 0件

つぶやき一覧へ(3件)

ランキングライフスタイル

前日のランキングへ

ニュース設定