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不妊治療中に妻のメンタルが崩壊。「離婚したいけど、受精卵が…」

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2019年03月23日 09:01  女子SPA!

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ぼくたちの離婚 Vol.10 子供さえいれば #2】

 結婚後、妻のひがみっぽい愚痴がひどくなり、夫婦関係の悪化に悩んだ野々山達夫さん(仮名/40歳)。妻・綾乃さん(仮名/43歳)からの「子供が欲しい」という申し出に関係改善の望みを託し、野々山さん38歳、綾乃さん41歳で自然妊娠を狙った妊活をスタートする。しかし半年たっても結果が出なかった。

「不妊治療として体外受精を選択すべく、再び病院に行きました。すると、綾乃が子宮内膜症で、子宮に精子が着床しにくい状態であることが判明したんです」

 体外受精をやるにしても、綾乃さんの外科手術が必要なのだ。

◆「今すぐ子供欲しい!」「私には絶対無理!」に振り回される日々

「半年前に妊活をはじめた時、ふたりで体外受精に関する本も買っていたんですが、まだ自然妊娠を狙っていたので、読まずに置いておいたんですよ。そうしたら、子宮内膜症の診断を受けて病院から帰宅した途端、綾乃がキレだしたんです。『なんで読まずに放っておいたの? 達夫が先に読んで私に教えてくれれば、もっと早く体外受精に踏み切れた。今ごろ妊娠できてたかもしれないじゃない。時間が経てば経つほど、私の子宮の状態は悪くなるのに!』って。

本は綾乃と一緒に買いましたし、すぐ読まなかったのは綾乃も一緒。まず自然妊娠を狙うことに関しては、ふたりで話し合って決めたのに……。その場では謝りましたが、僕はあまり納得できていませんでした」

 綾乃さんの子供が欲しいという気持ちは、半年前とは比べ物にならないほど大きくなっていた。無論、年齢による焦りも大きい。ふたりはすぐに体外受精の準備に入った。体外受精とは、女性の卵子を体外に取り出し、男性の精子と一緒にして受精させ、できた受精卵を女性の子宮に戻して着床を促す不妊治療のことだ。

「不妊治療は基本的に保険適用外なので、とにかくお金がかかります。毎月採卵したり、冷凍保存したりするたびに、十数万〜数十万単位の費用が発生する。何しろ、使い捨ての採卵用の針を1度使うだけで5万円以上かかりますからね」

 野々山家では家賃や光熱費以外の出費について夫婦で財布を分けていたが、体外受精にかかる費用は野々山さんがすべて負担することになっていた。ただ、野々山さんがつらかったのは金銭面ではないという。

「体外受精を決断してからは、綾乃の言っていることが毎日のように変わるんです。気持ちのアップダウンによって、『私には時間がない。今すぐに子供が欲しい!』と言ったり、『卵子を人工的に取り出すなんて、私には絶対無理!』と言ったり。これにつきあうのが大変でした」

◆妻の情緒がさらに悪化…でも一つの希望が

 状態の良い卵子を取り出せる(採卵できる)正確な日は、病院でも予測できない。

「排卵が近くなると、綾乃と僕は数日間毎日のように病院に通い、採血したり、体の状態をチェックしたりして、今日採卵できるか否かを見極めてもらうということを繰り返しました。綾乃から採卵ができたら、同じ日に僕も病院で精子を採取・提出し、その日すぐに受精が試みられるんです」

 幸い、綾乃さんも野々山さんも職場の理解があったので、出社時間をずらしたり有休をとったりすることで、連続通院が可能だった。しかし不妊治療は特に女性側の精神的・肉体的負担が大きい。通院を重ねるごとに、綾乃さんの情緒不安定はさらに悪化していった。

「病院通いでストレスが溜まるのは、よくわかります。常に期待と不安がつきまとうし、診察前の待ち時間は毎回すごく長い。医者のちょっとした言葉にも一喜一憂してしまう。とはいえ、綾乃の躁鬱があまりに激しすぎて……。受診当日はハイテンションでも、翌日はやっぱり怖いと泣き、怒り、僕に当たるんです。

やがて綾乃は、自分から『妊活やめていい? やめていい?』と泣きながら僕に聞いてくるようになりました。僕はそのたびに、何度も力説しましたよ。『やめよう。妊活は自分の心と体を壊してまですることじゃないよ』って。でもそう言ったら言ったで、『やめろって? そんな残酷なことを私に決断しろって言うの!? 私にはもう時間がないの!」と余計に荒れて、手が付けられない状態になる。そして、翌日にはケロっとしてまた病院に行く。この繰り返しでした」

 それでも幸運なことに、綾乃さんの最初の排卵日周辺の通院、つまり1度目の挑戦で受精卵ができた。

「普通は排卵誘発剤などを使い、排卵しやすい状態にして採卵するのですが、それを使わず自然に、しかも状態の良い卵子が1つだけ、一発で採ることができたんです」

 あとは綾乃さんが子宮内膜症の外科手術を受ければ、受精卵を子宮に戻すことができる。

「受精卵は、手術が完了するまで病院で凍結することになりました。もちろん子宮に戻したからといって必ず育つわけではありません。妊娠・出産までいく確率は決して高くありませんので。ただ、準備は整ったわけです」

