ホーム > mixiニュース > IT・インターネット > デジタル製品 > Googleの新サービス「STADIA」はゲーム業界を塗り替えるか

Googleの新サービス「STADIA」はゲーム業界を塗り替えるか

1

2019年03月20日 16:52  ITmedia PC USER

  • 限定公開( 1 )

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

ITmedia PC USER

写真「STADIA」を発表する米Googleのスンダー・ピチャイCEO
「STADIA」を発表する米Googleのスンダー・ピチャイCEO

 米Googleは3月19日(現地時間、以下同)、米カリフォルニア州サンフランシスコで開催中のゲーム開発者向け会議「Game Developers Conference 2019」の基調講演にて、ゲームストリーミングサービス「STADIA」を発表した。



【その他の画像】



 ゲームストリーミングとは、「クラウドゲーミング」とも呼ばれているサービスだが、Googleは周到な準備を進めた上で、ゲームコンソールを大きく超え、またミドルクラスのゲーミングPC以上の計算能力を持つ仮想ゲームマシンをネット経由で楽しめるようにする。STADIAでは最大4K/60P(4K解像度、毎秒60フレーム)の解像度でゲームが遊べる。



 詳細なスペックも発表済みだが、実のところそこはあまり重要ではない。STADIAで重要なのは、一つには複数のインスタンス(クラウド上の仮想マシン)を接続し、仮想的により高性能なコンピュータとして扱えるよう設計していることだ。将来、映像配信側が対応すれば、インスタンスを増やして8K/120Pまで対応できる。



 また映像配信サイトでもあるYouTubeと連動し、ゲームプレイを中心としたコミュニティーとゲームプレイの間をタイトに結び付けていること。そして、詳細は発表されていないものの、恐らくはGoogleの広告事業とも関連する、従来のゲームプラットフォームとは異なるビジネスモデルを柔軟に適応できることだ。



 一般的なクラウド型サービスが、計算能力やストレージのコスト単価低下に伴って機能や容量を充実させるのと同じように、STADIAではネットの向こう側にあるコンピュータの計算能力のコストが下がれば、前述したようにより高精細・高フレームレートのプレイが可能になるばかりだけでなく、3Dグラフィックスの質も高くなる。



 STADIAのインスタンスは、専用のCPUとGPUの能力が決められているものの、前述したようにインスタンスを複数同時に使うことで計算能力を高めることもできる。



 さらには、「ネットの向こう側」にあるコンピュータの能力は、今後のトレンドに合わせてCPUだけではなくGPUも含めてグレードアップする機会もあるだろう。



 例えば「プレイステーション 4」から「プレイステーション 4 Pro」へのアップグレード、あるいはより高速なゲーミングPCへの買い替えに相当するような変化を、新しいゲーム機の購入なしにもたらすことも、将来は可能になる。



 YouTubeとの連動も、コンピュータゲーム業界の勢力図を大きく変える可能性がある。これまではゲームプラットフォームごとに専用ネットワークサービスが用意され、ゲームタイトルの配信やオンライン対戦のマッチング、ゲームプレイ動画やライブ配信サービスへのアクセス、そこからのゲーム購入、プレイへの動線が引かれていた。



 プラットフォームごとに閉じたコミュニティーであるため、例えば「PlayStation Network」で対戦しているプレイヤーは、「Xbox Live」のプレイヤーとは一緒に遊ぶことができない。米Microsoftがソニー(ソニー・インタラクティブエンタテインメント)を超える能力のゲーム機を投入し、多くのゲームに投資をしても巻き返せなかった理由の一つでもある。



 現在主流となっているネットワーク対戦ゲームは、ユーザーコミュニティーが大きいほど楽しめるものだからだ。



 しかし、STADIAは「ゲームを遊ぶまで」のハードルが極めて低く、提供価格次第ではこうした壁を大きく乗り越える可能性がある。



 新しいゲーム、はやっているゲームがあれば、そのトレーラーやプレイ動画、あるいはプレイのライブ中継を視聴し、そこに参加したいと思えば「ゲーム開始」を指示するだけで、WebブラウザのChrome上でプレイできる。



 Googleは既に課金システムが統合された(しかも多くの人が登録済みの)ユーザーIDを保有しており、支払い方法を登録済みのユーザーはすぐにゲームへと参加できる。



 これまでは「ゲームを遊ぶためのハードウェアプラットフォーム乗り換え」は、単純なハードウェアの買い替えにとどまらず、プレイヤーコミュニティーの選択を意味していたが、そこをYouTubeとの統合で乗り越えてくれば、各社独自のゲームプラットフォームへの流入は減少していくのではないだろうか。



