ホーム > mixiニュース > コラム > 「遅きに失した」パワハラ防止義務化、それでも「大きな一歩」な理由 ある自治体職員の自死から考える

「遅きに失した」パワハラ防止義務化、それでも「大きな一歩」な理由 ある自治体職員の自死から考える

2

2019年03月23日 07:10  ウィズニュース

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

ウィズニュース

写真牧内記者が過去に取材した男性。アルバイトからのパワハラで休職中だった。「仕事に戻ったら、また怒鳴られるのかな」とつぶやいた言葉が忘れられない(記事とは関係ありません)
牧内記者が過去に取材した男性。アルバイトからのパワハラで休職中だった。「仕事に戻ったら、また怒鳴られるのかな」とつぶやいた言葉が忘れられない(記事とは関係ありません)

 パワーハラスメント(パワハラ)の防止策を企業に義務づける法律案が、このほど閣議決定されました。遅きに失した感はありますが、それでも深刻なパワハラ被害を防ぐための大事な一歩になると私は考えています。多くのパワハラ遺族を取材していると、職場の対策が進んでいれば最悪の事態を防げたかもしれないという事例に出会うからです。(朝日新聞記者・牧内昇平)

【イラスト解説】身体的な攻撃・過大な要求……、あなたの周囲にもあるかも パワハラの6類型とは

「相談窓口の設置」などが義務に
 まずは閣議決定された法案の中身をみていきましょう。

 パワハラ対策は今月8日に閣議決定された「労働施策総合推進法改正案」に盛り込まれています。法案から読み取れるパワハラの定義は以下の三点です。

(1)優越的な関係を背景とした言動である

(2)業務上必要かつ相当な範囲を超えている

(3)労働者の就業環境が害されている(「就業環境が害される」というのは、身体的もしくは精神的な苦痛を与えられることを意味しています)

 上の三点を満たす行為について、法案は防止策の実施を企業に義務づけます。防止策の具体的な項目は法改正後に指針をつくって決めますが、以下のようなものが想定されています。

・「パワハラがあってはならない」という経営者の方針を明確にし、従業員に伝える

・就業規則にパワハラの懲罰規定を設けるなど、加害者を厳正に処分するルールを定める

・パワハラの相談窓口を設ける

・相談を受けた場合、すばやく丁寧に事実確認を行う

・相談者のプライバシーを守る

 行政の指導に応じず、防止策を講じようとしない場合、企業名を公表するという規定もあります。法改正が実現すれば、早ければ大企業は2020年4月から、中小企業は2022年4月から防止策が義務化される見通しです。

遅すぎた対策?
 冒頭で「遅きに失した感がある」と書いたのは、パワハラの深刻さは5年以上前から指摘されていたからです。厚労省も2011年度に専門家を招いて議論してもらったことがありました。有識者会議が当時まとめた提言は、パワハラの具体例として以下の「6類型」をつくり、企業の労使による取り組みを促しました。

身体的な攻撃      暴行・傷害

精神的な攻撃      脅迫・侮辱・ひどい暴言

人間関係からの切り離し 隔離・仲間外し・無視

過大な要求       業務上明らかに不要なことや不可能なことの強制

過小な要求       能力や経験とかけ離れた仕事を命じる

個の侵害        私的なことに過度に立ち入る

 5年以上前にここまで議論が進んだのに、防止策の義務づけはなかなか実現しませんでした。企業側が「経営の足かせになる」と反発してきたのが主な原因です。

 この間、どのくらいの人がパワハラの被害にあってきたでしょうか。一例として、心の病で労災認定された人の統計を調べてみます。

 2012年度からの6年間で、心の病によって労災認定された人は2884人います。そのうち401人が、「職場のいじめ、嫌がらせ」が主な原因でした。対策が進まないうちに被害が増えてしまったことはとても残念です。

ある地方自治体で起きた自死事案
 とはいえ、パワハラ防止策の義務化は大きな前進だと思います。なぜそう言えるのか。私が取材した事例を紹介します。

「一体どんな仕事ならできるんや」

「すみませんじゃねーよ」

 地方自治体の職員だった30代男性が数年前、上司からの叱責を苦にして自ら命を絶ちました。死亡後、民間企業の労災にあたる「公務災害」に認められています。

 私がこの事案で注目したのは、男性の職場がパワハラ対策を実施できていたかどうか、です。男性が亡くなった時点では、この自治体ではパワハラに特化した対策が講じられていませんでした。自死した翌年になって初めて、職員向けの「パワハラ防止指針」が策定されました。

 策定された指針を読むと、重要なメッセージがたくさんこめられていました。

 最大のポイントは、懲戒処分の規定を変えたことです。

 それまでの規定は、「上司等に対する暴行、暴言により職場の秩序を乱した職員は、停職、減給、または戒告とする」でした。指針策定後は、「他の職員に対する暴行、暴言により職場の秩序を乱した職員は、停職、減給、または戒告とする」と変わりました。

 古い規定を素直に読めば、「上司に盾突いた職員は」という風に解釈されることでしょう。新規定になってはじめて、部下へのパワハラが懲戒処分の対象になることが明確化しました。

 職員向けパワハラ防止指針はさらに、パワハラを起こさないための留意点をいくつか挙げています。

▽本人にパワハラをしているという自覚がない場合でも、その言動がパワハラとなっている場合がある

▽業務と関係のない言動、指導の範囲を超えた感情に任せた言動はパワハラになり得る

▽パワハラは相手方から明確な拒否、抗議などの意思表示があるとは限らない 

 いずれも大切なポイントです。

 こうした指針がもっと早くできていれば、自死した男性を苦しませた「加害者」が自制したかもしれないし、男性やほかの同僚たちが相談窓口を利用して被害を最少限に食い止められたかもしれない。私はそう思うのです。今度の法改正が実現すれば、パワハラによる悲劇を未然に防ぐチャンスが増えるのではないでしょうか。

加害者への罰則も検討を
 もちろん、パワハラ対策はこの法案がゴールではありません。今回義務づけられたのは、「防ぐための仕組み作り」に過ぎません。たとえば悪質な行為は禁止する規定をつくり、加害者本人を法的に罰する仕組みもつくるべきだと私は考えます。裁かれるというプレッシャーが、パワハラを防ぐさらに強力な歯止めになると考えています。

このニュースに関するつぶやき

  • 朝日等のマスコミが、報道機関としての【パワー】を悪用した【ハラスメント】を繰り返していることに対しても罰則付きの法規制が急務だと思われます。
    • イイネ!0
    • コメント 0件

つぶやき一覧へ(1件)

あなたにおすすめ

前日のランキングへ

ニュース設定