◆夫婦同じ職場を避けるため「私が身を引いた」

 準備は整ったものの、綾乃さんの情緒不安定はむしろ悪化。会社への愚痴も輪をかけてひどくなっていった。ある夜のこと。

「私がこんなにつらい人生なのは達夫のせいだって言い出したんですよ。驚いて理由を聞くと、僕と出会った時にいた職場、つまり僕が今勤めている会社を辞めたのは、達夫がいたからだと。夫婦で同じ会社だと私たちも周囲もやりづらくなるだろうから、私が身を引いた。そのせいで今ひどい職場にいる。全部達夫のせいだ。あの会社に戻りたい。そう言って大声で泣きだしたんです」

 そんな話をはじめて聞いた達夫さんは面食らう。綾乃さんの口から「やりづらい」と聞いたことは一度もなかったし、もちろん達夫さんから辞めてほしいとも言っていない。

「僕が言い出しづらい空気を出していたということでしょうか? でも、綾乃とは何でも言い合える仲だと信じきっていたし、むしろ言いづらいことが言えないオーラを出すなんて、僕のポリシーにも反します。何がいけなかったのか、何に努力すればよかったのか、今もって皆目わからないんです」

 あくまで筆者の印象だが、たしかに野々山さんに気難しさは微塵も感じない。フランクでほがらか。なんでも話せそうな雰囲気をまとっている。

「綾乃はあまりにも取り乱しており、いま議論してもしょうがないと思ったので、その場では『そうだったんだ。気づかなくてごめん』とだけ言いました」

◆「子供さえいれば、あんたはいらない」

 翌日以降、野々山さんはその話題にあえて触れず、何事もなかったかのようにふるまった。綾乃さんも蒸し返すことなく、通常の愚痴モードに戻った。しかし数日後のこと。

「会社から帰ってくると、綾乃が泣きはらした顔で、いきなり食ってかかってきたんです。『そうやって都合の悪いことから目をそらすのが、あんたの悪いところだ!』って。

耳を疑いました。“あんた”? 僕は綾乃から初めて“あんた”と呼ばれたんです。サーっと血の気が引き、頭上から俯瞰カメラでこの状況をとらえているみたいな気分になりました。いま目の前で、狂人みたいにぎゃあぎゃあ騒いでるのは、一体誰なんだ? と、すごく怖くなりました」

 絶え間なく罵詈雑言を浴びせてくる綾乃さんは、やがて野々山さんにこう言った。

「子供さえいれば、あんたはいらない。もし子供ができたら養育費だけ払って出て行って」

 野々山さんは「ああ、もうダメだ」と思い、離婚を決意した。

◆理解はするが、許すことはできない

 しかし話を聞いていると、決定打になった綾乃さんの言葉は、かなり一足飛びというか、唐突な印象だ。子供が欲しいという気持ちも、会社や不妊治療のストレスで精神が不安定になり被害者意識が高まっているというのも、ある程度は理解できる。だが、「養育費だけ払って出ていって」はあまりに無茶ではないか。もちろん法的に通る話でもない。なぜそんなことを言ったのか。しかしその点を野々山さんに聞くと、吐き捨てるような答えが返ってきた。

「あの時の綾乃がどういう心境でどういう思考回路だったのか、今はもう一切興味がないです」

「興味がない」というより、「興味を持ちたくない」と言っているようにも聞こえる。最後にあえて酷な聞き方をしてみた。出産年齢がリミットに近づいて焦り、職場でもストレスを溜め、人生の希望を子作りにしか見いだせなかった綾乃さんの気持ちを、理解することはできませんでしたかと。野々山さんはきっぱりと言った。

「理解はできます。でも、受け入れることはできません。あんなに苦しくて恐ろしい体験は、もう二度としたくない」

 綾乃さんの暴言から数ヶ月。実は現在に至っても、離婚は成立していないという。係争の詳細について聞くと野々山さんは言葉を濁したが、ひとつだけ話してくれた。

「凍結した受精卵の破棄には二人の同意が必要なんですが、綾乃がそれを拒否しているんです。だから今でも病院に保管され続けてるんですよ。廃棄もされず、子宮に戻る予定もない受精卵が」

 年間数万円の保管料を払っているのは、もちろん野々山さんだ。

<文/稲田豊史 イラスト/大橋裕之 取材協力/バツイチ会>



【稲田豊史】
編集者/ライター。1974年生まれ。キネマ旬報社でDVD業界誌編集長、書籍編集者を経て2013年よりフリーランス。著書に『ドラがたり のび太系男子と藤子・F・不二雄の時代』(PLANETS)、『セーラームーン世代の社会論』(すばる舎リンケージ)。「SPA!」「サイゾー」などで執筆。
【WEB】inadatoyoshi.com

このニュースに関するつぶやき

  • こわ。この旦那さんよく耐えたな。あんたって言われるだいぶ前から私だったら限界迎えてるわ。子が欲しい女の本能はわかるけど自分がおかしくなってる自覚なかったのかな。精神科行きだわ。
    • イイネ!0
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  • 綾乃さんがまず行くべきなのは産婦人科ではなく精神科・心療内科だよ。
    • イイネ!61
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