 既存プレイヤーは既存プラットフォーム上で遊び続けるだろうが、新しい世代のプレイヤーたちは、より開かれた、そして特別なハードウェアを用意せずにプレイできるプラットフォームを選ぶかもしれない。



 もちろん、ゲーム機やゲーミングPCには、ゲームストリーミングサービスにはない優位性もある。一つは操作に対する応答性だ。Googleは各地に分散配置したサーバ群とインターネット接続業者の間を専用の回線で結び、最短経路で端末とサーバを結び付けることにより応答性を高めているという。



 誰もが知っているように、Googleは世界で最も大規模なクラウド型サービスを提供している企業だ。単純に多くのサーバを持っているというだけではなく、世界各地のユーザーに近い位置に「エッジコンピューティング」の設備も持っている。このため、ユーザーに対して低遅延のインタラクティブなストリーミングコンテンツを提供できるわけだ。



 多くのゲームがストリーミングで十分に楽しめるようになる可能性が高いだろう。



●Googleのライバルたちも狙うゲームストリーミングサービス



 Microsoftも「Xbox One X」の販売不振などもあり、このジャンルへ活路を見いだそうとしている。3月12日にはゲームストリーミングサービス「Project xCloud」のトライアルを年内に開始すると発表済みだ。



 米Amazon.comもゲームストリーミングサービスへの参入を計画しているとうわさされている。今後、ゲームプラットフォームのトレンドはゲームストリーミングへと傾いていくだろう。家庭用ゲーム機市場は現在、ソニーが支配しているが、ビジネスモデルの変容にうまく追従できなければ、その立場を失うことになるかもしれない。



 ゲームストリーミングサービスに「PlayStation Now」で先鞭をつけているソニーだが、このサービスの拡充はもろ刃の剣ともなり得る。ゲームストリーミングサービスは、ハードウェアでの囲い込みの力を弱め、ユーザーの流動性を高めるからだ。



 ゲーミングPCをいったん脇に置いて、ゲーム機のビジネスに目を向けると、ハードウェアは原価割れこそしないものの、大きな収益源とはしていない。ゲームを遊ぶプラットフォームをゲームデベロッパーに提供することでロイヤリティー収入を得るのが、ゲーム機の基本的なビジネスモデルだった。近年はここにネットワークサービスの利用料も乗ってくる。



 PlayStation Nowは、こうしたゲームを遊ぶプラットフォームを切り替える際の緩衝材として用意されていたものだ。一方、MicrosoftのProject xCloudは「専用ハードウェアの購入」というハードルを取り払い、ゲームコミュニティーを自社のプラットフォームへと誘導することが目的だと考えられる。



 いずれのサービスも、ストリーミングされるのは自社のプラットフォーム向けに開発されたゲームである。つまり、ゲームストリーミングサービスは(程度の違いこそあれ)プラットフォーム間のユーザー流動性を高める。



 STADIAではそうした流動性の高さを生かし、どのようにしてゲームユーザーを呼び込むのかが注目される。ゲームそのものではなく、「ビジネスモデルの変革」こそがイノベーションを引き起こすことになるだろう。



 ご存じのように、Googleが上げている収益の9割近くは広告の売り上げだ。広告だけで無料でゲームが遊べるようになる……とは思わないが、何らかの形で新しい枠組みのビジネスモデルを提案できれば、ゲーム開発者を味方につけることができるかもしれない。



 STADIAの具体的な価格やビジネスモデルの詳細は「夏ごろ」とされており、まだ発表されていない。また、北米と欧州で年内にサービスを開始するが、それ以外の地域での計画は未発表だ。



 さらに自社内にゲーム開発スタジオを設置すると発表したものの、具体的なサードパーティーの名前は挙げられなかった(プレイデモには「アサシン クリード オデッセイ」を利用。100以上のデベロッパーに開発キットを配布していると言及するにとどまった)。



 5月7日から開催の「Google I/O 2019」(Google主催の開発者向け会議)、あるいは6月12日からの「E3 2019」(コンピュータゲームのトレードショー)で、ゲームコンテンツの開発パートナーが発表されるかどうかに注目したい。



[本田雅一,ITmedia]


    あなたにおすすめ

    ランキングIT・インターネット

    前日のランキングへ

    ニュース設定